BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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THEピット――「ブレない」強さ

 

 

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 太田和美が1Rを逃げ切り。これで後半12Rは無事故完走で準優OK。事実上の当確である。初日に不運な6着があって、今日は勝負駆けを強いられたわけだが、残っていた1号艇をきっちりとモノにし、大偉業への第一関門をクリアした。いよいよ、歴史が塗り替えられるカウントダウンが始まった!

 と、こちらは当然、エキサイトしてしまうわけだが、太田自身は淡々としたものである。まったくの自然体。重圧などまるで感じていない様子で、悠然と構えている。1着で帰ってきたあとも、祝福する平山智加に穏やかな笑みを向けただけで、高揚感のようなものも見えない。どんなときでも、大きな記録がかかっているときでも、まるでブレない精神力は、まぎれもない強さであろう。

 この太田といい、福岡での菊地孝平といい、このところ「ブレない強さ」「己を信じ抜く強さ」を感じる機会が非常に多い。ボートレースはもちろん機力も大事だが、気力の占める割合も相当大きいと思わざるをえないわけである。

 

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 その菊地孝平も、完全に勝負モードに入っている。よく書いてきた菊地モード――視線は下を向き、険しい表情で脳内コンピューターをフル回転させている様子が、今朝は見られたのである。準優進出はほぼOK。背水の陣というわけではない。だが、それは菊地の心に緩みをもたらさない。準優好枠から地元SG優勝という大望のために、さらに鋭くなっていくわけだ。

 彼が菊地モードに入ったら、仮にすぐ近くですれ違ったとしても、まず声などかけられない。その集中をコンマ05でも途切れさせるのは、絶対的な悪のような気になってくるのだ。この迫力ある表情は、勝負を目前にした際の、菊地の「いつも通り」。今節もブレることなく、SG連覇を狙っているのだ。

 

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 一方、崖っぷちを強いられている選手は、やはり緊張感が漂っているものである。まずは、ピンピン勝負の鎌田義だ。2Rは逃げ切り。レース直後こそ、出迎えた仲間におどけた笑顔を見せたが、基本的に視線は鋭い。それでも、持ち前のサービス精神が発揮されるあたりも、さすがのカマギー。2Rは2~6号艇に94期から100期の若手ばかりが組まれていた。そんな彼らが、レース前に言ったようなのだ。「オヤジ狩りしてやる」と。ただ一人40代の鎌田を、若者たちがよってたかってボコボコにまくってやる。そんなところでしょうね。

「お前ら~、オヤジ狩りするとか言いやがって~」

 狩られずにすんだカマギーは、控室で若手にそう言って胸を張る。その後、爆笑。ま、いつものカマギーの周辺、である。

 ただし、その後、鎌田はすぐに気合を入れ直している。ふたたび視線が鋭くなり、エンターテイナーの顔は消えている。後半も引き続きピン勝負! そんなときの鎌田としては、この険しい顔こそが、いつも通りである。(PHOTO/中尾茂幸 池上一摩 TEXT/黒須田)