ピットに入った瞬間、赤岩善生がモーターを装着している姿があった。挨拶をして通り過ぎると、赤岩が「また整備しましたよ」と声をかけてきた。えっ、ここまで順調なのに、本体整備?
「いいモーターだから、整備したらもっと出せる自信があるから。たしかに悪くないけど、バランス型。周りも出してくるから、並になっちゃうでしょ。並じゃつまらんですからね。この整備でたぶんさらに良くなると思う」
これも赤岩スタイルである。整備巧者として名高い赤岩らしいスタイルとも言える。赤岩は事もなげに言ってのけるが、なかなかできることではあるまい。足が良ければペラでさらに引き出そうというのが主流のご時世。赤岩ももちろんペラ調整をやりつつ、己の信念を貫くわけである。
昨日、岡崎恭裕がここを優勝してメモリアルに出たいと強く意識している旨を書いた。赤岩も同様だ。赤岩もまさかの推薦漏れ。岡崎と同じようにメモリアル勝負駆けだ。自分を選ばなかったことを後悔させてやる。そんな反骨心で赤岩は戦う。武器がひとつ加わったようなものだろう。
本体整備は、毒島誠、辻栄蔵も行なっていた。毒島の整備といえばグラチャンを思い出す。あのときも当初の気配は最悪で、それを本体整備で一変させて優出までこぎつけている。グラチャンの整備は2日目だった。今回は、2日目の好枠を1、2着としておいての3日目整備。グラチャンのことを思い出せば、どんな気配で6Rに登場するかがおおいに楽しみだ。
1R、勝ったのは重成一人。昨日の大敗を巻き返す勝利だった。ところが、雰囲気自体は昨日のレース後とほとんど変わらないのであった。淡々とピットに戻り、粛々とエンジン吊りをし、訥々と次の準備に向かう。まるで修行僧のようなたたずまいで、これが最近の重成スタイルということになろうか。SG2節連続優出の原動力は、その精神性にあると見るのだが、どうか。
2R、太田和美が2着。6着街道を脱した。レース後の表情は、もちろん昨日とは一変。おどけた様子で松井繁にガッツポーズをしてみせて、二人で大笑いしているのだった。6号艇6コースから2着なら上々。やはり足は悪くないですよね。道中、山口剛を逆転しての2着だったわけだが、その山口とも朗らかにレースを振り返り合っている。山口として悔しいレースだっただろうが、その逆転シーンについても快活に話していた。
同じ2R後、平本真之の悔しがり方が強烈だった。1マークで大きく流れての6着。納得できるところがひとつもないレースだった。同期の新田雄史は、平本の目を見ながら、無言で2度3度、首を小さく横に振った。ひとつうなずいた平本は、しばしその場から動けない。そして、大声ではないけれども、数m離れたところならはっきりと聞こえる声で、「くっっそっ!」とつぶやいた。童顔ながら端正な平本の顔は、ぐしゃぐしゃに歪んでいた。これで準優進出はかなり厳しい状況となってしまった。しかし、戦いは終わらない。そのもやついた心は今節中に必ず晴らせ!(PHOTO/中尾茂幸 池上一摩 TEXT/黒須田)
松田祐季はレース前の表情がナイスでした。気合パンパン! そして見事1着!