昨日の4R、森高一真があの西島義則からインを奪った。
1号艇が森高で西島が外枠ではなく、
1号艇の西島から森高がインを奪ったのだ。
トピックス記事でも大きく扱われていたが、
予選をすべて終えた森高をつかまえて、話を聞いた。
かねてから、森高は「インを取るだけならだれでもできる。
結果を出さなきゃアカンのや」が信条。
今でも語り草になっている06年蒲郡周年優勝戦での
上瀧和則との激しすぎるイン争い→死守にしても、
「イン獲っただけのレースや」と勝てなかったことを悔やむのみだ。
だから、2着に終わった昨日の4Rも納得しているわけがない。
それは想像できていた。
――2着でもダメ?
「アカンわ。結果を出さなきゃ(=1着でなければ)意味がない」
――あの西島義則から奪ったことに意味があるでしょ?
「なんで? スキがあったから行っただけや。あのまま楽インになったら、逃げ切られるだけやろ」
――でも、あの西島義則の1号艇から、でしょ。
15年前の賞金王で今村さんがやったけど、それ以外に見たことない。「そうなん? スキがあったから、勝つために行っただけやで」
観客は沸いていたけど、と付け足して、
少しだけ顔がほころんだが、
しかし森高にとってはインが獲れたから獲っただけ、
それで勝てなかったからただただ悔しい、のである。
それから森高は今日のレース=5号艇でスタート展示は2コース、
本番は6コースのレースに関してさらに悔やんだ。
待機行動をしながら、6コースからの勝ち筋がハッキリ見えた、
だから6コースを選んだという。
スリットを超えて、その予感はさらに強まった。
ところが、そこでテンションが上がって冷静さを欠き、
初動を入れる場所をミスってしまった。
森高はその悔しさについて、それから延々と語った。
森高にとっては、ファンをあっと言わせた昨日の4Rより、
勝てる展開を逃した今日のレースのほうが
重大な意味を持つものだったのである。
やはり、この男の哲学は最高だ!
ひたすら勝利だけを目指して戦う姿勢を信頼しないファンは
いないだろう。話をした時点では、予選19位だった森高は、
もし滑り込めたら「前付けやな」と笑った。
それも勝つための方策であり、
そこに勝ち筋がなければ6コースになることもありうる。
とにかく森高は徹底して勝利を追い求める男なのである。
と、森高と長話をしていたら、
そこに齊藤仁が乱入してきた。
「前に一真がやってたトークショー、その機会がまたあったら、
僕と一緒でどうですか?」
森高のトークショーというのは、
BOATBoyが主催して行なった
「BOATBoyのキャビらない話」である。
昨年10月、丸岡正典とのコンビで開催。
これがもう、濃厚で爆笑ものでここだけの話満載の、
強烈なものになった。あれに仁ちゃん、出てくれるの?
「めちゃくちゃおもろいで! 俺も丸ちゃんにどれだけ暴露されたか」「酒飲めるんでしょ?」
「飲める、じゃなくて、飲みながらやるんです!」
「じゃあ、ぜひ!」
こりゃあ一丁、やるしかないですかな!
年明けに齊藤仁&森高一真の異色コンビによる
超絶トークショーがあるかもしれませんので、
BOATBoyの告知にご注目を(笑)。
森高の話がずいぶん長くなっちゃったな。
今日はシリーズ戦の選手とも、いろいろと言葉を交わした。
いや、言葉でなく、目で会話を交わした選手もいた。
堂々の予選トップ、篠崎元志だ。
12Rのエンジン吊りで瓜生正義のモーターを運んでいた篠崎。
その背後にそーっと忍び寄る影は……今村豊!
篠崎はまったく気づいていない。でも僕は気づいている。
何かあるぞ、と眺めていると、
今村が篠崎の耳元に「ワッッッッ!」。子供か、ミスター(笑)。
ひっくり返るかと思うほどのけぞって驚いた篠崎は、
それを笑って見ている僕と目を合わせて、
「あの人、何するんすか、ねえ?」と視線で語りかけてきた。
「まったく、ねえ」と僕。
でも、それが今村豊だと篠崎も僕も知っている。
僕らは視線で同時に言った。「ほんとにもう」。
はい、話を盛っていることは否定いたしません(笑)。
優勝戦でこの対決が実現したら、楽しいんだけどなあ。
その12R前、対岸のビジョンで
レースを観戦しようと報道陣が立ち入ることができる
ギリギリのラインに陣取っていた。
ここは風の通り道になっており、11R過ぎに急に吹き始めた風が、
冷たく体を直撃する。寒い。
別のところで見ようか。
でもいちばん臨場感があるんだよなあ。でも寒い。
別のところで……いや、やっぱりここで!
と震えながら発走を待っていると、
石野貴之が優しく声をかけてきた。
「そこ、いちばん寒いっすよ」 気遣ってくれたのだ。
ありがとう、石野! でも頑張ってここで観戦します。
明日の9Rもここで見てます。応援しちゃうぞ!
(PHOTO/中尾茂幸 池上一摩 TEXT/黒須田)