BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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児島ダービーTOPICS 初日

4カド祭り

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 児島水面を赤と青のカポックが縦横無尽に走り抜けた。とりわけ活躍したのが4カドのレーサーたちだ。引き金を引いたのは3Rの④岡崎恭裕。枠なりの4カドからわずかに覗くと、スロー3艇の小競り合いを尻目に慌てず騒がず唯我独尊の最内差し。バックの出口からシャープなレース足で内3艇を抜き去り、瞬く間に先頭に躍り出た。出足・回り足を主体に、なかなかの好脚だ。

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 岡崎の号砲を合図に、4カドの快進撃がはじまった。続く4Rは④江口晃生の前付けを許容して、3号艇のロン毛レーサー松田祐季が美味しい4カドを選択。スリットを1艇身全速で突き抜け、やや凹んだカド受けの中澤和志を一気に叩き潰した勢いのままイン川北浩貴までペロリと呑み込んだ。最近の松田はまくり勝ちが激増しており、そのスタイルがまんま投影された勝利と言えるだろう。今節のパートナーは出足~行き足が評判の20号機。もちろん、明日の11R4号艇も一発を警戒しておきたい。

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 さらにスリリングな絞めまくりを敢行したのは、6Rの4カド田村隆信だ。スリット隊形はほぼ同体に見えた(実際に1・2コースの方がわずかに早かった)ものだが、田村は伸びない3コースの寺田祥を叩くやいなや、迷うことなく2コース徳増秀樹~イン魚谷智之まで強引に攻め潰してしまった。展開的にはまくり差しでも勝機十分だったが、相棒70号機の手応えがそんな生温い戦術を許さなかったのだろう。このモーター、やはりタダ者ではない。

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 前半で3発の大技を決めた4カドの勢いは、後半になっても止まらない。8Rはシガシブ最強カルテットのひとり馬場貴也が、スリットからぐんぐん伸びてスロー勢より突出。1マークの手前で満を持して舳先を左に傾け、3艇の舳先を舐めるようにして悠々と先頭に躍り出た。センター戦ではまくり差しを主武器とする馬場がこの戦法を選んだのだから、59号機の伸び足も軽視禁物だ。ちなみにインコースで犠牲になったのは、この4カドラッシュの口火を切った岡崎。4コースで1着をもぎ取り、インコースで4着に甘んじた初日は「徒労の1日」と呼ぶべきか(笑)。
 絢爛たる4カド祭りのフィナーレは、10Rの徳増秀樹。こちらは3コースから絞めまくった川北浩貴にぴったり連動しての差しハンドル一発。『ほぼダービー王』(by開会式)が絶対王者をやっつけている間に、ちゃっかりとバックで一人旅を決め込んでいた。今日は展開の利が大きい1着ではあったが、最近はいつでもどこでもレース足が上位レベルに仕上がる徳増。今節も初日から濃厚パワーに仕上がっている可能性は高い。

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 いやはや、それにしてもの4カド5勝(差し・まくり・まくり・まくり・まくり差し)。近代ボートレース、とりわけ記念戦線では4カドの利点が少ないとしたものだが、今日は華々しい空中戦が繰り広げられた20年前の“競艇時代”にタイムスリップしたような気分になったな。この原因は、わかりません。ただ、4カドから勝ちきった5人の選手は「ストレート主体に機力がしっかりしていた」という共通点があったと思う。昨日の前検診断で「今期の児島モーターはスリット一撃タイプは少ないのでは」などと記したが、初日にして訂正すべきなのかもしれない。
 さてさて、4カドの活躍ばかりを取り上げたが、今日は3コースの選手も2勝を挙げている。まずは7Rの前田将太がツケマイ気味のまくりで圧倒的人気のイン湯川浩司を粉砕。2着に超人気薄の⑥白石健を連れ込み、3連単985倍の大波乱を演出した。

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 そしてそして、大敗もありえそうな展開から美味しい10ポイントを掴み取ったのが、9Rの山口達也だ。このレースの仕掛け人もやっぱり4カドの原田幸哉。スタートでスロー勢を1艇身近く出し抜いた幸哉は、嬉々として舳先を左に傾けた。でもって、真っ先に叩ききられた選手が、カド受けの達也だった。幸哉のコンマ15に対してコンマ28だからして、自業自得の頓死と呼ぶべきか。
 まくられた達也はやむなく窮屈な態勢(ほぼ死に体)からマイシロのない最内差しを選択。到底1着には縁遠い無理差しに見えたが、まくりからまくり差しに切り替えた幸哉と内2艇がすったもんだしている間に、先頭に躍り出ていた。超ラッキーな1着。ただ、あの死に体からゾンビのように生き返った背景には、達也27号機の非凡なレース足と達也自身の非凡なターンスピードがあればこそ。前半の2Rですでにイン逃げを決めていた達也は、直後のインタビューで「残り7連勝で完全優勝します!」と宣言としたものだが、この男にしてこのパワーなら??と、ちょこっとだけ思わせるピンピン連勝発進ではあった。プロレスの覆面とともに4年ぶりのSGに舞い戻った稀代の曲者が、明日の4R4号艇でさらに連勝を伸ばすのか。大いに注目するとしよう。(photos/シギー中尾、text/畠山)