WING to WIN
10R①佐藤 翼(埼玉・105期) 05
②大池佑来(神奈川・101期) 11
③松崎祐太郎(福岡・100期) 04
④船岡洋一郎(広島・98期) 03
⑤秋元 哲(埼玉・103期) 04
⑥川下晃司(広島・98期) 08
3対3の枠なりながら、100mを切る起こし。
その険しい状況をモノともせず、翼が鮮やかなインモンキーを決めた。スリット付近は、目を瞑ってのコンマ05全速突破。
「神様、お願いします!」
祈りながら握り続けたというから、なかなかの肝っ玉の持ち主だ。
この第一関門をクリアしてしまえば、
勝利はさほど難しいことではなかった。1マークをくるり回って、
自慢の37号機が火を噴く。バック中間で、後続をグンッと突き放す。
それなりに慎重に回ったように見えたが、勝ち時計は1分47秒5。
今日、はじめて48秒を切っただけでなく、
茅原悠紀と岩瀬裕亮がマークした節イチ時計1分47秒6をも凌駕した。この一事だけで、37号機のポテンシャルが計れるというものだ。
足に不安なし。あとは、優勝戦のプレッシャーに打ち勝てるか。
与えられた艇番は……!?
別格・翼のはるか後方では、ハゲしい2着争いが繰り広げられた。
常に優位を保っていたのは、転覆の減点を克服して
この舞台に立った船岡。追いすがる松崎と大池を振り切る
チャンスは何度もあったが、どうにもターンがぎこちない。
「足は良かったけど、僕がガチガチ。固まってました」
その通りのターンだった。突き放すどころか、
松崎がじわりじわりとにじり寄る。最終ターンマーク、
もはや船岡の差しハンドルは自我を失っていた。
慌てたように小さく回ろうとして、キャビって振り込んで、みたいな。
が、同じく松崎も外から握りきれずにバランスを逸していた。
これぞ記念・準優の2着争い。しっちゃかめっちゃかのターンの果て、
わずかハナ差で明日へ進んだのは、船岡だった。
船岡の足もかなりいい。出足と回り足が強く、
混戦で威力を発揮するパワーだ。今日はともかくとして(笑)。
ただ、全部がいい翼には、やはり分が悪い。
明日はスタートの前に、何らかの戦略を打つ必要がありそうだ。
出足をより強烈に仕上げて……。
Go to Revenge!!
11R
①茅原悠紀(岡山・99期) 05
②井上大輔(岡山・99期) 06
③黒井達矢(埼玉・103期)08
④小山 勉(埼玉・102期)17
⑤乙藤智史(福岡・99期) 28
⑥篠崎仁志(福岡・101期)12
枠なり3対3。100mを切った翼に対して、茅原の起こしは120m。
この条件で、負ける男ではない。「翼よ、待ってろ!」とばかりに
同じコンマ05でスリットを通過し、井上に差させず、
黒井にまくらせずの激辛インモンキーで独走態勢を築いた。
ほとんどのファンが思い描いた通りの1マークだったことだろう。
心技体ともに充実した断然V候補の、至極当たり前のイン逃げだった。
が、気になる点がひとつだけある。独走の周回だったのに、
勝ちタイムが1分48秒8。これは、遅い。
少なくとも、翼より8艇身ほど劣っている。
もちろん、楽勝過ぎて落とした可能性はあるが、
気になる材料ではあるな。一昨日あたりから私が密かに思っていた
「気配落ち」でなければいいのだが。いずれにしろ、
優勝戦組では翼が抜けていて、現状の茅原との差は
そこそこ大きいと思われる。
2着は、バック4番手からターンするごとに差を縮め、
2周1マークで鮮やかな逆転の差しを決めた黒井。
ターンマークを外し、さらに直線で減速した井上に助けられた感もあるが、そのミスを誘うだけの迫力ある追撃だった。
どこか突出しているわけでなく、全部が少しずついいバランス型。
翼のミニタイプという感じか(それほど大差でもないのだが)。
翼がわずかでもミスれば、展開を突いて一気に抜け出す足はある。
逆に、よほど隊形に恵まれない限り、カドから一撃でまくりきるのは
難しい足でもある。
Best Time to HELL
12R
①坂元浩仁(愛知・99期) +01
②西村拓也(大阪・98期) 07
③前田将太(福岡・102期) 06
④磯部 誠(愛知・105期)05
⑤青木玄太(滋賀・100期) 08
⑥水摩 敦(福岡・99期) 04
坂元の足は、仕上がっていた。私の見立てをはるかに裏切るほど。
その根拠のひとつは、場内で発表される周回タイムだ。
坂元のそれは、昨日までとは雲泥の36秒17。
本人比較だけでなく、この時計は私が知る限り、
断然のシリーズレコードだった。初日からこの周回時計を
チェックしてきた私には、確信できることがある。
「遅いタイムは信用できない(ちんたら走る選手もいる)が、
速い時計は信用できる」だ。今日の坂元の時計は、
翼のそれ(36秒69)をぶっちぎっていた。 こりゃ、逃げるな。
中堅パワーと決め付けて、予想でも無印にしていた私は
脱帽するしかない。レース直前、私が気にしたのは、
これから真っ先にゴールを通過するであろう坂元の勝ち時計だった。
あるいは、とんでもない数字が生まれるかも、という予感があった。
だが……その数字がボードに刻まれることはなかった。
コンマ01秒のフライング、欠場。私は思う。
今節、早いスタートを連発している坂元だが、
今日は気持ちではなく、パワーがそうさせたのだと。
このレース、坂元は残り50m付近で上体を起こし、
しばらくアジャストし続けていた。そして、また身体を被せた。
十分に保険をかけたはずだ。が、超抜に仕上がり過ぎた出足が、
その保険証をも切り裂いたのではないか。優勝戦の1号艇へ……
独走態勢に持ち込んだ坂元は、ちょっと首をうなだれてから、
それとは違う横道へと逸れていった。
繰り上がりの1着は西村。評判のエースモーターが
2日目から徐々に薄目を開き、ついに覚醒した。
そんな勢いを感じる足ではある。今日の1マークは、
坂元を付け回ろうとしてから、差しハンドルに転じた。
そのロスで、一気に坂元に千切られた。
最初から決め差しを狙っていたら、どこまで肉薄したかが見たかった。
現状、どれほど強力なのかが判然としない、
だからこそ不気味な気配がぷんぷん漂っている。
バランスが取れすぎている?翼を破るとしたら、
あるいはこんなエンジンなのかも?
2着は、大混戦の2周1マークで、的確な差しハンドルを決めた青木。
繰り上がりで滑り込んだ運と勢いは怖いが、
パワー自体は優勝戦メンバーの中ではワーストと言うしかない。
今日の2マークにしても、本来なら、大差の3着争いでしかなかったし。枠番のまま6コースから最内差しでは、99%勝ち目はないだろう。
船岡同様、青木もスタートラインを通過する前に 「何か」 を
しなければ、V争いに参加すらできないと思う。
(photos/シギー中尾、text/H)