BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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THEピット――ニュージェネの風、超実績者の想い

 

 

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 かつては3カ所あった浜名湖のペラ調整室は、昨年のピット改装に伴い、1カ所に集結された。20畳から30畳ほどもあるんだろうか。なかなか広い。ペラ室の面積としては、24場のなかでも屈指だと思う。浜名湖といえば広大な水面。そして今、ペラ室も広い、のである。

 そのペラ室の人口密度はかなり高かった。スタート練習が始まる前の時間帯にもすでに選手の数は多く、前検が進むにつれてスタート練習を終えた選手の姿が増えていく。試運転やスタート練習の感触によって、またペラの形状をチェックすることによって、調整に励む姿は前検では当たり前の光景だが、なんか今日はいつもよりボリュームが多い気がするんだよなあ。

 ドリーム戦2号艇の茅原悠紀は、相当に厳しいパワーと感じたようだ。記者会見でも開口一番、「ダメっす!」。さらに「ピット離れ、スリット、全部いいところがない」と言い切っている。というわけで、その後は当然、ペラ室にこもった。今節は桐生順平が登番最若手という2、3年前のようなメンバー構成となっていて、茅原は下から2番目。新兵作業にも駆けずり回りながら、並行して懸命のペラ調整。茅原はペラ室にいる時間が長い一人ではあるが、会見でのコメントをふまえれば、それがかなり必死なものなのだと理解できる。

 

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 そんな状況をわかってか、毒島誠が茅原に語りかけている。ニュージェネの盟友とでも言うべき二人、である。茅原のスーパーターンは「毒島さんと順平の共通していいところを真似た」ところが出発点だとも言う。となれば、ペラについてもわかり合えている部分はあるだろう。そしておそらく、二人の会話は僕のような素人にはきっとちんぷんかんぷんだ。具体的なアドバイスがあったかどうかはともかく、その会話自体が茅原にとっては糧となるのだろう。

 

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 で、前検は当然9班の桐生(茅原と毒島はドリーム戦なので1班)もまた、自分のスタート練習が終わったあとに、茅原と何事か話し込んでいた。そうか、桐生も毒島もグランプリは当確。スーパーターンの3人を盟友とするなら、茅原のみがまだ、そう、前年度グランプリウイナーの茅原のみがまだ、圏内より下にいるわけである。最高の舞台で、3人があいまみえることを、真っ向からぶつかり合うことを、どこかで毒島も桐生も望んでいるのかなあ、と思った次第だ。もちろん、思い切り先入観を込めた希望的観測であります。

 

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 茅原とは対照的に、気配が良さそうなのは峰竜太だ。毒島が「班ではダッシュ分、峰くんがいい感じだった」と言い、山崎智也が「班では峰がいい感じだった」と言った。枠番は毒島=3、峰=4、山崎=5。両隣が、峰がいいのだと証言したわけである。

 ただし、峰の歯切れはあまり良くなかった。もともと、「出てます」と強気に言ってモチベーションを上げるタイプである。これまでも、前検日に峰のほうから笑顔で「いいっす」と語りかけてきたことは何度もある。そして今日は、一緒に走った選手が高く評価した。にもかかわらず、「優勝戦1号艇になれるような感じではない」と最後には言っているのだから、ちょっと不思議だった。

 実は峰が今回引いたモーターは、7月の周年で引いたモーターと同じである。そのときは優出している。ただ、当時からはギアケースとペラが換わっているとか。また、周年でも決して威張れるような足ではなかったそうだ。そのあたりの懸念というか予感めいたものがあるのだろうか。ちなみに、峰がその後行なっていた作業は、ギアケース調整。今日の作業で気配がさらに上向く可能性はあるかも。

 

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 あと、篠崎元志が良さそうです。「悪い感じはしない」「そんなに差はないかなという感じ」「良くなりそうな雰囲気はある」と、低評価ではないものの、良いと断言はしない会見コメントではあった。だが、一方でスタート練習からあがってきたあとに、永島知洋氏に親指を立ててみせたという情報もあり、感触はむしろ良い部類に入るのではないかと類推する。その後の作業も、目立ったことはしてなかったし。6号艇のドリーム戦はともかく、メモリアル級の活躍を見せてもおかしくないと見た。

 

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 そうしたニュージェネ軍団の動きを書いたところで、松井繁と今垣光太郎の動きにも触れなければならないだろう。なんと、二人はスタート練習後に本体を外していたのだ。そして、二人ともまったく同じ整備をしていた。

 いわゆる「本体を割る」ということはしていない。本体の下部から何か部品を外し、それを何か調整して、再びはめ込むという作業。えーっと、たぶんこの表現では何のことかピンと来ないと思います。ようするに、いわゆる部品交換系の整備ではなく、そして僕には何の整備なのかよくわからなかったというわけであります。

 というわけで、青山登さんに泣きついた次第なのだが、青山さん曰く「ベアリングの調整だと思うよ」とのこと。ようするに「クランクシャフトの高さの調整」であろうと。おおむね「出足に違和感があったときに調整する」とのことで、ニュージェネの風を弾き飛ばさんとする超実績者二人が、同じような感触を前検では得たということと思われる。ハッキリ言って、かなり大雑把に書かせていただきました。詳細に書くと、別のお話になりそうなので、いずれBOATBoyなどで「青山登の熱きモーター講座」とかを企画します。

 

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 結局、何が言いたかったかというと、いわゆる外回りの調整を行なっていたニュージェネに対し、スーパー実力者が本体に走ったということだ。しかも、今垣が前検から整備する姿はかつても見た記憶があるが、松井に関してはまるで記憶にない。そこに何か意味がありそうだ、と考えた次第である。

 グランプリを見据える時期にダービーは開催される。それもあわせて考えれば、前検からすでに濃密な空気が漂うピットだった、と思う。(PHOTO/中尾茂幸 黒須田 TEXT/黒須田)