ルール改正を望む!
10R 進入順
①深谷知博(静岡) 06
②池永 太(福岡 04
③西村拓也(大阪 30
⑥坂元浩仁(愛知) 25
④上野真之介(佐賀)16
⑤奈須啓太(福岡 08
内2艇がスタートをバチッと決めた。
私が期待した西村は、完全に起こしのタイミングを逸してドカ。
前付け4コースの坂元も合わせきれない。
極端な中凹みでダッシュ勢にもチャンスがあるか、と思ったが、
5カドの上野もゼロ台Sの奈須も、まったく届かなかった。
バック直線は深谷か池永か、池永か深谷か、という一騎打ち。
差した池永が力強いレース足で深谷を捕え、
2-1態勢が確定した。今日に関しては、
池永の仕上がりが深谷を上回っていた。
では、明日は……? 残念ながら、
この2艇のマッチアップは実現しない。
レース後、深谷の待機行動違反による賞典除外がアナウンスされた。レースリプで見てもよくわからないが、
法に抵触したのは「右転舵」。私の想像では、
ホームに舳先を向けた瞬間、左ハンドルを切りすぎて
ネトロンに向かい、舳先がぶつかりそうになったので
チョロっと右に切った。そんな風に見えないこともない。
まあ、これは事実なのだろうし、それを罰する規則があるのだから
仕方がないともいえる。だが、アナウンスを聞き、
リプを何度か見て、浮かんできた言葉がある。
立ち小便で、死刑か!?
巷の法律には軽犯罪と呼ばれる部類のものがあって、
その中でも特に軽いモノは看過されることが多い。
まだ若かりし頃、私は何度か立ち小便を警察官に見つかったが、
「ちゃんとトイレでしろよ~」とか、「本当は罰金だぞ~」とか
笑いながら言われるだけだった。
今日の深谷のアレがレースに与えた影響は、
立ち小便が世間に与えるのと同じ程度のものではないのか。
そんなレベルの“軽犯罪”で、シリーズを牽引したひとりが、
ファンの誰からも批難、批判されないようなミスで
大舞台から消え去った。大半のファンはなんだかんだ言いながら、
優勝戦を楽しみに毎日せっせとボート場に足を運んでいる。
当然、シリーズの主役のひとりだった深谷の明日を、
楽しみにしているファンも多々いたはずだ。
その名前が、意味もわからず優勝戦から抹消されている。
そんなボートレースでいいのか、と私は思わずにいられない。
軽犯罪でも、犯罪は犯罪。
それは重々わかっている。今日の裁定は、仕方がないのだ。
警察官によっては、立ち小便でも罰金を取る人もいるだろう。それは、実直な正義でもある。だから、ルールにオプションを付けてほしい、と言っている。レースそのものに悪質、
または著しい影響を与える右転舵と、そうでないもの。
実際に右転舵によって大きな利益を生んだものと、
ほとんど影響がなかったもの。
それは、プロの審判員の目にはわかるだろうし、
ある基準値を設けて判断すればいいことだと思う。
そうすれば、きっと罰則をとられるケースは、
一般のファンにもはっきりクロとわかるはずだ。
そして、立ち小便のごときケースは厳重注意などに留める。
面倒なことを書いているようだが、面倒でもやってほしい。
今日のような準優でソレを取られると『賞典除外』という
とてつもない厳罰になってしまうのである。
深谷知博にとって、念願のGI優出という嬉しい日が、
優勝へと夢が膨らんだ瞬間が、一瞬にして
最悪の瞬間になってしまった。
深谷のこれからの人生に多大な影響を与える事件が起きた。
その決定的な事件が……アレなのだ。
明日、優勝戦でアレをやっても、
わずかな事故点だけで栄冠と名声と賞金は手にできる。
深谷は今日だったから、準優だったから、奈落の底に落とされた。
こんな哀しい不平等なヒエラルキーは、あってはならない。
そして、立ち小便が死刑であってはならない。
だから、ルールを緩和すべきだ、と私は言う。
深谷クン、お疲れさまでした。君のシリーズを通じての
ひたむきな走りは、文句なしに優勝戦に値するモノだった。
ケイリン界のフカヤトモヒロにも、負けないくらいカッコよかった。
私は、心から同情する。
一方的な喧嘩
11R 進入順
①前沢丈史(東京) 04
②前田将太(福岡) 11
⑥里岡右貴(福岡) 16
③松尾昂明(福岡 08
④村田友也(徳島 22
⑤大池佑来(神奈川)07
今節の新鋭王座を象徴するレースだった。
象徴というより、最高峰のカードというべきか。
チルトを跳ねて伸びだけを特化した松尾が4カドに構える。
インで迎え撃つは、超抜に仕上がった前沢。
どっちもトップ級のパワーで、4カドが利く水面だから、
興奮のボルテージも違う。逃げるか? まくるか?
