BOAT RACE ビッグレース現場レポート

BOAT RACE ビッグレースの現場から、精鋭ライター達が最新のレポートをお届けします。

THEピット――ピットに熱と笑いを生む!

 

 

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 石野貴之の連勝が途切れた。夢のSGパーフェクトVはこれで消滅。なんとも残念である。

 石野自身も、もちろん残念がっている。ピットに戻ってヘルメットを取った瞬間、大きな大きな苦笑いがあらわれたのだ。そう口に出したわけではないが、「ダメだったか~」とその顔が語っていた。松井繁らも、石野に笑顔を向ける。先輩たちも「パーフェクトあるんじゃないの?」くらいは言っていただろうし、石野も前半のカドまくりでその気になっていたかも。苦笑いが延々と消えなかったところを見ても、快挙が消えた悔しさはかなり強かったはずだ。

 ただ、その表情を見て、これでプレッシャーのようなものからも解放されただろうな、とも思った。まだ予選の段階だから、重圧にとらわれるということもなかっただろうが、連勝が続けばやはりヒタヒタとプレッシャーは心の芯に忍び寄ってくるはず。勝負強い石野だから、そういう局面でもしっかり自分のレースはするに違いないが、余計なものがないほうがさらに勝負強さを発揮するはずだ。足は変わらずすごいから、優勝候補ナンバーワンであることには変わりはない。むしろここからがド級の強さを発揮する場面かもしれない。

 

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 石野をストップしたのは森高一真! この男が大仕事をすると、ピットは本当に盛り上がる。誰からも愛される人柄だから、快挙をみんなが喜ぶのだ。一昨年のチャレンジカップ優勝時には、王者をはじめ多数の選手が居残って、大喜びしていたものだ。今日も、森高の周りにはすぐに人の輪ができていた。

 

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 しかも、このレースには今村豊がいたから、レース後に速攻で森高をイジり始めるのは当然。「お前、握っていってよかったろう!」と大声で森高を呼び止めたのだ。全速スタートをビシッと決める今村豊を外から叩くシーンというのは、なかなかお目にかかれないもの。だから、6号艇時にはオールスローになるとわかっていても、今村を入れてカドを取ろうとする選手はなかなかあらわれないのだ。その難業を森高がやってのけた! 今村が珍しくスタートで後手を踏んだのもあったが、森高自身、コンマ04のスーパーショット。今村の遅れに惑わされず、全速で踏み込んだからこそ、あの5カドまくりがきまったわけで、今村が振ったのはその話だろう。

 

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 つづいて声をかけたのは、原田幸哉。6コース発進の原田にとって、森高が行ってくれたことは大きかった。きっちり展開を突いて2着。というわけで原田の言葉はこうなるわけである。

「一真先生、ありがとうございました!」

 その後も3人は、途中から市川哲也も加わって、楽しそうに会話を交わしながら控室に入っている。一真様、お見事! ピットに大きな熱を生んだのだから、今日のMVPに決まりです!

 

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 10Rでもピットの一部に熱が生まれていた。川﨑智幸だ。川﨑はこのレースで2着。①-③-④でマンシュウという珍しい現象が起きた一戦、その片棒を担いだのが川﨑である。

 今節、川﨑は登番が上から4番目。来年からマスターズに出場できる48歳で、同期が今年のマスターズ準Vの倉谷和信。すなわち、ベテランである。川﨑がベテランというのも、若手の頃から見ていた人にとっては違和感ありありなわけだが、ベテランの活躍はそんな人たちを熱くさせる。グラチャンで今村暢孝がカドからの豪快なまくり差しを決めたあと、当の川﨑や王者、田中信一郎らがめちゃくちゃうれしそうに祝福していたシーンは記憶に新しい。今日の川崎に対しても同様! ここまでオール3連対の活躍を、田中や倉谷が嬉しそうに称えていたのだ。

 川﨑は大笑い! ガハハハハハハ! と声をあげて、さらに周囲の笑いを引き出していた。6号艇で出走していた山口剛も、レース後の挨拶のために近寄ったはずが、つられて大笑い。まるで勝者とその仲間たち、という雰囲気だった。これで準優は当確! 優出したりしたら、またピットには呵々大笑の輪ができるだろう。

 

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 9R後は、みんなが三井所尊春を心配していた。井口佳典が4カドから締めていき、しかし伸び切れずに中野次郎の抵抗を受け、そのあおりを受けて三井所の舳先が大きく浮いたのだ。イン松井繁の身体に艇が接触したようにも見えたそのシーン。三井所はそこで引いたため大過なかったが、それでもそのシーンがどんなものだったのか、選手たちは他人事でなく理解しただろう。

 それもあって三井所は5着に敗れたが、さすがにその悔恨よりも、事故にならなかった安堵を覚えているように見えた。「危なかった~」というふうに、出迎えた仲間たちに目を見開いてみせたのだ。ただ、だからこそなのか、サバサバもしていて、井口と中野が次々と申し訳なさそうに詫びを入れにくると、朗らかに「いえいえいえ!」と逆に気遣っていた。三井所からすれば、中野と井口の気持ちもよく理解できるだろう。だから禍根も残らない。今日はノーサイドである。

 事故にならなかったことは本当によかった! 明日からの3日間も、元気な走りを見せてくれ!(PHOTO/中尾茂幸 池上一摩 TEXT/黒須田)