テクニカル・エリー
12R
賞金女王決定戦
①田口節子(岡山)0.16
②日高逸子(福岡)0.12
③三浦永理(静岡)0.12
④角ひとみ(広島)0.12
⑤香川素子(京都)0.14
⑥山川美由紀(香川)0.18
『テクニカルエリー』……
今節の三浦永理のキャッチフレーズ、
そのまんまのタイトルでいいだろう。
1マーク、永理の細腕が、才腕に変わった。
発売〆切の10分前に、「これっきゃない!」と
心に決めたまくり差し。
逃げる田口節子と差した日高逸子。
その間隙は、わずか数十センチしかなかった。
その狭い狭いところに、
エリーは豪快かつ俊敏に舳先を捩じ込んだ。ブッ差した。
今節のトライアル全6戦、
ほとんどの3コース選手がこの間隙を狙い、
一度として実現できなかった大技だ。
テクニックはもちろんのこと、
相棒41号機の節イチパワーも力強く三浦の背中を押した。
今日の三浦は、昼特訓から他を圧する凄まじいパワーを披露した。
桁違いの動きだった。
「昨日の状態が良くなかったので、
思いきってペラの根っこの部分を叩いたら、
伸びが半分からひとつ(1艇身)くらいきた」
横西奏恵の「叩いてみたら?」というアドバイスに従ったそうだが、
超抜だったモーター&プロペラに
手を加えるのは相当の勇気がいる。
優勝戦当日となれば、なおのこと。
それを敢行したのは、師匠・服部幸男の
「ペラは感性、自分が思ったとおりに叩け」という教えが、
三浦の身体のすみずみに染みついているからだろう。
そして、それが当たった。 必死に追いすがる田口を、
三浦41号機は直線のたびに突き放した。
「緊張して、どんどんハンドルが入らなくなってきました」と
本人は苦笑するが、ゴールを通過してみれば
1分46秒0の猛烈なコースレコード。
今日の11レースまで、46秒台はおろか47秒台さえ
一度も出ていない水面で。
シリーズ優勝戦の勝ち時計は1分48秒5だったから、
三浦はそれより15艇身以上も先にゴールしたことになる。
なんたるパワー、そしてなんたるテクニック!!
GI初優出にして初優勝。
6色に輝くティアラを戴冠した三浦は、
来年の総理大臣杯の権利も得た。
おそらく、笹川賞にも選出されるだろう。
『テクニカルエリー』のキャッチフレーズが、
さらに全国区に広がっていくことを祈りたい。
もっとも本人は「選手間で不評なんですよ、
『テクニックなんか全然ないくせに』
ってみんなに言われてるんです」と苦笑するのだが。
(photos/シギー中尾、text/H)