BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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平和島ダービーTOPICS 4日目

THE勝負駆け①予選トップ争い

余力たっぷり?の同率首位

 

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 昨日まで破竹の4連勝。久田敏之が独走状態に突入したため、今日のトップ争いは極めてシンプルな条件になった。久田が残り1走を無事故完走した場合、逆転の目があるレーサーは今垣光太郎のみ!! ただし、今垣の成績に関係なく10Rの久田が④着以内ならトップ確定。さらに、8Rの今垣が③着以下だったら、その時点で久田のトップが確定する。

 

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 そんな久田圧倒的優位の元、8Rの今垣が首の皮1枚の可能性を残す。4号艇4カドから気合の捌きで2着ゲット。大きなプレッシャーとは言えないものの、10Rの久田に⑤着以内という条件を突きつけた。

 

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 そしてそして、雌雄を決する10R。今日の久田は1マークからほとんど見せ場もなく、道中でも揉まれ続けて5着に敗れた。予選勝率は8・40。今垣光太郎と同率までダウンし、勝ち星の差でなんとかシリーズリーダーの座を守りきった。「最後にアヤがついた」とも言えるし、「1着でも5着でもトップはトップ」という気にもなる。まあ、精神的には無傷の5連勝(これなら12R1号艇だったかもしれない)よりも大なり小なりプレッシャーが軽減されることだろう。明日は仕切り直しの11R1号艇。久田がこのままV戦線を突き進み「SG初優勝ブーム」を継続させることができるのか。メンタル面も含めて見守っていくとしよう。

 

THE勝負駆け②準優ボーダー争い

消えた快速パワー×2

 

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 まずは、予選ファイナルで夢破れたふたりの選手、いや、ふたつの快速モーターについて書く。篠崎仁志10号機と石野貴之46号機。12Rにこのマッチアップが組まれたことは、両者にとって不運としか言いようがない。

 12Rを振り返ろう。スリットはほぼ横一線で、わずかに1・2コースが凹んだ隊形。そこから、3コースの仁志10号機が節イチの行き足で一気に加速する。昨日、豪快な5コースまくりを決めた仁志は、今日もその気になった。ゴリゴリの絞めまくり。賭けてもいいが、インコースが月並みなパワーだったら、文句なしに突き抜けていたばずた。

 だが、今日の相手が悪すぎた。日に日に伸び足がアップしている石野貴之。しかも、メイチの①着勝負。2コースの毒島誠を置き去りにして、石野46号機がぐんぐん伸び返す。その気になっている仁志も止まらない。2艇の航跡は1マークの直前でぴったり重なり、激しい衝突とともに真横に流れた。とりわけ大きなダメージを受けた仁志は、大差のシンガリに。③着条件だった仁志10号機の準優突破の可能性は、この時点で潰えた。

 

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 一方の石野は態勢を立て直して先頭集団に食らいつこうとしたが、大競りのロスが祟って追いつけない。そのまま準優ボーダーに届かないまま、無念の3着でゴールを通過した。今日の1~11Rで、インまで届いたまくり選手はひとりもいない。それほどインコースに有利な水面だった。仁志がそうであるように、石野46号機にとっても仁志10号機がいたことが痛恨の“敗因”だった。

 うーーーーん、残念無念! この両者は絶対に準優に乗ってほしかった。日ごとにパワー変化はあったものの、昨日あたりから10号機と46号機は間違いなくストレート足のツートップだった。準優の4、5号艇あたりに配置されれば、私の脳内レースも実戦も恐ろしくダイナミックなものになっただろう。今日の両者の意地と意地のぶつかり合い、火の出るようなパワーvsパワーの叩き合いは、できれば優勝戦で見たかった。

 

