BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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トライアル第3戦 ダイジェスト

修正

 

11R

①平山智加(香川) 08

②鎌倉 涼(大阪) 08

③海野ゆかり(広島)07

④日高逸子(福岡) 09

⑤三浦永理(静岡) 08

⑥谷川里江(愛知) 31

 

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 平山がアジャストした。と言ってもスロットルレバーの話ではない。昨日の自称「スタートミス」(放ってコンマ16~長嶋にまくられる)を反省し、きっちりと修正してみせた。これが3戦連続イン戦の強み、というヤツだろう。「伸びる」と評判の海野ともスリット同体から、まったく同じような足色で1マークに向かった。こうなれば、もう恐れるべき相手はいない。完璧な先マイからぐんぐん後続を引き離し、山下友貴の持つ節間レコードをコンマ03短縮してゴールに飛び込んだ。これで明日も1号艇なら「完璧な予行演習」なのだが、この時点ではまだわかっていない。

 

 

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 問題は、2~6着争いだ。6人全員が勝負駆けだったこのレース、着順によっては5人が推定ボーダーの21点(7・00)を超える可能性があったし、逆に1人しか超えない着順パターンもあった。まさに、死のグループ。当然、道中のあちこちで“局所戦”が勃発した。特に激しかったのは、4番手を走っていた鎌倉だ。4着でボーダー21点が確保できるのに、何度も何度も内に切り返して3着を狙いに行った。あえて、掃討のリスクを伴うゲリラ戦に打って出たのだ。その奇襲を巧みに交わしつつ、交わした先輩同士も鍔迫り合いをはじめる。

 

 

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そんな局所局所のバトルを繰り返して、ボーダー突破が1人かもしれないし5人かもしれない着順が生まれた。結果として21点を超えたのは……平山、海野、鎌倉の3人。あとは20点もなく、三浦は19点に甘んじた。そして、この19点という数字が、12Rの景色を大きく変えることになる。

 

 

 

 

 

岡山ライン

 

12R 進入順

①寺田千恵(岡山) 13

②金田幸子(岡山) 11

③長嶋万記(静岡) 18

④高橋淳美(大阪) 25

⑥山川美由紀(香川)26

⑤守屋美穂(岡山) 16

 

 

 

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 もし11Rで4人が21点を超えていれば、転覆した金田はじめ、寺田、高橋の3人にファイナル出場の目はほとんどなかった(すでに当確の長嶋、山川に何らかのアクシデントがあったとき)。が、最後の1議席の暫定ポイントが「三浦=19点」止まりだったため、寺田と高橋が息を吹き返したのだ。1着なら20点で、文句なしの当選。

 さあ大変だ。大方の予想として「テラッチは逃げてもダメ」だったのが「逃げたら確定」になったのである。消化試合のはずが、メイチの勝負駆けに。舟券を買うファンにとって、レースの性質がガラリと変わったわけだ。

 

 

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 それまでのオッズは、長嶋からの舟券が恐ろしく売れていた。テラッチよりもはるかに売れていた。時間ととともに、テラッチのオッズが徐々に下がっていく。全国中で「テラッチ・買い」の資金が投下されている。高橋のオッズも少しずつだが下がり、逆に長嶋、山川、金田のオッズが上がりはじめた。金田のアタマ舟券を買うのは、具の骨頂。そう考えた舟券オヤジは多いだろう。

 女子王座では、テラッチの献身的なサポート、アドバイスがあって金田が優勝した。金田本人が「寺田さんのおかげです」とインタビューで公言していた。そのテラッチが1号艇でメイチ勝負駆けなのである。ファイナル入りが絶望的な金田は、2号艇なのである。金田が何をするか。テラッチの壁になる。そう考えるだろうし、私もそう決めつけた。テラッチのオッズはぐんぐん下がり、金田のオッズは面白いように跳ね上がっていった。

 

 

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 そして本番……勝ったのは金田だった。トップスタートを決めて(「見事な壁だ」と私は思った)、ズッポリと差しきった。1周2マーク、必死に追いすがるテラッチを、冷徹なまでの正確無比なターンで振りほどく。

「き、金ちゃん、辛いっ、激辛ッ!!」

 記者席で叫びながら、私はまた自分のアホさ加減に辟易していた。「岡山ラインの結束」なんていう誰もが思う常識に、ガンジガラメになっていた自分のバカッぶりに。テラッチが勝負駆けでもそうじゃなくても、金田のアタマ舟券を買うつもりはなかった。が、そういうことではなく、「金ちゃんのアタマだけはこういう理由でありえない」などと知ったかぶりで決め付け、それを嘲笑うように金ちゃんが先頭を走っているという図式が、もう完全に私の大バカ大賞決定なのである。ギャンブラーとしてぼんくらなのである。

 

 

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 ま、どっちにしても買わない舟券なんだから、いっか。

 なんて開き直りつつ金田の激辛の走りを見ていたそのとき、私は「あれっ??」と思った。

 このまま2-1決着なら、テラッチは19点じゃないか?

 慌てて計算する。確かに19点だ。そして、三浦が③③⑤着でテラッチが⑤⑤②なら……

「テラッチが上だっ!!」

 また私はひとり叫んだ。この2-1は「岡山ライン」的にあり、だったのだ。じゃあ、じゃあ、金田はそれを知っていて差しきったのか?? テラッチはどこまで知っている?? これで2着なら残れると思ってる?? 何を考えて走ってる?? でもって「2-1でもテラッチ当確」と気づいて、あえて2-1を買ったヤツがこの世の中にいる??

 

 

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 頭の中がくらくらした。そして、また自分に呆れつつ、思考を停止した。こんな下世話なことばかり考えてるから、つまらん常識に束縛されるんじゃないか、俺。そう思った。

 なんだかレースと関係ないことばかり書いてしまったが、こうして最後の1議席が決まったのである。

 ちなみに2-1の2連単は3000円……常識の罠が生み出した、不当なまでの高配当だと思うぞ。反省。(photos/シギー中尾、text/畠山)