BOAT RACE ビッグレース現場レポート

BOAT RACE ビッグレースの現場から、精鋭ライター達が最新のレポートをお届けします。

THEピット――泣き笑い

「ピット離れ失敗したぁ~~~」
 2R後、そう言って泣き顔を見せたのは、ズッて回り込んでのスロー4コースになった石渡鉄兵ではない。そもそも鉄兵さんが、そんなふうに声をあげるわけがない。そんなふうに、ちょっとおどけた様子を見せるのはもちろん、西山貴浩である。
 3号艇でスロー3コースだから、何が失敗なのかという向きもあるかもしれないが、スタート展示ではバナレが出て2コースを奪っているのである。西山はコースを獲って勝負すると目論んでいたわけだ。ところが本番は、出たあと少し艇が浮き、コースを獲ることができなかった。完全に目論みが狂って、レース展開も狂った。かくして4着。悔しがって当然である。

 いや、実はピットに戻ってきたときは声もあげずに険しい顔をして首を傾げていたのである。おどける余裕などなかったのだ。そんな西山をおそらく癒やしたのは石野貴之。エンジン吊り中の西山のもとにやってきて、指をさして笑ったのだ。それで西山も、悔しそうに笑みを浮かべた。石野のツッコミが少しは西山の落胆を和らげたものと思われる。そして、報道陣が集うカポック脱ぎ場に辿り着いて、泣き真似をしたという次第。そこまで時間がかかるほど、痛恨だったというわけである。

 中島孝平にとっては望外の2コースだったようである。ウィナーインタビューでも西山に獲られるのは覚悟していたという旨の発言をしている。西山の失敗によって枠なり2コースに入れて、それを活かした! 差し切って快勝である。近畿地区の仲間が出迎え、ボートが装着場へと引かれていく。中島はモーターに手をやって押すという格好。そこに歩み寄ったのが松井繁だ。松井が笑顔で一言二言、言葉を掛けると、中島はボートを押しながらも直立不動になって一度、二度と深くお辞儀。称えるような言葉を王者にもらったんでしょう。レース直後は大きなアクションをほぼ見せない中島が思わずそう反応したのだから、きっと嬉しい言葉だったのだと思う。 

 そうそう、このレースは外枠が石渡鉄兵、関浩哉、桐生順平とそれぞれ支部違いの関東勢。東京支部は6人いるけれども、他は2人ずつ、ということで、関と桐生はエンジン吊りが手薄になっていたのだった。特に手薄だったのが関陣営で、毒島が舳先の取っ手を引っ張り、関が押すという2人態勢。ボートを移動させるのには支障はなくとも、エンジン吊りはなかなか大変なものになってしまう。

 救世主になったのは深谷知博。東海地区勢の出走はないもののリフトに出てきていた深谷は、群馬勢の人出が足りないのを見て、素早く陣営に加わったのだ。毒島誠がありがとうと言いながら、ともに作業。やがて、石渡のエンジン吊りを終えた齊藤仁と佐藤隆太郎が駆けつけて、ようやくそれなりの布陣となり、作業はピッチが上がっていったのだった。仁さんが「すみません!」と深谷に声を掛けると、深谷は「ぜんぜん、ぜんぜん!」。なかなか気持ちのいいやり取りでありました。

 さて、1R発売中に閑散とした整備室の中で、定松勇樹がゲージ擦り。ボートにはまだモーターが乗っておらず、調整作業をした様子も見えなかった。やっぱり出てるんですね! 急ぎ調整をする必要がなさそうであり、しかもモーター装着もしていないのだ。8R1回乗りと出番が少し先であるということもあるだろうが、この余裕は昨日好感触を得たからであることは間違いない。ちなみに、今日は雲が覆っているのだが、それ以外の気象条件は昨日とほとんど変わっていない。気温も湿度も気圧も、だ。それを確認済みだったのかもしれないですね。

 定松は2R発売中にモーターを装着したが、それをヘルプしたのが地元の森高一真。ちょうど整備室にいたのである。なぜいたかといえば、本体整備。3着2着と悪くない初日だったのだが、12R1回乗りということで本体をバラしたのでしょう。丸亀での調整法は熟知しているはずで、ラストバトル1回乗りに組まれた今日は本体を割るいいタイミングだったということだ。定松のヘルプをした後には森高も整備を終え、モーターを装着。松井繁とともに控室へと消えていった(昼ごはんを一緒に食べたようです)。6号艇ではあるが、万全で登場できるのであれば、侮ってはならないかもしれない。(PHOTO/中尾茂幸 TEXT/黒須田)