BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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びわこマスターズ優勝戦 極私的回顧

スタートの功罪

 

12R優勝戦

①西島義則(広島)29

②田頭 実(福岡)25

③三角哲男(東京)26

④今村 豊(山口)32

⑤平石和男(埼玉)30

⑥小畑実成(岡山)29

 

 

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 火の玉ファイター田頭実が、強烈なジカまくりで第17代の名人に就任した。実にらしいポジティヴな勝ちっぷりで、九州の被災地の方々(ボートレースファン)にも元気と勇気をプレゼントしたことだろう。さすが、F3で記念を制した男。この自力決着の勝利を心から称賛したい。

 このレースの明暗を分けたのは、ほぼ90%がたスタートだといっていい。田頭自身も「スタートが行けてませんから」と照れ笑いを浮かべたが、確かに記念の優勝戦としては格別にスタートの遅いレースではあった。誰かひとりがゼロ台まで全速で踏み込めば、その選手が圧勝したはずだ。そういう意味では、田頭以外の5人に対して「自力で確実に優勝できるチャンスを自ら逃した」と指摘することができる。

 

 

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 ただし、6人揃って遅れたのには、それなりの理由があるだろう。

①今節はほぼ毎日のように強めの追い風水面で、今日だけがとびっきりの向かい風水面だった。しかも、びわこのスタート特訓は早朝のみ(←風がほとんどなかった)。一走勝負の優勝戦で、昨日までの追い風スタート勘→向かい風の補正が難しかった。

②スタート展示の風がやや弱めで、レース本番にちょうど強い向かい風が吹いた。スタ展と同じ感覚で行ったら、風に戻されて届かなかった。

③シリーズの売上がかなり厳しいので「Fを切ったら施行者に多大な迷惑をかける」という意識が強く働いた(笑)

 私の見解としては①②の2点、つまり風の影響が大きかったと思う。で、結局はほぼ横一線に近かったのだから、この全体の遅れそのものはほとんど気にする必要はないだろう。ただ、ひとり、インの西島を除いて。西島のコンマ29はただの29ではない。やや早起こしからスリットの手前で上体を上げ、かなりアジャストしての29だった。これが05あたりだったら「放って正解」だが、コンマ29は「不正解」だ。今日の西島は完全にスタート勘が狂っていた。これが西島のほぼ唯一にして最大の敗因であり、田頭にとってかなり大きな勝因だったと思う。

 

 

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 アジャストした西島と全速の田頭。スリットを通過してからの西島と田頭の勢いは、亀と兎ほども違った。1マークのはるか手前で、田頭がまくると確信した。まくると決めたら躊躇なく全力でまくる男。同期の平石和男の差しハンドルも早かったが、強い向かい風で舟がしっかり返った田頭に軍配が上がった。

 なぜ西島があれだけスタート(=単なるタイミングではなくチグハグすぎた行動)でミスったか。それは本人がいちばん良くわかっているだろう。今もそんな自分が悔しくてたまらないだろう。私には、その真相はわからない。わからないが、同い年のヒーローにあえてムチ打つ言葉を書かせてもらう。

 今日の西島は己との闘いに負けた。だから敵との闘いにも負けた。スタートはテクではなく気持ち。その気持ちの部分で負けてほしくなかった。「気合が入り過ぎた」とか「思い入れが強すぎた」とかであっても、それ自体が気持ちの負けだと思う。過去にSGを7つも制し、今後もさらに上の舞台で勝つべき男なのだから、今日の自分を厳しく戒めてもらいたい。(photos/シギー中尾、text/畠山)

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