BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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浜名湖グラチャン 極私的回顧

連覇

 

12R優勝戦

①今村 豊(山口)08

②瓜生正義(福岡)06

③服部幸男(静岡)06

④菊地孝平(静岡)04

⑤太田和美(大阪)05

⑥深川真二(佐賀)26

 

 

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 有言実行、昼の優出インタビューで「まくりますっ!」と高らかに宣言した菊地が、4カドからまくりきった。最後に引き波にハメた相手は、またしても今村豊。オールスターでは2コースから差しハンドルを突き刺し、今節はカドまくりで53歳の野望を打ち砕いた。

 今日は、すべての流れが菊地の優勝へと注がれていた。結果論だが、そう思う。99%前付けに出ると見られていた深川が、チルト3度に跳ねて枠番を“主張”した。今までどおりに深川が動いたら、菊地はほぼ5コースだったはずだ。5コースから同じようにまくりきれたか。難しかったと思う。風も味方した。今日の浜名湖はやや強めのホーム追い風から無風、さらに10Rあたりから強い向かい風へと変わった。理想的なまくり水面になった。

 

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 そして、気になる部分があってペラの微調整を続けてきた菊地は、最後の試運転で文句なしの正解に辿り着いた。求め続けたパワーが来た。

「これなら、強気で攻められる」

 意を強くしてスタート展示に臨んだ。デジタルスターターの菊地にとって、スタート展示は他の選手よりも大きな意味を持つ。タッチSを狙って勘通りだったら、本番でも際どい部分まで踏み込める。スタ展で大きなズレが生じると、本番での補正にも限界が生じてやや慎重になる。今日のスタート展示はフライングだったがコンマ01、ほぼタッチ。これで、不安な要素がなくなった。すべての準備が整った。

 

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 あとは、見ての通りだ。SG優勝戦だというのに、コンマ04、全速。カド受けの服部も06まで踏み込んだが、おそらくアジャストしたのだろう。スリットを過ぎてすぐに、菊地が半艇身以上のアドバンテージを得た。伸びなりに、ゆっくりと舳先を左に傾ける。4カド、向かい風、理想の伸び足、すべての材料をひとつのスピードへと昇華させて、ぴったり過不足なくインの今村を引き波にハメた。この瞬間にSG連覇が決まった。それほど完璧なまくりだったし、本人もこの時点で優勝を確信したという。もちろん、これらの材料の中には「オールスターVの自信」という貴重なスパイスも混じっていたことだろう。少年は1日で劇的に変化するらしいが、大人だって1カ月もあれば大きく成長することがあるのだ。SG連覇おめでとう、キック。

 

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 ん、同じ北海道育ちでお気に入りのキックが快挙を成し遂げたのに、テンションが低い? それは書いている私自身も自覚しています。今日の私の◎は、キックが引き波にハメた服部&ミスターのツートップ◎だった。ふたりのうち、どっちかが勝つことを夢見ていた。どっちかが勝ったときの予定稿も、頭の中に止めどなく溢れ出ていた。ミスターが逃げきったら、服部がまくり差したら、あれを書こう、これを書こう。レースの前から、そんなことばかり考えていた。それは、今日にはじまったことではない。オールスターのときもそうだった。菊地本人にも菊地ファンにも申し訳ないが、これが嘘偽りない私の本音である。キックが連覇したことの嬉しさと、ふたりのレーサーが連続で負かされた哀しさは、同じ天秤では計れない。

 

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 だったら、勝者への賛辞はほどほどにして、敗者についての思いの丈を語ればいいじゃないか、今までにもそんなおセンチな記事があったじゃないか。そう思う読者もおられるだろう。だが、それはしない。しません。すぐにまた、脳内の予定稿を書くべきチャンスがやって来るのだから。うん、次こそは書ける。その日のために、今日は何も書きません。(photos/シギー中尾、text/畠山)

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