BOAT RACE ビッグレース現場レポート

BOAT RACE ビッグレースの現場から、精鋭ライター達が最新のレポートをお届けします。

THEピット――強烈!

 

 

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 いやはや驚いた。10Rの3周2マークだ。1号艇の白井英治が、石野貴之に差されただけでなく、太田和美にも交わされて3番手。これは痛恨だなあ、とぼんやり白井を見ていて、その後方で毒島誠が坪井康晴を全速で交わし去ろうとするのは視界に入って来てはいた。水面から視線を外して出走表の白井の欄に「3」と書き込む。そのとき、一緒に見ていた池上カメラマンが「届かないかっ!」と声をあげた。届かないか……? 誰が? えっ、毒島!?

 視線をモニターに向けると、ウソッ、毒島が白井を捉えて、しかも舳先が前に出ている! 勝手に視線を外したのは自分だが、僕には毒島がワープしたようにしか思えなかった。あの全速ターンが安全圏かと思われた白井に届いた!? リプレイを見直せば、たしかに毒島は一気に白井に並びかけていたのだけれど。

 

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 白井自身も予想外だったようだ。レース後、今村豊と首をひねりながらレースを振り返る白井に、毒島はちょっと恐縮したように歩み寄っている。はじめ白井は毒島に気づかなかったが、毒島が腰を低くして視界に入っていくと、白井はそちらに顔を向けた。「すみませんでした」と毒島。すると白井は、少しだけ表情を和らげて「びっくりしたよ~~~」と返したのだ。そうだよなあ。あれを油断と言ってしまったら、白井が少しかわいそうな気がする。とにかく毒島がお見事だった。この男の強さは、もはや本物である。

 

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 強烈なまくりといえば、田村隆信! 8R、2コースから今垣光太郎をツケマイで沈めた。これまたお見事だった。田村選手、もう大丈夫でしょう! と、モーター格納を終えた田村に近づいて拍手。あのツケマイを見せられては、大丈夫と言うしかない。田村は爽快に笑った。

 メンタル的にも、この勝利は大きかったようである。「これでリラックスして行けますよ~。負けたら弱気になってたかもしれないけどね」。展開が向いたとか、前がミスして逆転したとか、そういう勝利ではない。2コースから思い切って攻めて勝ったのだから、これは良薬になるだろう。普通は言わないんだけど、舟券もいただきました、と告げる。僕の思いがいちばん伝わる言葉だと思ったからだ。また田村は爽快に笑った。うん、最終的な結果がどうなるかは神のみぞ知るところだが、あと4日間、最高の戦いができる状態にはなったと思う。

 

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 さて、この写真は終盤戦に試運転からあがってきた選手のエンジン吊り。昨日同様、この時間帯の試運転組は全員が女子だった。エンジン吊りに出てきたのもほとんど女子、というなかで、瓜生正義の顔が目立ちますね。なんだかまるで、女子戦に紛れ込んでしまった大本命、ってな感じ? 試運転組がピットに上がって来た際、女子選手が6~7人もリフトに駆けつけていて、何も瓜生がわざわざ加わる必要はなかったのに、でも瓜生はその場面に出くわしたら、当たり前のような顔で参加するわけである。実は、SGでも瓜生はこういう動きになることが多いんですね。というのは、特に12Rに出走する時など、最後の最後に着水するからだ。たとえば初日ドリーム。10R発売中などに12R組のスタート特訓が行なわれる。参加したドリーム組は、ボートをそのまま係留所につける選手も多いが、瓜生は必ずいったん陸に上げているのだ。ボートを拭いたり、セッティングを点検したり。優勝戦でも同様ですね。ちなみに、白井英治も同じパターンの動きをします。そのこだわりをいつか聞いてみようと思っていて、まだ聞いてません。

 というわけで、終盤の時間帯には装着場に瓜生の姿があることが多く、その頃に試運転を終える選手のエンジン吊りには即駆けつけるという次第。したがって、今節はこんな光景ができあがるわけである。

 あ、この写真の奥のほうに井口佳典がいるのがおわかりでしょうか? 実は井口と桐生順平もここに駆けつけていた。それも、控室のほうからダッシュでやってきていた。瓜生に限らず、選手の協力作業の意識は確固たるものなのですね。

 

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 で、この流れで桐生、鎌倉涼、平高奈菜が談笑するというシーンもあった。100期軍団だ。今節、男女の新鮮な絡みを発見しては、珍しがってここに記しているわけだが、この絡みは珍しくもなんともないわけであります。というか、2カ月前に戸田で見ましたな。桐生-鎌倉は今年の5月、昨年の5月に福岡で見ているし。桐生-平高も11年5月尼崎で見たはずだ。鎌倉-平高は夏とか暮れとかに何度も見ている。今回は戦う舞台が違うが、いずれ3人が最高峰の舞台で剣を交える日も来るはずである。この絡みがSGの定番になったりもするんだろうなあ。

 

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 ところで、今日は今村豊、白井英治、寺田祥の地元勢が全員1着。山口支部は意気が上がっている。となれば、この人にも頑張ってもらうしかない。レディチャレカのほうの向井美鈴だ。ここまで中間着が続いているが、気配は悪くないと思う。レース後にはギアケース調整をしていたが、アドバイスを送る整備士さんと笑い合う姿には、地元で戦えることのアドバンテージを見たような気がした。

 昨日のレディチャレカTOPICSに、永井聖美の2年前のリベンジの件が記されていたが、それを言うなら、向井だって女王の舞台に忘れ物をしてきている。あのとき、初日で途中帰郷となったのが、他ならぬ向井なのだ。たった1戦走っただけで、しかもゴールできずに、離脱しなければならなかった栄えある第1回賞金女王決定戦。ふたたび暮れの聖戦に名を連ねなければ、あの日の無念は晴らせないだろう。

 この地元レディチャレカには選考20位、最下位で滑り込んだ。ツキは間違いなくあるはずである。一発逆転を決めるには最高の舞台。しかも、超心強い先輩がいるのだから、やはりアドバンテージはあるはずだ。明日は、レース後に会心の笑みを見たいですね。(PHOTO/中尾茂幸 池上一摩 黒須田 TEXT/黒須田)