BOAT RACE ビッグレース現場レポート

BOAT RACE ビッグレースの現場から、精鋭ライター達が最新のレポートをお届けします。

準優進出戦ダイジェスト

以心伝心

 

 

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9R

①熊谷直樹(東京)03

②西山昇一(愛知)11

③長岡茂一(東京)12

④北川幸典(広島)10

⑤藤丸光一(福岡)08

⑥山田 豊(滋賀)13

 

 うーーーん、悪くはないのだが……熊さんの足が、もうひとつピリッとしない。昨日、コンマ10でミスター今村に軽~くまくられた熊谷は、さらにスタートを踏み込んだ。コンマ03。外の5艇は半艇身遅れの横並び。逃げきるに十分の隊形だ。そのアドバンテージを保ったまま1マークを先取りしたのだが、そこでやや流れた。熊谷のイン戦は「まくられるくらいなら差される」という握りマイが主体で、流れ気味になることが多い。今日もそうだったのか、それともサイドの掛かりが甘かったのか。そのあたりの判別が難しい流れ方ではあったな。

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 で、そんな熊さんのイン戦を何百回も見てきた長岡は、決め撃ちのまくり差しに出た。西山を叩くタイミングの早かったこと。「熊はソコソコ流れる。西山さえ叩けば前が開く」とハナから決めてかかっているような初動の早さだった。そして、その戦術は正しかった。パワーの勝利と言うより、決断の早さの勝利だったと思う。総体的なパワー評価としては、3着・西山のほうがはるかに勝っている。

 

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西山のそれは伸びが強烈で、他の足は中の上程度か。この伸び型のパワーのままで行くのか、何か変化を付けるのか。それによってレーススタイルも変わることだろう。

 さてさて、熊谷の正味の仕上がりはどの程度なのか。そのチェックが明日の重要なミッションのひとつだな。個人的には、1号艇より2、3号艇の熊さんのほうが大好物なのである。ニヤリ

 

西島、残った!PART2

 

 

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10R 進入順

①矢後 剛(東京) 18

⑥西島義則(広島) 08

②田頭 実(福岡) 09

③江口晃生(群馬) 25

④山川美由紀(香川)21

⑤大場 敏(静岡) 29

 

 やっと、本来の西島が帰ってきた! 前付けで2コースをぶん捕り、コンマゼロ台のトップスタート。内の矢後より半艇身ほど覗いた西島は、迷うことなく上を叩きに行った。これだ、こういう西島が見たかった。

 

 だがしかし、矢後との直線の足があまりにも違いすぎた。ぐんぐん伸び返され、きっちり艇を合わされてしまった。もうひと伸びあれば、きれいにまくりきれたはずなのだが……。奇しくも、矢後の20号機は2月に西島が引いたモーターだった。今シリーズの前に「できればもう一度アレを引きたい」と言わしめた愛機。飼い犬に手を噛まれる、ではないが、自分が育て上げたパワーによって、西島はあさっての方向まで飛ばされたのである。西島、万事休すか。(つづく)

 で、内2艇の競りに乗じて、豪快に差し抜けたのが田頭だった。その瞬間の音は……

ズバズボズッキューーーーーン!!!! (by椛島アナ)

 

 

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 もの凄い効果音(笑)とともに、田頭が後続を引き離してゆく。相変わらずゴキゲンなパワー。ただ、田頭の場合は機力を褒めるより、その人間離れしたメンタリティを絶賛するべきだろう。F2の身の上で、コンマ09発進。昨日まではコンマ15前後で“辛抱”していたが、今日はその封印を解いたのだろう。もちろん、明日以降も怯むことなく攻めるはずだ。我々はもうとっくに知っている。この男が真の漢であることを。

 さてさて、あさっての方向に流れた西島は、最後方を余儀なくされた。2周ホームでは、5番手の山川から3艇身以上も千切られていた。節間ポイントの乏しい西島は、3着以内でなければ準優入りは難しい。

 お疲れさん、西やん。

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 心の中で呟いたものだが、西島はまったく諦めていなかった。そこから追うわ追うわ追うわ追うわ。山川を交わし、併走する矢後と大場の背後に迫り、ついに最終ターンマーク、渾身の切り返し(ほぼダンプ)で準優ノルマの3着をもぎ取った。これぞ西島義則。前付け、トップS、ジカまくり、鋭角な小回りターンでの追い上げ、渾身のダンプ……完全復活を宣言するような暴れっぷりだった。パワーにしても、伸びは水準以下だが、ターン回りは上位の部類に入るだろう。もうひと伸び来れば、打倒・ミスターが現実味を帯びてくる。

