韋駄天逃げ
10R
①岡崎恭裕(福岡) 05
②秦 英悟(大阪) 12
③上野真之介(佐賀)12
④山田康二(佐賀) 12
⑤宮地元輝(佐賀) 08
⑥岡村慶太(福岡) 14
今節の岡崎はスタートがキレッキレ。昨日までの平均コンマ09そのままに、今日もゼロ台の領域に踏み込んだ。コンマ05! 他艇はほぼ約半艇身遅れの横並び。この隊形で負ける岡崎ではない。わずかに覗いた宮地が全速で握ってまくり差しを狙ったが、回りきったときに岡崎は3艇身ほど先を突き抜けていた。圧勝。2番手も宮地が危なげなく獲りきり、徐々に隊列は縦長になっていった。岡崎のスタート力だけが光るレースだった。
1着・岡崎、2着・宮地。
岡崎の足は「全部がいい」と本人もご満悦のようだが、私は「正味のところ、中堅上位レベル程度では?」と値踏みしている。とにかく今節の最大の武器はスタート=コンマゼロ台全速で、スリット一撃でケリを付けるパターンが多い。今日の勝ち時計1分50秒1も全12レースの中でいちばん遅かった(もちろん、慎重に回った可能性もあるが)。ただ本人が「足はいい」信じることは非常によいことで、その自信が明日のスリットにも直結するだろう。他の5艇がコンマ15で、赤いカポックだけがコンマ05全速、なんていうスリット隊形も想像しておきたい。
宮地の足は前検から「弱点のない足」として注目してきたが、やはり強い。まくり差しから力強く4本の引き波を超えるシーンは、身震いするほど迫力があった。そして、必死に追いすがる後続艇に対しても、かなり余裕の足色で突き放していた。優勝戦メンバーの中でも、おそらくトップだと思う。もちろん、6コースから自力で突き抜けるような怪物パワーではないけれど。
パワーかスピードか
11R
①西山貴浩(福岡)07
②渡邉和将(岡山)10
③丹下 将(愛知)10
④荒井翔伍(東京)11
⑤高野哲史(兵庫)10
⑥篠崎仁志(福岡)12
ほぼコンマ10横一線の美しいスリット隊形。起こしの早かったイン西山だけがかなりニギニギしている気配だったが、この外から仕掛けにくい隊形も味方して、1マークから鮮やかに抜け出した。差した渡邊にもうひとつ上のレース足があれば舳先が届いたかもしれない。西山自身も「渡邉クンに差されるかと思った」と吐露しているが、ターンスピードの差もかなり大きかった気がする。ロスの少ない旋回からヒュンッと舳先が突き出して、それで1着が決まった。さすがのイン巧者ぶり。
もつれたのは2着争いだ。バック直線では、唯一関東で生き残った荒井がかなり有利な立場にいた。勝負処の2マーク、先マイを目指す荒井の2艇身後方にいた高野が、迷うことなく突っ込んだ。地元の気合だ。一方の荒井も迷うことなく握って、高野を叩き潰そうとした。若者らしい、気風のいいターンだった。見事に高野を引き波にハメた。が、面倒を見たなりのロスは生じる。その間、冷静に最内を差した渡邉の舳先がまっすぐ前に伸びた。荒井が大きな半円を描き終えたとき、ふたりの舳先はぴったり並んでいた。こうなってしまえば、ポジションもパワーも渡邉に分がある。2周1マーク、ツケマイ勝負に出た荒井を丁寧に追っつけてから、渡邉は悠々と優勝戦への航路を突き進んだ。
1着・西山、2着・渡邉。
西山の足も悪いわけはないのだが、今日の見立ては中堅上位あたり。わずかなスタートの駄賃を生かして先マイに持ち込み、あとは突出したターンスピードで圧倒した印象が残る。レース後、「2コースでも面白い足です」と言った西山だが、その顔にはまだ半信半疑というか、正解を見出しきれていない迷いみたいなものを感じた。少なくとも、「明日もこのままいく」という楽観パワーではないと思う。2コース対応でどんな上積みができるか。明日はその部分に注目したい。仕上げきってしまえば、あとは自慢のターンスピードが火を噴くだろう。