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 そして……私が2カ月前ほどから願っていた「SGファイナルでの19号機vs10号機の直接対決」も、この12Rで消え去った。今節、私はことあるごとに“新旧エース”について書いてきた。うんざりしている読者もいるだろうが、許していただきたい。皆勤賞にはほど遠いものの、ここ半年ほどちょいちょいこのホーム水面に足を運び、季節折々のパワー相場を見つめてきた。夏には19号機の凄まじい行き足~伸びをダービーで全国のファンに見てもらいたいと思ったし、先月あたりは10号機にも同じ思いを抱いた。ネットのVTRで誰もが観戦できる時代なのに、「自分が育てた子供たちの晴れ姿を見せつけたい」みたいな妙な父性本能?とともに、このダービーを迎えた。新旧エースの成績にはムラがあったが、つい先刻まで必ず優勝戦に残ってくれると信じていた。かなり倒錯した思い入れだと自覚しつつも、10号機が今日の時点でV戦線から離脱したことが残念でならない。

 

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 私の大きな願いのひとつが潰えたその12R、6コースから鮮やかに勝ち抜いたのは魚谷19号機だった。10号機の玉砕アタックで生まれた展開を捉え、さらに道中は抜群のレース足であれよあれよと先頭に躍り出た。結果、今日はピンピン連勝で準優1号艇ゲット! 彼我の差が哀しくもあるのだが、これが今節の新旧エースの運命だったのだろう。明日以降も、私の視線は偏執的な想いとともに魚谷19号機を追いかけ続ける、と思う。

                  ★

 

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 パワーではなく、選手についても書こう。今日の勝手なMVPは王者・松井繁! 進入といいスタートといい1マークの攻防といい、今日の9Rは「これぞ勝負駆け!」と唸らせる1着だった。単に素晴らしいレースというだけではなく、王者のプライドが随所に散りばめられてもいた。布石は昨日の勝利者インタビュー。

「明日は3号艇か5号艇か、どっちかですかね」

 そんなことを言っていた。今節の松井は5回走だから、割り当てられる枠番がやや変動的になる。最終日は3枠か5枠あたりが有力だったのだが、結果は5号艇。ここで王者が何を思ったか……本心は分からないけれど、松井はスタート展示でも本番でも“3コース”を奪いに行った。5号艇での前付けはさほど多くはない松井が、なぜ3コースにこだわったか。そこに王者のプライドが垣間見えた気がした。

「俺の定位置は、ここやろっ!!」

 そんな王者の雄叫びが聞こえるような3コース奪取だったな(笑)。

 

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 続いて、スタートだ。昨日の酒宴で、とある大阪の記者さんがこんなことを言った。

「すべての選手の中で、いちばんスタート力があるのは王者ちゃうかな。1年間、余計なところでフライングを切らんよう我慢して我慢して、平均コンマ15くらい。これは凄い思いますわ」

 王者は常に長期的な視野でグランプリだけを見据え、その場の勝ち負けにこだわるようなスタート勝負を我慢し続けている。それは、よく聞く話だ。さらに記者さんはこう言った。

「王者の中で、今がちょうどその封印を解いてもええ時期やと思うんですわ。明日の勝負駆け、王者は行くんちゃうんかな、キワのキワまで」

 見事な見識。王者は行った。行きも行ったりコンマ01、しかもフルスロットル!! 前夜の“予言”を聞いていた私は、起こしの段階から松井だけを見ていた。パッと見は、1・2コースのそれよりもワンテンポ遅れて見えた。むしろドカ遅れではないかと思ったくらいだが、間違っていたのは私の見立てだった。コンマ01、全速……。ほぼ同体に見えたスロー3艇の中から松井だけが勢いよく抜れ出し、「まくるぞっ」というアタックを仕掛けながら老獪なまくり差しハンドルに切り替えた。ピットアウトから1マークまで、すべて王者のシナリオ通りの“作品”だった、と言ったら言い過ぎだろうか。

 この圧巻の勝負駆け1着も含めて、松井の予選成績は54311……久田の快進撃を横目に、虎視眈々と頂点を狙う王者の妖しくも鋭い眼光が脳裏に浮かぶ。(text/畠山、photos/シギー中尾)