BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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福岡オールスター準優ダイジェスト

浪速の独壇場

 

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10R

①田中信一郎(大阪)08

②新田雄史(三重) 14

③松井 繁(大阪) 13

④魚谷智之(兵庫) 18

⑤小野生奈(福岡) 14

⑥濱野谷憲吾(東京)10

 

 ほぼ横一線で、インの信一郎だけが半艇身ほど覗いたスタート。この時点で、勝負あったと言っていい。自慢の行き足で1マークまでにさらに差を広げ、くるり一閃、ターンの出口で5艇身ほどぶっちぎっていた。惚れ惚れするレース足だ。

 

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 早々に1着が決まって、残った5艇による2着争い。ターンの出口では2コース差しの新田がかなり優位に見えたが、そこから上下にワンバウンドしたのが痛い。外から松井46号機が並ぶ間もなく交わし、新田の舳先を振りほどいて2マークを先取りした。わずかなパワー差が両者の明暗を分けたと思う。終わってみれば、大阪の賞金王3冠コンビの強さだけが際立ったレースだった。

1着・信一郎、2着・松井。

 信一郎15号機のスリット付近の行き足~伸びは、おそらく石野28号機と互角レベル。その先の伸び足は石野に劣るが、お互いにスローで戦う分には何の支障もないだろう(バックの伸び比べになればやや不利だが)。2コースあたりから、十分に石野を脅かせるパワーだと思う。

 

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 松井46号機もかなり力強い足色だった。昨日はあまり目立たなかったが、今日はきっちり合わせきれたのだろう。ターンの出口からじわじわ伸びていくのが特徴で、新田以下を振りきったのもこの部分が大きい。ただ、出足~行き足では信一郎、その後の伸びでは石野より見劣り、パンチ力に欠ける印象も否めない。明日は前づけなら手前の足、枠なりなら自力で展開を突ける伸び足を強化するなど、戦法に合わせた調整に励むことだろう。元より底力のある46号機、上積みの余地はまだまだあると思う。

 

エース差し!

 

11R

①山崎智也(群馬)19

②茅原悠紀(岡山)15

③桐生順平(埼玉)15

④辻 栄蔵(広島)15

⑤山口 剛(広島)13

⑥湯川浩司(大阪)18

 

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「平成のMr.オールスター」智也が不覚を喫した。まずは、スリットでわずかに凹んでしまった。十分に挽回できるほどの遅れだったが、今日は2コースの相手が悪すぎた。茅原29号機。戦前から「行き足~伸びは断然エース級」と言われたパワーが、スリットからもグイグイ伸びていく。半艇身ほどのリードを保ちつつ、マイシロのない智也を先に回して、冷静な差しハンドルをねじ込んだ。懸命に逃げ込みを図る智也と、舳先半分を突き刺した茅原。ターンの出口からの足色はほぼ一緒、そこからじわじわと茅原29号機が伸びて2マークまでに完全な優位を築いた。智也の足負けと言うより、やはり29号機のパワーが只者ではなかった、と言うべきだろう。

 2マークの手前、このまますんなり2-1決着かと思いきや、智也の外に怖い男がぴったりと貼りついていた。クラシックからのSG連覇を狙う桐生順平だ。その2マーク、桐生の判断&行動はいつものように早い。智也が差しを狙って落とした瞬間、1ミリの躊躇もなく全速でぶん回す。一方の智也は、切り返した湯川が横切るのを待ってから差した。ほんのわずかの差だが、このワンテンポのズレが明暗を分けた。直線の伸び足がまるで違う。2周1マーク、ぴったり1艇身のアドバンテージを得た桐生が、小回りする智也にツケマイを浴びせる形で4つめのファイナル切符をほぼ確定させた。

1着・茅原、2着・桐生。

 

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 茅原29号機はほとんど下馬評通りの動きと言っていい。とにかく行き足~伸びが力強く、スリット同体から覗いていくので1マークまでに主導権を握れるパワーだ。2日目に1分47秒9、今日は1分48秒1と抜群の時計を叩き出しており、他の足もかなりのものだと思う(異次元のターンスピードが加味されるので、見た目にはパワーかどうかが分かりにくい)。石野28号機との比較も難しいのだが、おそらく「ストレートは石野がやや上、すべての足の力強さとしては茅原が上で、好勝負」なのだと思う。明日、枠なりでの3カド、松井を入れての4カドなどの攻撃的なポジションが選択できる茅原。石野に真っ向勝負するには、実に走り甲斐のある3号艇だと思う。高い壁になりそうな信一郎もいて、スリット同体から攻め潰せるかどうかは微妙だが。

