BOAT RACE ビッグレース現場レポート

BOAT RACE ビッグレースの現場から、精鋭ライター達が最新のレポートをお届けします。

住之江グランプリTOPICS 2日目

**エースの転落</span**>

 

11R  

①峰 竜太(佐賀) 21

②田中信一郎(大阪)18

③太田和美(大阪) 15

④原田幸哉(愛知) 16

⑤茅原悠紀(岡山) 20

⑥坪井康晴(静岡) 22

 

 

f:id:boatrace-g-report:20171220151919j:plain

 

 峰リュー、無傷の2連勝。いやぁ、昨日も今日も「行き足が不安」と見て無印にしたのだが、そんなゲスの勘ぐりを嘲笑うような堂々とした逃げっぷり。私の目が曇っているのかもしれない。もちろん、「住之江でのイン逃げ2発」をもってして「超抜」と決め付けるのは早計にもほどがあるのだが……明日の峰は、今節初のセンター枠発進。気分を新たにして峰25号機の気配を見つめるとしよう。

 

 

f:id:boatrace-g-report:20171220151933j:plain

 

 勝負駆けが不発に終わったのは幸哉だ。「隠れエース」と評判の70号機を引っ提げてトライアルに臨んだが、そのパワーを発揮することなく4着・5着で散った。今日はバックで2番手を取りきり、そのまま着をキープすれば当確だったはずだ。が、ターンマークを旋回するたびにズルズルと後退していった。70号機が噴いていなかったようにも見えるし、幸哉自体のリズムが悪いようにも見えた。「賞金ランク18位から70号機とともに下克上の天下統一」という夢は潰えた。シリーズ戦で鬱憤を晴らしてもらいたい。

 2着の太田は、しっかりした足取りで“昇格”を手繰り寄せた。スリットから幸哉にやや煽られてはいたが、ターン回りを中心に昨日よりややアップしているように感じた。トップ6組を含めても、中堅レベルに達したかもしれない。

 3着は、道中の混戦を捌きに捌いた茅原。予選15ポイントは実に寒々しい「12Rの結果待ち」ではあったが、とりあえず連覇への可能性を残した。

 

王者、閉幕

 

12R 並び順       

①中島孝平(福井) 20

⑥松井 繁(大阪) 23

②今垣光太郎(福井)17

③笠原 亮(静岡) 22

④池田浩二(愛知) 21

⑤辻 栄蔵(広島) 26

 

 

f:id:boatrace-g-report:20171220151952j:plain

 

 行ききれなかったか、松井……王者に◎を打った私としては、その思いが強く残る。

 進入は16・2/345。例によって今垣が3カドに引きたい素振りを見せたが、笠原がガッチリ牽制して3対3の隊形に落ち着いた。ただ、中島・松井がかなり深くなったのに対し、今垣はそれなりに助走距離のある3コース。光ちゃんは攻めた。スリットから迷うことなく王者を叩いた。この瞬間、私の予想&舟券は効力を失った。

「たとえ深くなっても、松井がスタートを張り込む」

 それが、予想の生命線だった。深めのスロー起こし&強めの追い風が、王者の判断(あるいは覚悟)を鈍らせたか。コンマ23という平凡なスタートで、今年の王者V4の野望は幕を閉じた。いろんな意味で、残念だ。

 

 

f:id:boatrace-g-report:20171220152005j:plain

 

 一方、自力で攻めた光ちゃんだ。松井を一気に叩いた今垣には、ふたつの選択肢があった。中島を行かせてのまくり差しか、怒涛のひとまくりか。1マーク手前の風景としては、前者のほうが自然に見えた。インは同県の後輩だし。だがしかし、今垣の選択は後者だった。同県の後輩まで攻め潰しに行った。中島は中島で、それを予測していたかのように飛びついた。そこそこ激しい同県競り。追い風も加担して2艇は流れ、笠原と池田がズブズブと差し抜けた。

「3着条件の勝負駆け」という意味合いからすると、光ちゃんの選択はかなりリスキーだった。まくり差しを選んでいれば、十中八九当確ランプを点したはずだ。だが、それが今垣光太郎という男であり、だからこそ多くのファンから「頭で買えるレーサー」として絶大な信頼を得ているのだな。目の前にいる敵は、王者でも同県の後輩でも競り潰す。闘争心とかではなく、条件反射的に身体が勝手に動く。それが光ちゃんの“平常心”なのである。

