BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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THEピット――ドリーム組の取捨!?

 

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 桐生順平48号機に異変!? たぶん畠山も書いているはずだが、丸亀のエース機=48号機は前検で、その面影を少しも見せなかったようだ。

「下がってました。ぜんぜんついていけていない」

 ふだんとまるで変わらぬトーンで言うものだから、一瞬スルーしそうになったが、それが48号機の話だとするなら、これはとんでもない発言である。48号機は前節に接触があり、ギアケースとプロペラが交換となっている。これで気配が確実に落ちたようなのだ。桐生にエース機といえば、鬼に金棒と同義語だが、今回はそうではない! 交換したのが本体の部品ではないため、まだ本体自体のパワーは落ちていないかも、という希望的観測もないわけではないが、とにかく明日の出走表で48号機の数字を見ても、それを鵜呑みにしてはならない。足合わせや展示で慎重に気配を探るのが得策だろう(過剰人気になるのなら消す手もある)。

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 その桐生より強めだったからなのか、それとも正味の手応えなのか、菊地孝平と井口佳典は納得の前検となったようだ。ドリームは①菊地②桐生③井口で、スタート練習では並んで走ることになっている。桐生はコメント通り下がっていたわけだから、相対的に菊地と井口は「エース機より強め」という実感を得ることになる。菊地は「珍しくもらったまま乗って、このままでも行ける感じだった。ペラは叩きますけど、ぜんぜんいいと思います」とコメント。井口は「悪くはないですね。ペラもイメージ通りで、なにもしなくても戦える感じ」だ。個人的には、これを額面通り受け取るべきかどうか悩ましいところ。桐生=エース機→それと比べて強めというのが感触に下駄を履かせているのではないかと疑っているわけだ。これもまた直前の気配などを確認したいところだが……僕自身は、その前にピットに入らねばならないので、そこまでしている余裕がない。皆さんはJLCのピット情報なども参考になさってくださいね。

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 ドリーム組といえば、やはり気になるのはW3連覇男の石野貴之。「僕はそういうのにあまり関心はないので、みなさんがそこはおおいに盛り上げてください(笑)」と、その強烈なスポットライトを苦にするふうもないし、喧騒を雑音と感じるふうもない。「いつも通りの調整をします」と口にした通り、ギアケース、キャブレターと外回りをひと通り点検、調整などして、淡々と前検を過ごした。キャブレターの調整をしている姿を見かけたのだが、これがまあ、なんとも丁寧な作業である。バラして、部品を洗浄して、エアーで水分飛ばして、気になるところは整備士と相談して、ネジか何かの一部を交換して……と、こういう細かい作業の積み重ねの上に、石野貴之の現在の強さが築かれたのだと痛感させられた。で、キャブレターを組み立て直した後は、検査員のチェックを受けなければならないのだが、前検は当然、検査員はてんてこ舞いで、石野はしばし検査員さんたちの手が空くのを待たねばならなかった。おっとりと待っている石野が、なんだかかわいらしく見えたな(笑)。天下のSG連覇男だからといってピットでは特別扱いはない。もちろん石野も偉ぶるそぶりは1ミクロンもない。こういう自然体も石野の強さを支えているのだろうと思った。

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 さてさて、前回のグラチャン前検では「ペラを叩くか、そのままか」という記事を掲載した。詳しくは、当該ページをご覧いただきたいわけだが(http://www.plus-blog.sportsnavi.com/boatrace/article/4055)、ざっくり言うと、新プロペラ制度以降、前検では引き当てたモーターを受け取ったまま試運転や前検航走をする選手と、いきなりプロペラを自分の形に叩く選手とがいる、てな話なわけだが、今日もおおよそタイプはその二手に分かれ、グラチャンでも書いた峰竜太は着水する前にペラを叩き始めている。やはりこれが峰のルーティンだ。また、茅原悠紀も同様で、早々にペラ室にこもってハンマーを振るった。この二人が「すぐに自分の形に叩き替えてしまう」のは、なんとなくわかるような気がする。二人とも、独特の旋回であり、それが他に類を見ないようなスピードターンとなる、という意味では、旋回方法は違ったとしても、同類項と言える。彼らのニュージェネ・スピードとも言うべきターンを支えるのは、彼らのプロペラ理論というものも大きな比重を占めているわけだ。

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 茅原の隣では、長田頼宗もペラ調整をしていた。長田もいきなり叩いたのかといえば、これは少し違う。今日、モーター抽選が終わり、選手各自の受領が終わり、装着作業に移って、そしてそして真っ先にボートを水面に下ろしたのが長田だったのだ。一番乗りの常連といえば、西島義則や引退した鎌田義、今節出場選手なら田中信一郎だが、今日は長田がまっさらな水面に最初に飛び出した。つまり長田は、まず誰よりも早く試運転をして、その感触をもとにペラを叩いて、タイム測定とスタート練習に臨んだというわけだ。もちろんこういうタイプも多くて、タイム測定などが始まる前にペラを叩いている選手の多くがこのタイプかもしれない。

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 そして、前検航走がすべて終了した選手は、それぞれの調整に入るわけだが、もちろんプロペラ調整を始める選手も多い。試運転、スタート練習、タイム測定で得たすべての感覚(さらに言えば、スタート練習のスリット写真や前検タイムなどと自身の得た感触との比較も含めて)をもとにして、プロペラを調整していくわけだ。で、そんな一人に服部幸男がいたわけだが、服部のペラを叩いている場所というのが!

 丸亀ピットのペラ調整所は、まずは屋内のいわばペラ小屋。そしてその外に設けられた臨時の(といっても今では日常的に使われている)屋外調整所。服部がいたのは屋外だ。今日のピットはあちこちで報道陣が暑いのアチーの汗だくだのと弱音を吐いていたわけだが(笑)、服部は暑さに目もくれることなく屋外調整所でペラに集中するのである。明日からアチーとかいうのをやめようと決心したワタクシでした。(PHOTO/中尾茂幸 TEXT/黒須田)