 

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 一方、桐生66号機は優勝戦に入ると明らかに弱い、と思っている。今節はほとんどゼロ台の踏み込んだスタートと今日のような判断&行動の早さ、持ち前のターンスピードの速さをフル稼働してここまで到達した(不慮の事故に巻き込まれなければ、もっと好枠だったはず)。クラシックVからの流れ、勢い、リズムがそのまま水面に反映印象で、正味のパワーとしては中堅上位レベルが私の見立てだ。事故でボート交換してから、やや気配落ちした印象もある。「全部の足がちょい強めのバランス型」という私の見立てが正しければ、明日は6コースでは1マークがかなり遠いと言わざるをえない。松井をブロックしての5コースからの全速攻撃なら、展開次第で突き抜けることは可能だろう。

 

王手……激闘の予感

 

12R

①石野貴之(大阪)19

②篠崎仁志(福岡)16

③篠崎元志(福岡)22

④池田浩二(愛知)15

⑤菊地孝平(静岡)12

⑥中田竜太(埼玉)16

 

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 スリット隊形は、それなりの波乱を匂わせるものだった。元志が凹んで、4カド池田の猛ダッシュ。ただ、猛ダッシュをかけても、伸びていかないのが今節の池田の泣き所。半艇身遅れの元志が艇を合わせてきっちりブロックし、池田を博多湾方面へと追いやった。

 スロー水域では石野もわずかに凹んでいたが、そこからの伸び返しの凄いこと。センター競りを尻目に1マークの手前では舳先ひとつ抜け出し、くるりと回って明日のファイナル1号艇を決定づけた。10Rの信一郎と双璧とも言うべき完璧な逃げきり。池田のまくりを元志がブロックしなかったとしても、おそらく石野は軽々と逃げきっていたと思う。

 

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 今日イチの激しさだったのが2着争いだ。兄と池田が競っている間に弟の仁志が2コース差し、さらにその外から5コースまくり差しの菊地が一気に2番手まで突き抜けた。その外からは元志、逆に最内からは中田……4艇がごった返して2マークに殺到する。もっとも有利な立場だった菊地は、内から突っ込んできた仁志と中田に気を払い、抱きマイのような形で引き波にハメようとした。この3艇の勝負なら大正解なのだが、おそらく菊地の視界にはもうひとりの難敵の姿が見えなかったはずだ。ぴったり外に貼りついていた元志が、菊地だけをターゲットに全速でぶん回した。これが強烈な2段まくりとなって、菊地もまた引き波の餌食になってしまった。11Rの桐生、12Rの元志ともに、一片の迷いもない若者らしい全速アタックが優出の決め手になった。篠崎兄弟の直接対決に照らし合わせて言うなら、「兄に一日の長があった」という月並みなセリフに落ち着く。

1着・石野、2着・元志。

 

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 石野28号機は、すでに10R、11Rであれこれ書いてしまった。ストレートを主体に全部の足が強く、インから逃げきるに何の不安もないパワーだ。行き足の強い信一郎15号艇が高い壁になれば、その差しだけを警戒して勝ちきる可能性も高まる。ただ、戦前から下馬評の高かった「福岡四天王」(29・28・46・15)がすべて揃ったファイナルだけに、「断然の大本命」とは言い切れない、と思う。とにもかくにも明日の石野がやるべきことは「スタートを決めて1マークをしっかり回る」という一事だけで、他艇との兼ね合いとはほぼ無縁なレースと言っていいだろう。

 元志53号機の足は……今日の時点では四天王はもちろん、桐生よりも劣勢だと思っている。特筆すべき長所が見当たらない、中堅に毛が生えた程度というのが私の見立てだ。だからこそ、「よくぞこのパワーで」と元志の強さを痛感もするのだが、明日はたとえ4カドでも自力で石野まで攻め切るのはほぼ不可能だろう。目の覚めるような上積みも難しい気がするし、とにかく明日は「茅原の外隣を死守する」がもっとも重要な戦法だと私は思う。差しではなく、真っ向勝負のスピード戦で石野と対等に渡り合えるのは、茅原29号機しかいないのだから。(TEXT/畠山、PHOTOS/シギー中尾)