BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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児島クラシック 準優ダイジェスト

生き残ったキーマン

 

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10R

①石野貴之(大阪)11

②松村 敏(福岡)02

③柳沢 一(愛知)10

④太田和美(大阪)08

⑤茅原悠紀(岡山)05

⑥篠崎元志(福岡)06

 

 スタンド5階の記者席をドッと沸かせたのは2コースの松村だ。コンマ02の突出スタートで、石野を半艇身以上も出し抜いた。が、この踏み込みは結果的にマイナス材料だったかもしれない。石野の伸び返しで「ジカまくりは無理」と判断した松村は、石野を行かせてから差しハンドルを入れた。舳先が飛び出していた分、それはコンマ数秒のタイムロスにつながる。

 そこに、狙いすました茅原の5コース差しが松村を完全に捕えきった。今日の茅原は4カド太田の攻めに連動してのマーク差し。昨日より消極的な戦法ではあったが、そのハンドルはやはり早く、速かった。先頭を走る石野には及ばずとも、準優としてのノルマを満たすには十二分な差しハンドルだった。

 

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 1着・石野、2着・茅原。

 石野17号機のパワーは、ほどよくバランスのとれた中堅上位レベルか。充分に戦えるムードはあるが、まとまりすぎてパンチ力に欠ける点が気になる。イン戦以外でアタマを狙うには、何かしらの特長を付けたいところだろう。3、4コース想定とするなら、自力Vを狙うストレートの強化か。性格的にはその方向に向かう気がするな。

 

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 茅原69号機も行き足~伸びは中堅上位と見たが、サイドの掛かりが良く「舳先が向きたいところに向く」乗りやすさは上位レベル。今日もターンマークごとに切れ味のいい回り足で、松村の猛追をシャットアウトした。6号艇の明日は、アウト水域からこの切れ味を活かすターンに徹するか。それとも地元の気合で内コースから優勝をぶん獲りに行くか。その選択によってファイナルの展開が大きく変わるだろう。

 

デジタルの本領

 

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11R

①菊地孝平(静岡)09

②瓜生正義(福岡)18

③赤岩善生(愛知)14

④長嶋万記(静岡)16

⑤安田政彦(兵庫)35

⑥毒島 誠(群馬)19

 

 菊地のスタート力が他を圧した。スタート展示はコンマ05。このとき、赤岩、長嶋、安田の3人は大幅にハミ出してしまったため、「菊地より先に行っちゃいけない」という思い(=選手間の不文律)がより鮮明になったかもしれない。本番、菊地はしっかり修正してのコンマ09。この絶品の踏み込みに、舳先を揃えたレーサーはいなかった。で、半艇身ほどのアドバンテージを守りきっての豪快なインモンキー。スリットから1マークまで、まさに影をも踏ませぬ完封ショーだった。

 2着争いも早々に決した。スリットから赤岩が主導権を握ったかに見えたが、これをやんわりブロックした瓜生がターンマークを1ミリも外さない激辛ターン。昨日は一撃のまくり差しでシリーズ全体の流れを変えた赤岩に、2匹目のドジョウは現れなかった。

 

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 1着・菊地、2着・瓜生。

 まったく競りのない勝利だったため、今日の菊地50号機のパワーは測りようがない。一連のレースを観てきての見立ては、これも中堅上位レベルか。明日もスタート力を如何なく発揮するだろうが、機歴的にも伸びなりのジカまくりは難しそうだ。スリットで桐生を煽っておいて、外に開いての差しを狙う手か。ならば、回り足を強化する調整に重きを置く可能性は高い。

 

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 瓜生48号機は「もっとも予選トップに近かった人機」として評価すべきなのだろうが、私の見立てはこれまたバランス型の中堅上位まで。スリット同体から一気に攻め潰すだけの迫力は感じない。現状の足をキープしつつ、展開をズバッと突けるだけのレース足を目指す調整になるだろう。

 

予選トップの恩恵

 

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12R

①桐生順平(埼玉)04

②井口佳典(三重)11

③山崎智也(群馬)10

④湯川浩司(大阪)09

⑤安達裕樹(三重)06

⑥新田雄史(三重)08

 

 11Rの菊地よりもさらにキワまで踏み込んで、桐生が鮮やかなイン逃げを決めた。「予選トップに立った以上、このチャンスを逃さない!」という叫びが聞こえるような峻烈な逃げきりだった。

 

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 準優ならではのテクニックを魅せたのが2コースの井口だ。スリットでわずかに後手を踏んだ井口は、そこからさらに智也に覗かれた。おそらく、この段階でターゲットを智也に絞ったのだろう。桐生が先マイの初動態勢に入っても、井口はすぐには動かなかった。ワンテンポ置いて、握ろうとする智也の行き場をなくしてから、やっと差しハンドルを入れた。ターンマークを2艇身ほどオーバーランしてから差したように見えた(もちろん、実際にはもっと早くに切っているのだが)。

 この「ひとり時間差ターン」は絶大な効果を発揮し、智也から外のアタックを完全にマヒさせた。最アウトでもっとも影響を受けなかった弟子の新田がブイ差しからにじり寄ったが、時すでに遅し。百戦錬磨の師匠の背中を追うどころか、後続艇の追撃を振りきるのがやっとだった。さすがの井口。SGで優出するためには何をどうすべきか、知り尽くしたような頭脳的な戦法だった、と思う。

 

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 1着・桐生、2着・井口。

 5日間を終えてみれば、2連率84%のエース47号機がファイナル1号艇の座を射止めていた。前操縦者の深谷知博は123211121①で優勝。桐生も2121621という抜群の安定感で王手をかけてしまった。この快進撃にケチをつけるつもりはないが、私の見立ては「全部の足が強めのバランス型で中堅上位~上位の下レベル」で前検から変わっていない。少なくとも、84%というモンスターではありえないと思っている。まあ、それはそれとして、明日もまた1号艇。スリット同体ならインからすんなり逃げきるのが当たり前なパワーでもある。2コースの菊地が壁になるようなら、その差しを警戒して過不足なく回れば勝ちきれるだろう。こう考えると、昨日の12R=3者脱落で予選トップという流れが、恐ろしくデカかった、と思う。

 

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 2着の井口も中堅上位あたりか。で、いま書いていて気づいたが、ファイナル6人の見立てはすべて中堅上位!!(準優予想は瓜生がBで、他の5人はすべてB+。今日のレースを見た限り瓜生も差のないパワーだと思う) うーーん、スリットから半分ほど伸びそうな智也、太田、赤岩、安田らがすべて脱落し、自力パワーで圧倒しそうな選手は皆無……?? ますます、ますます予選トップの桐生に有利なファイナルではないか。改めて、そう感じるパワー相場ではあるな。選手の力量もS級でほぼほぼ均等だし。紛れが起こるとしたら、菊地の悶絶タッチスタートか、あの男の捨て身の全速ターンか……現状、それくらいしか思い浮かばないなぁ。(TEXT/畠山、PHOTOS/シギー中尾)