BOAT RACE ビッグレース現場レポート

BOAT RACE ビッグレースの現場から、精鋭ライター達が最新のレポートをお届けします。

シリーズ優勝戦 私的回顧

脳汁ランナウェイ

 

11Rシリーズ優勝戦 進入順

①篠崎元志(福岡)11

⑥西島義則(広島)20

②石渡鉄兵(千葉)20

③池田浩二(愛知)12

④湯川浩司(大阪)14

⑤石野貴之(大阪)16

 

f:id:boatrace-g-report:20171206131205j:plain

 このレースは、2マークで見ようと決めていた。西島義則が動く。抵抗する湯川浩司と石野貴之を振り切って、舳先をスタート方面に向ける。観衆がどっと沸く。歓声、奇声、怒声、罵声……いろんな声が混じっているが、誰もが待機行動の行方を固唾を呑んで見つめている。私も、この進入のカタルシスに酔いしれる。これでも篠崎が逃げるかもしれないし、石野がアウトまくり差しを突き刺すかもしれない。6人に平等に勝つチャンスが与えられた。そんな気になる。

 

f:id:boatrace-g-report:20171206131215j:plain

 12秒針が回った。枠なりの穏やかな起こしより、スタンドのボルテージははるかに高い。篠崎を応援する者も、石野を応援する者も、より必死に声援を送る。私も◎石渡鉄兵の名前を連呼した。内2艇が極端に深くなった、絶好の3コース。これでスリット同体なら、石渡がまくりきれる。スリットのはるか手前で、脳汁が毛穴という毛穴から噴き出す。 げ。

 石渡が遅れた。私も含め、石渡を応援した人々の声だけが止む。代わって、池田党が俄然盛り上がった。

「池田や、いってまえーー!!」

「池田や、池田で決まりや!!」

 ところが、シリーズトップ級のパワーを誇る石渡がもこもこと伸び返し、まくりそうな池田に舳先を掛けてしまった。池田党の声が歓声から奇声に変わり、それで途絶えた。 その後は、1マークまで劣勢にも思えた篠崎党の喜びが爆発した。

f:id:boatrace-g-report:20171206131232j:plain

「よっしゃ、逃げたーーー!!」

「助かったーーーっ!!」

「ええぞ、篠崎ィィ!!」

 いっぺんに聞こえた。安堵の声が多かった。篠崎党はみんな、まさに固唾を呑んで声も出なかったのだ。

 ここは住之江、1号艇から安心して買えるレースがあっていい。そうじゃなきゃ困るという本命党も多いことだろう。だが、私は大一番であればあるほど、こういう誰もが進入から脳汁が噴き出すようなレースが好きだ。今日のヒーローは、博多の男前ナンバーワンだった。単なる楽インからあっさり逃げるレースではなかった。80m起こしでトップスタート。いいイン逃げだった。こういうイン逃げは、記憶力の悪い私でも忘れないのだ。そして、こういうレースの後では、私は必ずこう思うのである。

 西島がいてくれて、面白かったな。

 今日も思った。おめでとう、篠崎。あれがとう西島。

(photos/シギー中尾、text/H)

f:id:boatrace-g-report:20171206131259j:plain