メモに文字が実に少ない。ペンをとる局面がほとんどない、朝のピットなのだ。今朝は10時からレディース、その後にチャレンジの優出インタビューが行なわれており、チャレンジのほうが1R発売中と重なった。それで、優出メンバー不在の時間が長かったこともある。また、優勝戦組の動きがゆったりというか余裕というか、目立ったものが見られないということも大きい。SG組は、ちょうど1Rがピットアウトする頃にピットに帰ってきている。レース後にはエンジン吊りがあるわけだが、大阪組以外はすぐに控室に戻っている。つまり、ピットにいても目の届くところにいないという時間も長いわけである。
そう、大阪組は動いた。石野貴之はペラゲージを手に整備室横にあるペラ室に入っていっている。優出メンバーではやや厳しい足色の石野だ。調整にもっとも早く取り掛かるのは納得である。太田和美は、モーターの装着を丁寧に丁寧に行なっていた。表情は淡々としつつ、目元には力強さがあった。
というのが1R終了後の様子。その後、笠原亮がペラ室に入っていく姿を発見。それが石野がペラ室に入ってってから10分ほど経った頃だろうか。その笠原、2Rのエンジン吊りに向かうときに、こちらに目配せを送ってきた。ニコニコしながら、2~3度小さくうなずいて、軽快にボートリフトへと走って行っている。優勝戦1号艇の朝でも、普段とまったく変わった様子はない。
優勝戦組ボートは1カ所に固まって置かれていて、ふと目を向けると、守田俊介のモーターにはまだプロペラがついたままだった。他の選手はペラを外しており、すなわち守田はまだモーターを乗せた以外は何もしていないということだ。ダービー優勝戦の朝は、一番でペラ調整と試運転をしていたものだが、そのとき以上に不安がないということか。
辻栄蔵と吉田拡郎については、ひとまずエンジン吊り以外では動きを見せていなかった。顔つきは対照的だったな。辻は飄々としたいつもの雰囲気、拡郎はちょっと怖いくらいの表情になっていた。優勝戦では吉田のみがグランプリ勝負駆け。気合がはちきれんばかりになるのも自然なことではある。顔つきで言えば、石野もすごかったぞ。完全に勝負師モードに入っているようだ。
SG優勝戦組については、以上。ここからジワジワと動きが始まり、ジワジワと雰囲気もヒリヒリになっていくだろう。
グランプリ勝負駆け組では、茅原悠紀と少し話した。もう腹は据わっていて「僕はできることをやって待つだけです。やるべきことはもう昨日からやって来ている」と、清々しい表情だ。この位置にいるのは自分の責任、そわそわしても仕方がないと、潔く前を向いているわけだ。一方、原田幸哉は昨日までにも増して、目つきが鋭い。おそらく自分の条件もよくわかっているだろう。6Rと7Rも絶対に見逃せないぞ。
女子のほうも同様なのだ。もっとも気合が入る宇野弥生も、インタビューから帰ってきてまずは私物整理を始めている。最終日だから、荷物をまとめているのだ。表情は、先入観込みで見れば、引き締まったもの。でも、それが昨日などと変わっているかといえば、そうではないように思える。まあ、本当にスイッチを入れるのはまだ先のことだろう。
表情で言うなら、平高奈菜は実に清々しく、逆に寺田千恵は何かを考え込んでいるかのような感じで、ちょっと対照的だった。テラッチ、緊張してる? 朝の時間帯からまさかとは思うが、そんなふうにも思える表情だった。
で、2Rのピットアウトと同時に、カポックを着た三浦永理が姿をあらわしている。3R発売中に着水ということだ。SGも含めて真っ先にボートを下したのがこの人ということになる。おそらく、これを合図に優勝戦メンバーも動きを激しくしていくだろう。(PHOTO/中尾茂幸 池上一摩 TEXT/黒須田)