 

 

f:id:boatrace-g-report:20171220152021j:plain

 

笠原と池田の1着争いは、熾烈を極めた。昨日も今日も、池田は汗の噴き出すような激闘を繰り広げた。昨日は1着で、今日は2着。その差は、やはりパワー差だったか。太田との一騎打ちは互角に見えたが、今日はちょっとずつちょっとずつ笠原に分があるように感じた。前検からトップ級に見えた笠原65号機は、1st組のエースと言い切っていいだろう。トップ6と合流しても、中堅上位~上位くらいはありそうだ。

 同県競りで4着に敗れた中島の足も、まったく不安を感じさせない。中島らしい堅実な回り足で松井と今垣の追撃を封じたし、今節はストレートにも力強さがある。総合評価としては笠原と同格か、その次か。前検でも書いたが、十分に2度目の賞金王Vが狙える足だと確信している。

 

 

f:id:boatrace-g-report:20171220152036j:plain

 

 松井や今垣らが脱落した中、最後に生き残ったのが茅原だった。11Rが終わった段階で、“昇格”の可能性は30%程度だったと思う。が、持って生まれた勝負強さか、最後のチケットが転がり込んだ。グランプリ連覇への道が拓けた。パワー的には、12人の中ではやや分が悪いと見ている。6号艇からのスタートも明るい材料ではない。よほどの運がなければ連覇は難しいと思っているのだが、この若者だけは……ねえ。

「2年連続6号艇でグランプリ連覇」

 なんてことになったら、28歳にして生きるレジェンドだな。ポテンシャルだけなら、そんなミラクルがあって不思議じゃないのだが。

 

スランプ脱却!?×2

 

 

f:id:boatrace-g-report:20171220152059j:plain

 

 一方のシリーズでは、正真正銘のレジェンド今村豊が観衆の度肝を抜いた。6コース絞りまくりから、機転を利かせたまくり差し。3コースの井口佳典にブロックされそうになったところ、コツンと艇を当てて「ほんならどうぞ、先に攻めなさい」と催促し、井口に仕事をさせながら悠々と差しハンドルを突き刺した。3連単は363倍。

 やっぱ、この人を見くびっちゃいかんなぁ。

 痛感した。ここ4カ月ほどのミスターはどうにも元気が感じられず、勝率は6点ちょいまでダダ下がり、インコースでは10戦1勝と信じられないほど低迷している。

 どこか身体が痛いのか、それともまさか衰えが……??

 正直、そんなことを思ってしまった同い年。心配しつつも「現状、舟券は買いにくいなぁ」とちょいと敬遠していたのだが、そんな風潮が漂ったときにこの人はやるんですよ。6コースからドカーン、300倍。メットの奥の、してやったりの顔が目に浮かぶ。常人が同じようなことを考えたとき、必ずと言っていいほど異なる発想を思い描く男。生粋の天邪鬼なのか負けず嫌いなのかはとにかく、今日のアウトまくり差しは実にミスターらしい一撃だった。うん、なんとなく、ひと安心。

 

 

f:id:boatrace-g-report:20171220152125j:plain

 

 さてさて、予選2日を終えてシリーズの暫定トップに立ったのが平本真之だ。現状、パワー面では中堅~中の上(あくまでシリーズの)程度の見立てだが、実戦を見ていて「今節は乗れてるなぁ」と感心することが多い。差したり握ったり、状況に応じた判断と行動が早くて的確だ、と何度も思った。ミスター同様、ここ4カ月は勝率6点ちょいと苦戦してきた平本だが、そのスランプ?(ダービーでの怪我の後遺症もあったかもしれない)から完全に抜け出したと見ていいだろう。となれば、去年あたりから大ブレークした彼の強さは百も承知。トライアルの茅原同様、こちらも“連覇”があって不思議じゃないぞ。いや、体感的な連覇の可能性としては、茅原よりもかなり高いのではないか、とお伝えしておこう。(photos/シギー中尾、text/畠山)