12秒針が回って、さらにヒートアップ。ちょっとした中凹み、直接対決。スタートは前沢、勢いは松尾。そして、その外には、
ぴったりと大池がくっ付いていた。 あ、この感じは……!?
私の中で脳内レースが先行した。
前沢と松尾がやり合って、大池が一気に……
見えた人は多いでしょう。ただ、前沢と松尾は、やり合わなかった。
松尾のまくりを、前沢はただやり過ごしていた。
これが、今節の厳罰続きの“効果”だったと思う。
前沢は、まくり艇を張ることができなかった。
これが、準優だからだ。深谷のように、
不良航法という罰則を取られたら一気に賞典除外に。
そんなリスクを犯したくないのは、人間の正常な心理だろう。
明日の優勝戦だったら、いくらでも……
やはりルールに不具合があると思う。
だるまのようにまくられた前沢は、それから立て直して
2着以内を目指しに行くことになる。
大きなビハインドからのスタートなので、当然、焦る。
焦ってハンドルが入りすぎて……無防備に叩かれた挙句の転覆。
前沢の哀しさ悔しさは、ちょっと想像もできない。
レースに戻る。勝ったのは、大池だった。
松尾はなんの不利を受けずにまくったのに、
大池のまくり差しははるかにスピーディーだった。
4カドまくりがキチンと仕事をして、
連動した選手がマーク差しを決める。昔ながらのいい競艇だった。
あの1マークの一方的な“喧嘩”を覗いては。
この不幸なルールが存在する時代を憂いつつ、
明日の優勝戦では茅原VS松尾が
タイマンの“喧嘩”をしてくれることを、切に望む。
5人がかりで!!
12R 進入順
①茅原悠紀(岡山) 04
⑥土屋智則(群馬) 04
②永田秀二(東京) 12
③後藤翔之(東京) 13
④藤田靖弘(静岡) 24
⑤北山康介(神奈川)08
10Rに時間を割きすぎ、記者席で書くべき時間がなくなってきた。
まあ、このレースは行った行ったの「ザッツ準優」本命決着。
こんなレースは書くことも少ないのだが。
とにかく、茅原は強かった。100を切る起こしから、
コンマ04の悶絶スタート。まくり艇がきても慌てず騒がず、
1マークを外さずにくるっと回って勝利を決定づけた。
前付けから同じコンマ04を決めた土屋にも、拍手。
前付け艇の2コースはドカがあるし、
インよりも遅れることが多い。が、土屋はしっかり踏み込み、
外艇を遮蔽して2着を取りきってしまった。
土屋がちょっと凹んで1-34と見ていた私が、甘かった。脱帽。
とにかく、明日は「茅原VS5人がかり」という優勝戦になるだろう。
土屋が前付けに動けば、奈須啓太も黙ってはいない。
そうして深くして、混戦のスリットにする。
それが、茅原以外の選5手がすべき仕事だと思う。
そうでなければ、5人揃って茅原の背中だけを見ることになる。
まぁ、3人の地元福岡勢、3人の卒業期生が
黙っているわけがないのだけれど。
(Photos/中尾茂幸、text/H)