BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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TOPIC 2日目

ワンマンショー

 

 ミスターのミスターによるミスターのための名人戦。

 もはや、そう呼ぶしかないだろう。強い。強すぎる。今日の今村豊は6号艇&5号艇の2回乗り。枠なり主体のミスターが、この“試練”でどこまでポイントを稼ぎきるか。それが今節のV戦線で大きなファクターになると見ていた。もちろん、進入想定も6コース&5コースだったのだが……。

 

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 実戦は違った。他の選手たちが、ミスター46号機の破壊力にひれ伏したのだ。まずは6号艇だった6R、ミスターは例によって「はいはい、6コースでOKですよ~」ってな感じで、のんびりと艇を流していた。すると、5号艇の高橋淳美が「どーぞ、中に入ってください」とミスターを招き入れた。ミスターの内にいたら、ほぼ100%まくられる。ならば、外に貼り付いてマークしたほうが得策かも。そう思ったに違いない。淳美はスタート展示の段階から、早々にミスターマークの6コースを“主張”してもいた。

 やはり、並びは123465か。

 と見ていると、「ミスターの外が欲しい」と考えた選手は淳美だけではなかった。続いて4号艇の古場輝義が「どーぞどーぞ」とミスターを手招きした。うん、気持ちはわかる。ただでさえF2持ちの身の上なのだ。スタート勝負で張り合えない以上、ミスターの外にいたほうが断然美味しいだろう。

 あららん、123645ですか。

 いや、まだ終わらない。さらに3号艇の山崎昭生が「どーぞどーぞどーぞ」。

 あんたら、ダチョウ倶楽部かーーい!!

 

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 と心の中でツッコミを入れている間に、ミスターは3コースになっていた。ミスターが「どこでもスロー戦法」を採用して以来、外に追い出された待機行動は何十回も見てきたが、3つも内に入ったのは初めて見たぞ。別に「オレがやる!」と手を挙げたわけでもないのに(笑)。淳美と古場テルは、心の中でチッと舌打ちしたに違いない。美味しいジカマークのつもりでコースを譲ったのだから。

 そして、12秒針が回ってからミスターは「オレがやる!」と手を挙げた。お腹を空かした3人の選手が外に貼り付いた以上、自力で攻めるのが男というものだ。コンマ12、もちろん全速。凄まじい行き足だった。かなり凹んだ2コースの平石和男など歯牙にもかけず、コンマ17まで踏み込んだイン山川美由紀をも軽々と飛び越えた。3コースからの、余裕綽々のハコまくり。で、あまりに楽なハコまくりだったため、平石も山川も引き波を浴びることなくくるりと小回りで残した。あっという間の621隊形。ダチョウ倶楽部の3人は、枕を並べて熱湯風呂に飛び込んだ。じゃなく、置き去りにされた。ミスター46号機のパワーに期待した「どーぞどーぞどーぞ作戦」は、ミスター46号機のパワーがあり過ぎるが故に徒労に終わったのである。

 

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 そして、5号艇の11Rでも46号機はミラクルパワーを披露する。このレース、4号艇のジ・エンド亀本勇樹が「どーぞ」作戦を敢行した。よもや、3号艇の柳田英明も?? と思ったものだが、伸びに自信のある柳田は真っ向勝負に出た。

 ミスターよりも早いスタートを決めて、先に攻める!

 そんな男気溢れる気合で、コンマ04全速アタック。ミスターもコンマ05まで踏み込んだが、まくりきれる隊形ではない。1マークの手前で完全に後手を踏みつつ、やや苦し紛れに握ったように見えた。2、3着はありえても、とてもアタマを狙える展開ではなかった、はずだ。だが……その無理気味のまくり差しは軽々と数本の引き波をまたぎ、差して先頭に立った篠原俊夫に近づき、並び、あっという間に2艇身ほど突き抜けていた。前検の足合わせで私を驚愕させたパワーが、ついに白日の元に晒されたのだ。あの足は反則でしょ、ミスター!!

 

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 このミラクル逆転劇も含め、無傷の3連勝で節間勝率は10・57。いったい、この勢いとパワーを誰が止められるのだろうか。機力だけで言うなら田頭実と矢後剛、気迫&リズムという点では熊谷直樹。現状では、この3人だけに一縷の望みが残されている気がする。

 おっと、ふと気づくと、優勝戦回顧のようにミスターのことばかり長々と書いてしまった。丸10年ほど大レースのTOPICSを記してきたが、ひとりの選手だけに終始したことは一度もなかったはずだ。うーーーん、私も2日目にして、ミスター46号機にすっかり洗脳されてしまったのだろうか。穴党の端くれとして、「完全V、どーぞどーぞ」とは思っていないはずなのだが……。(photos/シギー中尾、text/畠山)

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