 

トップ時計も……

 

 

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11R

①倉谷和信(大阪)06

②池本輝明(広島)14

③山室展弘(岡山)11

④島川光男(広島)01

⑤瀬尾達也(徳島)03

⑥古場輝義(大阪)15

 

 今日は山室の公開インタビューを見ることはできなかった。自身のスタートはコンマ11。上々の踏み込みではあったが、お隣、4カドの島川がコンマ01で襲い掛かったからたまらない。舳先を半分かけてその猛攻に耐え、苦しい態勢から勝ち目のない差しハンドルを入れるのがやっとだった。それでも2マーク、大混戦の2着争いから力任せの握りマイで抜け出したのだから、上位級のパワーと見ていいだろう。明日もミスターや西島相手に何をやらかすか、目が離せない存在ではあるな。

 

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 そんな混戦を尻目に、インから悠々のひとり旅を決め込んだのが倉谷和信だ。今節はミスターが輝きすぎて脇役的なイメージだが、初日から422111着。尻上がり、かつ危なげのないレースで3連勝を飾ったのである。勝ち時計も、昨日までのミスターの節間トップを凌ぐ1分47秒1。節二かどうかは微妙だが、トップ5に入るパワーだとお伝えしておく。

 気迫のスタートから3着に粘り込んだ島川は、現状ではかなり厳しそうだ。回るたびに山室から引き離され、逆に4番手の古場輝義の猛追に手を焼いていた。このままの足では、明日の準優を突破するのは至難の業だろう。明日の島川は、忙しい1日になりそうだ。

 

余談

 

 

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12R 進入順

①今村 豊(山口)10

②平石和男(埼玉)17

③今村暢孝(福岡)12

⑤新良一規(山口)06

④小畑実成(岡山)05

⑥平岡重典(大阪)07

 

 ミスターに関しては、何を伝えればいいのか。レースでの強さ速さは、今節はもはや当たり前すぎて書く気にもならない。たとえば「1マークのターンの出口で平石以下をあっという間に2、3艇身突き放した」とか。これって、初日から6戦全部がそうなのである。もはや何を書いても焼き直しの金太郎飴でしかないな。あ、数字に関してはふたつほど伝えることがあったか。

 

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 まずは勝ち時計。11Rで一度は倉谷に節間トップを譲ったが、1分46秒9でその地位を取り戻した。もっとも本人は不満らしく、ファンの前で「え、1分43秒台じゃなかったんですか、狙ってたのにぃ」と口をとがらせた。もちろんジョークだが、今節のパワーを見てると冗談とは思えないぞ。

 で、もうひとつの数字は、4日目終了時点の節間勝率10・33だな。あれっ??ってな感じである。昨日は確か、もっと高い10・40だったはずでは? そうなのだ。ミスターの勝率は、連勝するたびに下がっているのである。初戦のドリーム戦が12点だったから。勝てば勝つほど勝率が下がる摩訶不思議なレーサーって……(笑)。まあ、ミスターが完全Vを遂げたときには、このエピソードもほんのささやかな“レジェンド”として書き加えられるのだろう。以上、余談でした。

 

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 2着の平石はしっかり安定感のある、らしいバランス型に仕上がった。3着に粘った新良も、今村暢孝の追撃を退けたあたりに実戦足の強さを感じさせた。ただ……先頭のミスターの足が凄すぎて、どうにも霞んで見えてしまったなぁ。おそらく平石&新良も、遠ざかるミスターの背中を見て「あらあら」なんてタメ息をついたのではないだろうか。さすがに、そんな余裕はなかったか(笑)。

 あ、そうだ。これだけ強い強いミスターだが、今も昔も“競艇”には絶対的強者を脅かす厄介な難敵が存在する。進入のもつれだ。今日の10Rで西島が奇跡的な準優入りを果たし、ミスターと同じレースになったことは、果たして偶然なのか。明日の12レースは、大本命党も大穴党も、どっちもスリルを味わえるレースになるとお伝えしておく。(photos/シギー中尾、text/畠山)