寺田千恵はやはり人望がある。優勝を決めての共同会見。谷川里江が覗きに来て、さらに金田幸子も嬉しそうに聞き入っている。寺田はもともとは福岡支部で、立間充宏と結婚して岡山支部に移籍したが、金田が以前「寺田さんが岡山に来てくれたことは本当によかった」と言っていたのを聞いている。だから、テラッチの優勝は仲間たちの気持ちをアゲてくれる。
今日は「自信をもってレースに臨めた」そうだ。寺田といえば、プロペラ調整所の主的なところがあって、そこにいけば寺田に会えると言ってもいいくらいだ。周囲には後輩がいつもいて、アドバイスを寺田にもらったりもしている。今節は、吉田拡郎が寺田にいろいろと質問していたこともあったし、その様子はさながらテラッチのプロペラ講座だった。今日も、寺田はきっちりと調整をはかった。もともと女子では上位だったパワーは、今日完璧に仕上がったようだ。こうなったら、寺田を脅かす存在はなかなか出てこない。完勝だったと思う。
ウイニングランから戻ってきた寺田は、満面の笑みを見せていた。スマイルてらっちの愛称は伊達ではない。その笑顔が、会心のレースをやってのけた喜びをそのまま表現していた。
テラッチおめでとう! この賞金上積みで、グランプリシリーズの圏内にも入ってきた。新型モーターについてもつかんできたところがあるというから、実に楽しみだ。なにより、グランプリシリーズ→クイーンズクライマックスと2週間ぶっ通しでテラッチに会えるのが嬉しいぞ。住之江&福岡を楽しみにしていよう。
なにしろ6選手中5選手がクイクラ当確。勝負駆けではない選手たちにとっては、大きなレースの優勝戦という意味合いであって、しかもレディースチャンピオンやクイクラとはレース自体の意味合いも違う。敗れた悔しさはそれぞれにあるだろうが、雰囲気は比較的淡々としていたと思う。
違う意味があるとするなら、やはり宇野弥生。ただひとりのクイクラ勝負駆け選手だ。レース後の表情はもちろん悔しさを感じさせるものだったが、それはクイクラ行きが潰えたことか、あるいはコンマ21というスタートに私らしくないことを感じたことか、あるいはその両方か。着替えを終えて、荷物をまとめて帰郷準備をしている背中は、やはりちょっとせつないものがあった。来年こそは、私らしさ全開でクイクラの舞台に戻ってほしい。まずはシリーズで大暴れを!(PHOTO/中尾茂幸 池上一摩 TEXT/黒須田)