BOAT RACE ビッグレース現場レポート

BOAT RACE ビッグレースの現場から、精鋭ライター達が最新のレポートをお届けします。

THEピット@グランプリ――穏やかに、気合高まる

 

 

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 1R展示後にピットに入って、まず目に入ったのは水面にいる太田和美だった。これは早い! すかさず装着場を見渡すと、グランプリ組のボートは軒並み揃っている(守田俊介のモーターには相変わらずペラがついたまま)。そんななか、太田は早くも試運転を走っていた。グランプリボートはカウリングがきらびやかだから、シリーズ組に混じっての試運転ではひときわ目立っている。太田は5着2本で、ボーダー21点とするなら勝っても相手待ちである。この状況に置かれているのは太田のみだ。しかし、その太田が誰よりも早く水面を走り、パワーアップをはかっている。太田といえば、時にノーハンマーで一節を通し、ゆったりと過ごす姿も印象的である。だが、やるべきときには徹底してやる! このメリハリが、太田の強さの要因のひとつなのであろうと推測する次第だ。

 

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 太田の次に水面に出たのは、石野貴之である。装着場の真ん中あたりには2階建ての小ぶりな建物があり、この1階が選手用の喫煙所になっている。石野の姿をよく見かける場所でもある。今朝も石野はここで、静かに座っていた。僕が見たときはタバコを吸ってはおらず、一人で精神を高めている姿にも見えていた。ここを出た石野は、そのまま水面に向かっている。というより、よく見ればすでに石野のボートが係留所にあったから、もしかしたら太田と同じようなタイミングで試運転などを始めていたかもしれない。大阪2騎が他より早く動き出す。それ自体が、地元の気合だと受け止めざるをえない。

 

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 トライアル第3戦ということで、今日はいよいよ運命が決まる。優出当確は山崎智也のみという状況で、ほとんどが勝負駆けを戦うわけだが、ピットの空気は意外と穏やかである。篠崎元志はわりと余裕がある表情に見えていて、現在2位につけている分だけリラックス度も高いのかと思いきや、崖っぷちに近い桐生順平も爽やかな笑顔を見せていて、切羽詰まったメンタルとは思えない。そうそう、元志はゲージ擦りをしていたな。足には不安はない? ちなみに、元志のほかに、松井繁、吉川元浩がゲージ擦りをしていた。なかなか豪華な顔ぶれが、テーブルを囲んでいたわけである。

 

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 ペラ室を覗きこむと、中島孝平が昨日までと同じ場所でペラを叩いている姿があった。かなり神妙な表情ではあるが、これは中島にとって特別なことではない。ペラ室で見る中島は常にこのような顔つきだ。ペラ室で見たのはほかに、峰竜太、笠原亮。もちろん他にも山ほど出入りはあるはずなので、あくまで僕が見たタイミングでは彼らがいたということにすぎない。ベッタリと張り込んでいれば、グランプリ組すべてを見ることになるだろう。ちなみに、モーターの整備をしているグランプリ組は見られなかった。

 

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 そうしたなかで、気迫ある表情に見えたのは、毒島誠と池田浩二である。毒島はトライアル最終戦を1号艇で戦う。これは負けられない。ボーダー21点なら1着勝負。ある意味、優勝戦1号艇に匹敵するほどの重さがある。それこそプレッシャーだって感じているだろう。その素顔は穏やかな好青年である毒島だが、こうした局面での毒島というのは、なまなかでは踏み込めない結界のようなものを作り出す。表情には迫力がある。

 

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 池田については、選手仲間とは笑い合ったりしているものの、周りに誰もいないときの顔は毒島同様の迫力を感じさせる。何より、歩様が速いし、足の踏み込みも力強い。心身ともに充実しているのは明らかである。今日の池田は3号艇。そういえば、トライアル1st初戦も3号艇。池田の様子を眺めるうちに、そのシーンが鮮明に頭に思い浮かんでしまったのだが……。(PHOTO/中尾茂幸 池上一摩 TEXT/黒須田)