BOAT RACE ビッグレース現場レポート

BOAT RACE ビッグレースの現場から、精鋭ライター達が最新のレポートをお届けします。

尼崎クラシック 優勝戦私的回顧

未来への祝辞

 

12R優勝戦 進入順

①桐生順平(埼玉)08

②毒島 誠(群馬)18

④仲口博崇(愛知)27

③中澤和志(埼玉)18

⑤守田俊介(滋賀)17

⑥石野貴之(大阪)09

 

 

 

f:id:boatrace-g-report:20171218160814j:plain

 おめでとう、順平!!

 SGを獲るべき男が、5度目のチャンスできっちりモノにした。舟券では俊介だけを応援していた私だが、心の底から祝福したい。昨日、尼崎の居酒屋『やまちゃん』で、私と黒須田は「明日の優勝戦は、他の5人より桐生の背負っているものが、とてつもなくでかい」という見解で一致した。毒島、中澤、仲口、石野の4人は、すでにSG覇者として記録に名を連ねている。俊介は昔からおっとりした性格で、背負うというより「獲れたら嬉しいな」というタイプだ。だが、桐生はSG無冠のまま、艇界のトップレーサーとして広くファンに認知された。「SGにいちばん近い男」というより「明日にでもSGを獲るべき男」というのが全国のファンの共通認識だろう。それが、桐生本人にとってどれだけのプレッシャーになっていることか。

 

 

 

f:id:boatrace-g-report:20171218160843j:plain

 過去に4度SG優勝戦で敗れ、とりわけ1号艇で6着に敗れた2013年の笹川賞は、桐生の心に暗い影を落としたはずだ。「いつでも獲れる」と本人もファンも信じていても、それが「いつか」は誰にもわからない。そして、今日が2度目の1号艇。このレースが今後の桐生に与える影響はかなりでかい。私はそう思った。きっちりモノにすれば、2個目3個目のタイトルは足早に訪れる。だが、逆に取りこぼせば……桐生の心をさらに暗い影が蝕み、しばらく足踏み状態に陥るのではないか。そんな予感があった。

 明日、桐生順平は絶対に勝たなければならない。

 酒を飲みながら、黒須田とそう話した。

 

 

 

f:id:boatrace-g-report:20171218160857j:plain

 そして、桐生は自力でケリを付けた。コンマ08、スリット全速。4カドの中澤が伸びなりに襲い掛かったが、紙一重の全速インモンキーでその強襲を交わした。見事な勝利だったし、この勝利でファンの共通認識と実績がやっと合致した。今後のファンの思いは「桐生がSGを何個獲れるか」に変わり、桐生は着実に、あるいは矢継ぎ早にその数字を増やしていくだろう。瓜生正義や池田浩二のように。今日の私の祝福は、単にSG覇者の仲間入りを果たしたというレベルではなく、未来の順平への祝福である。

 それにしても、どこまで艇界を席巻するつもりなのか、ニュージェネレーション軍団は。今日の1号艇・桐生、2号艇・毒島はもちろん偶然の産物ではない。今節も異次元のターンでポイントを積み重ね、当然のようにこのポジションをゲットした。艇界に押し寄せている大きな波が、一時的な高波ではないことを証明してみせた。何日か前にも書いたが、面白い時代が到来した、と思う。1マークの刹那的なエクスタシーだけではない、道中での断続的なスリルとサスペンス。ベテラン勢の反撃も相まって、このレベルの高いエンターテインメントはさらにヒートアップしていくことだろう。

 

 

 

f:id:boatrace-g-report:20171218160916j:plain

 桐生のウイニングランを見ながら、私の中に芽生えた思いがある。

「これからさらに大人気の銘柄級になるであろうNG軍団と喧嘩しようかな」

 つまり、彼ら全員をアタマ舟券の対象から削除する。今現在、穴党にとってこれほど戦い甲斐のある相手は他にはいないから。この沸々と湧き出た思いは、私を大いにときめかせた。いっちょ、やったるか。そう思った。うん、きっとオールスターあたりから、私はやらかすに違いない。戦車に竹槍の、不毛な舟券闘争を。冒頭の言葉に、一言だけ付け加えてしまおうかな。

 おめでとう、そして、さようなら、順平!

 最後に、お疲れさん、俊介。今日、和志が珍しく絞りまくりを敢行したとき、私の脳内にはバックで突き抜ける俊介の映像が鮮やかに浮かんだ。実現こそしなかったが、いい夢を見させてもらった。今晩は禁断症状が出るまで耐えに耐えた「ガリ一気食い」を心行くまで堪能し、ローリングシースーに舌鼓を打ってもらいたい。(photos/シギー中尾、text/畠山)

f:id:boatrace-g-report:20171218160942j:plain