BOAT RACE ビッグレース現場レポート

BOAT RACE ビッグレースの現場から、精鋭ライター達が最新のレポートをお届けします。

THEピット――勝負駆けデーの奮闘

 

f:id:boatrace-g-report:20171227154648j:plain

 終盤10Rを迎えた時点で、勝負駆けのゆくえは相当ハッキリしていた。

 10Rの中島孝平が1着勝負。2着なら相手待ち。

 12Rの篠崎仁志が4着勝負。

 それ以外の10R、12R出走選手は全員無事故完走で当確。

 10R、まず森高一真が差して、吉川元浩が残した時点で、中島の目は消えた。どんなときでも淡々粛々の中島だから、一見して普段のレース後と変わらないようにも見えたが、さすがに落胆していたことだろう。この予選落ちは、グランプリ行きを断たれる通告のようなものでもあるから。

f:id:boatrace-g-report:20171227154704j:plain

 残る勝負駆けは12Rの篠崎仁志。4着条件はそれほど厳しくないようにも思えるが、なにしろ6号艇である。そして、いったんは5番手を走った仁志である。4番手の井口佳典を懸命に追い上げ、競り合い、判断を間違えられない局面を連発で乗り切りながら、最後は4着。辛うじて、ノルマの着をもぎ取っている。

 ピットに戻った仁志は、遠目でもわかるくらいに疲れた表情をしていた。安堵よりもまず、身も心も疲れ切るレースだっただろう。これが勝負駆け失敗だったら、悔しさが先に顔を出したかもしれないが、ギリギリで最低条件着を獲れたことで、疲労感があふれたのだろう。

 それを見た菊地孝平が、歩み寄って仁志を祝福。ペコリと頭を下げてもなお、仁志の疲れた表情は消えなかった。仁志、お疲れ様! 精根尽くした戦いでつかんだ準優の椅子は重い。明日はスッキリと優出の権利を奪い取りたいところだ。

f:id:boatrace-g-report:20171227154720j:plain

 予選トップ通過は辻栄蔵だ。1マークでは重成一人のまくり差しをふところに突き刺されたが、2マークで逆転。もし重成が押し切っていたら、重成が予選トップ。重成が手にしかけていたVへのアドバンテージを奪い取る、逆転劇であった。

 辻といえば“ギリペラ”。展示ピットにボートをつけなければならない時間のギリギリまで、プロペラを調整する姿だ。今日ももちろん、ギリギリまで調整。しかも、いったん係留所に向かって歩き出しながら、途中で立ち止まってペラを見つめ、またペラ室に戻るという場面まであった。開会式でも言っていたとおり、本当に忙しく働くのである。パワーは節イチクラスだと思うが、それでもやることは変わらない。

 レース後は、特に笑顔もなく、淡々としたものだった。予選トップと把握していなかったか、と感じられるほど、特別な高揚感は見えなかった。もっとも、辻は山崎智也系で、敗れたときほど笑顔で悔しさを紛らすタイプと見えるのではあるが。11年ぶりSG制覇がこれでグッと近づいた! 明日はもちろん12R1号艇。いちばん最後まで仕事をするのは、この男で間違いない。

f:id:boatrace-g-report:20171227154756j:plain

 18位は平本真之。賞金ランク7位の平本が、ベスト6入りの可能性を残した。仮に逆転がかなわないとしても、トライアル1st1号艇の座を自力で死守できるのは大きいだろう。明日明後日をただ指をくわえて待つのはつらい。

 準優進出者は、JLCの展望番組のインタビューを受ける。もちろん平本も声をかけられ、マイクを握ってカメラの前に立った。そこにやはり準優進出の桐生順平が通勤服でやってきた。時は10R終了後。桐生は1便で宿舎に戻ることになっていたのだ。それを察した平本は、「先にいいよ」と桐生にマイクを渡した。桐生は恐縮しながらもマイクを受け取り、先にインタビューを済ませている。平本、本当にいいヤツや! その優しさの分、いいことがあるといいっすね。あと、明日のレースではお先にどうぞはダメっす。

f:id:boatrace-g-report:20171227154811j:plain

 そうそう、平本と同期の新田雄史。初戦Fで、今節は早々に戦線離脱。準優はもちろん乗れないわけだが、遅くまで本体整備に奮闘していた。ハナから勝ち上がりの権利はないし、明日からはいわゆる敗者戦だというのに、新田は整備を続けるのである。明日も明後日も結果を出せるように、パワーの足りないモーターに力を吹き込もうとするのである。実に頭が下がる。勝ち上がりに関係なく、全力で戦いに臨む新田に、ぜひご声援を!

f:id:boatrace-g-report:20171227154828j:plain

 新田の隣で整備をしていたのは日高逸子。明日はクイーンズクライマックス逆転出場へ第一関門の勝負駆けである。今日は1R1回乗りだったが、その後もびっちり調整に時間を費やしたわけだ。何としてもクイクラへ、の思いも伝わるし、そうでなくとも新田同様に全力の戦いを心がけているのは間違いない。やはり1R1回乗りだった山川美由紀も、最後の最後まで整備室やペラ調整所に姿があった。ベテランのこういう姿は、後輩たちの偉大なるお手本となっているだろう。

f:id:boatrace-g-report:20171227154847j:plain

 ここまでの4日間、1便で帰った女子選手はほとんどいないのではないか? ちゃんと確認はしていないが、終盤の時間帯は明らかに女子の比率が高くなっているのだ。装着場に突っ立っていると、女子選手の姿ばかりが視界に入ってくるという瞬間だってある。ただ居残りをしているわけではなくて、皆が皆、粘り強く調整を続けている。遅くまでやればいいってもんじゃないけど、その姿勢は評価されていいだろう。

 転覆やら待機行動違反やらがあって、4日目終了時点での得点率0・00の平田さやか。しかしそこで投げ出したりは決してしないのである。今日はいちばん最後まで試運転。終えたあとも、藤崎小百合にペラのアドバイスを求めるなど、調整作業に奔走していた。そんな様子を見ると、やっぱり応援したくなるというもの。残り2日でなんとか一矢報いてほしいぞ。(PHOTO/中尾茂幸 TEXT/黒須田)