渡邉の足は、かなり完成度が高い。今日の2マークの差しでも、引き波をシュッと飛び越えた印象がある。が、1マークでまったく西山に歯が立たなかったように、突き抜ける迫力はなかった。出足が上位レベルで伸びは水準という現状のままでは、たとえ4カドでも自力で勝ちきるのは難しいだろう。ただし! 「岡崎の外」というのはヨダレが垂れるほど美味しいポジションでもある。岡崎マークに徹するつもりなら、現状の足のままでも十分勝ち負けになるだろう。展開がハマれば、の話だが。
ハンドル一発
12R 並び順
①松田祐季(福井) 10
②篠崎元志(福岡) 17
④海野康志郎(山口)17
③松田大志郎(福岡)12
⑤平高奈菜(香川) 13
⑥本多宏和(愛知) 09
今日の準優でいちばんの乱戦だった。レースを作ったのは、F2持ちの大志郎。ピット離れで出負けした海野がソロソロとコースを取り戻しに来ると、大志郎はほぼ見向きもせずに4カドを選択した。これは推測だが、大志郎はハナから3カドを狙っていたと思う。ホーム水面に入ってからも、その舳先はずっとぶれることなくピットの方向に向いていたから。スローの3コースを目指す角度ではなかったし、「海野さんが来たからダッシュにするか」という方針変更にも見えなかった。この推測が正しいとするなら、やはりこの男は逸材だな。そして、ぜひぜひ見てみたかったぞ。F2持ちで3カドを選んだ男の、覚悟の特攻スタートを。
まあそれはそれとして、4カドからでも大志郎はグイグイ攻めた。コンマ12、おそらく全速。スリットを過ぎると、すぐに舳先を左に寄せる。内の海野を締め倒し、同県の偉大な先輩・元志まで叩き潰そうとした。なんという素敵なお馬鹿。必死に抵抗する元志を力任せに押し込んでから、大志郎はまくり差しのハンドルを入れた。が、福岡競りがあった分、そのスピードはほぼゼロに近かったな(笑)。その間に同姓の祐季がまんまと逃げきった。スロー勢で唯一無傷だったから逃げ足は速い。あっという間に他艇を置きざりにして、明日の12Rの1号艇が決まった。
そして、バック直線で2番手を獲りきったのが、あっと驚く本多宏和! さすが、この1年で何度も大穴をブチ開け、今節も6コース差しで大万シューをやらかした大穴男。1-6を持っていたファンは、快哉を叫んだだろう。
だがしかし! 我々は2マークで、見てはいけないものを目撃してしまう。本多の4艇身ほど後方、大志郎にボコられて4番手を走っていた元志がガンッとレバーを握り、バーンッとハンドルを入れた。大きな弧を描いて舳先がホーム側に返ったとき、本多を捕えていた。これが、峰との死闘の末にSGを制した男の底力か。ターン一発で4艇身差逆転……本多よ、そして1-6を持ってぬか喜びしたファンの方々よ、今日は戦った相手が悪かった。
1着・祐季、2着・元志。
祐季の足は、上位級の1機だろう。出足、レース足が自慢で引き波を力強く超える。が、行き足~伸びの部分は水準レベル。私の見立てでは渡邉和将と似たタイプの足だと思う。出足系統が強力なのでイン戦向きのパワーでもある。ただ、同じ優勝戦の1号艇でも三国オーシャンでの石野貴之、蒲郡メモリアルの峰竜太に比べるとインパクトは弱い。「西山の差しを完封できるパワー」とは断言できないし、「岡崎のスタート攻勢をブロックして勝てるパワー」とも言い切れない。スリット同体なら勝てる足、とは言えるのだが……。まあ、明日の祐季はしっかり足を仕上げてスタートを決めて先マイする、できることはそれだけしかない。昨日の大波乱→予選トップも含めて、一連の流れも祐季に向いている。あまり考えすぎず、ただただ先マイだけを目指してもらいたい。
元志の足は、かなりいいと思う。思うけれど、今日のあの悶絶一撃ターンが腕かパワーかと問われれば、まったくわからないと答えるしかない。もちろんワースト級だったらあんな凄い弧は描かないから、悪いわけはないのだが……私の見立ては前検から上位級、とりわけスリット付近の行き足はトップ級という見解で一貫している。つまり、腕&パワーを考えれば5コースから自力勝負でも勝てる、と思っている。むしろ問題は、どこまでスタートが行けるか、かもしれないな。(photos/シギー中尾、text/畠山)