BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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津レディチャン 準優ダイジェスト

当たり、キター–ッ!!

 

10R

①田口節子(岡山)12

②平高奈菜(香川)11

③森岡真希(岡山)11

④岩崎芳美(徳島)19

⑤中谷朋子(兵庫)21

⑥原田佑実(大阪)13

 

 

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 ギャラクシークイーンが5年ぶり3度目の女王戴冠にまた一歩近づいた。すべてが申し分のないインモンキーだったし、今日の仕上がりがいちばん良かったと思う。パワー上位と見ていた平高の差しは届かず、ターンの出口で一気に突き放された。しかも、後続艇にもボコボコに叩かれ5着惨敗。そんな足ではないはずなのだが……今日の平高はまったく踏ん張りが利かなかった。残念。

 逆に、凄まじい追い上げを見せたのが中谷と原田だ。ともに1マークでは展開がなく、かなり離された5、6番手。ほぼ絶望的なポジションに思えたものだが、まずは中谷がまっすぐ2マークに向かって渾身の切り返し。この奇襲がものの見事にハマり、一躍2番手に浮上する。さらに、エース22号機を駆る原田もすべての引き波を軽々と超えて2着争いに持ち込んだ。1-234の隊形がワンターンで1-56へ。道中の追い上げは原田に分があるようにも見えたが、格上の中谷が激辛のターンでことごとくその追撃を交わした。経験がパワーを凌駕した。

 1着・田口、2着・中谷。

 先にも書いたが、田口63号機は今日が最良最善の仕上がりだったと思う。昨日まで「神様頼み」など迷いがあった本人も、今日はレースっぷりも含めて「100点満点♪」とご満悦だった。さほど底力のあるエンジンではないから、まずは今日のパワーをしっかり維持することが田口の“宿題”になるだろう。そして、それができれば、伝家の宝刀・3コースまくり差しが十分に可能なパワーだとも思う。

 

 

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 中谷の足は前検から注目してきたが、ファミリーなのに鬼っ子というかなんというか。一言でいうと「日替わり弁当」のようなパワーなのだ。特に回り足に少なからぬムラがあり、良かれと思って買ったらサッパリ、見限って蹴飛ばしたらスパーン、みたいな厄介な存在。今日の私もA→B+に下げたところ、凄まじい切り返しをやらかした。今日は「当たり=極上の幕の内」だったのだな。相応の回り足がなければ、あんな捨て身の奇襲はなかなかハマらない。ではでは、明日はどんな弁当か……中谷本人も「ゾーンが狭い」とボヤいているように、明日もまた試行錯誤の整備が続きそうな気がするな。当たればV争い、ハズせば惨敗という諸刃の剣のようなパワーでもあり、その見極めは実はかなり重要だと思う。日々見込みがハズれ続けて、あまり自信はないのだけれど(苦笑)。

 

凄絶な同県競り

 

11R

①今井美亜(福井)12

②細川裕子(愛知)15

③香川素子(滋賀)20

④西村 歩(大阪)11

⑤平山智加(香川)13

⑥遠藤エミ(滋賀)16

 

 

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 スリットからゴールまでさまざまな局地で艇が衝突、火花が散るような激闘だった。最初に引き鉄を引いたのは、4カドの伏兵・西村だ。コンマ11のトップSから迷うことなく絞めまくり。西村にあと半分の伸び足があれば突き抜けたかもしれない。が、哀しいかな、今節の西村33号機にはそれがない。伸び返した2コース細川の艇の側面にぶち当たり、それでも力まかせに握ったが、イン今井に辿り着いたときにはまくるべきスピードを失っていた。西村が22号機だったら……そんなことを思わせる、ちょっと哀しい光景だった。とりあえず、この捨て身の強襲でスロー水域は大混乱。玉突き状態で細川がイン今井に寄り掛かり、マイシロのない状態で今井が回る。

 

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 絶好の差し場ができたのは5コースの平山だ。西村に連動してのマーク差し。それは実に平山らしい的確なスピードターンに見えたのだが、4本のぶっとい引き波に捕まった。今節の平山68号機は、最後までこの部分のパワーを取り入れることができなかった。引き波でガクンッ減速したとき、さぞや平山は歯がゆかったことだろう。

 ライバル艇が失速する中、態勢を立て直した今井だけが力強く前進していった。F2のハンデをモノともせず、3日目から3戦連続のイン逃げ。拍手、拍手。あの2年前の“三国の悲劇”(予選トップで準優F)も、この勝利で完全に克服できるだろう。冬の平和島バトルトーナメントもそうだったが、走るたびに強くなってゆく。そう実感させるイン3連勝でもあった。

 

 

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 今井が力強く抜け出しての2着争い。これが、凄絶だった。片や香川素子、片や遠藤エミ。滋賀支部ふたりの同県競り。まずは遠藤が2艇身ほど抜け出すと、香川が絶妙かつ渾身の切り返しで体を入れ替える。内から舳先半分だけ突っ込んだ遠藤が粘る粘る、香川も引かずに絞める絞める! 何度か艇をぶつけ合いながら、2艇のデッドヒートは最終ターンマークまで続いた。今節、同県ラインについて何度か記してきたが、優出の椅子がひとつしかない状況ではラインも同県も同支部も先輩後輩も関係ない。レーサーvsレーサーの仁義なき椅子取り合戦。この死闘で生き残ったのは、先輩に絞めつけられながらもターンマークを舐めるような小回りで急旋回した遠藤だった。あの鋭角ターンができる女子選手は、この遠藤と橋谷田香織くらいだろうか(笑)。

 1着・今井、2着・遠藤。

 今井53号機のパワーは回り足を中心に粘り強く、ターンの出口でシュッと出て行く俊敏さもある。引き波を超える力も、6コースからぐんぐん追い上げて3着(あわや2着)を獲りきった初日に証明済みだ。行き足~伸びは平凡だが、とにかく混戦に強そうな足だと思う。選手そのものの意外性も含めて、明日は誰よりも不気味な存在ではあるな。

 遠藤16号機は大雑把に言って中堅上位。本人は伸びを付けたがっていたようだが、今日もストレートでは香川より常に劣勢だった。その分、小回りからスッと前に進んでいたので出足系統は上位のひとつか。伸びC、回り足Aでトータルの底力はB+あたりが妥当だろう。おそらく、本人は明日も伸びを求めて調整すると思う。今日の回り足を落とすことなく伸びがもうひとつ付くようなら、アウトからでも勝ち負けできる可能性はある。

 

逃げきるパワー、まくりきるパワー

 

12R

①海野ゆかり(広島)05

②山川美由紀(香川)06

③小野生奈(福岡) 03

④寺田千恵(岡山) 05

⑤垣内清美(三重) 10

⑥長嶋万記(静岡) 16

 

 

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 昨日がコンマ08で、今日がコンマ05。海野がVモードへ集中度を高めている。そして、今日のメンバーでの05は、優勝戦1号艇への必須条件だったかも知れない。山川も小野もテラッチも、他者に関係なくキワまで踏み込んだはずだから。中でも、コンマ03からの生奈の握りマイは迫力満点だった。12秒針が回る頃、津水面には5、6mほどの強い風が吹いていた。握れば流れる、としたものだが、ギリギリまで海野を追い詰めていた。逆に同じ程度の向かい風だったら、生奈が突き抜けていたかもしれない。

 

 

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 その生奈の猛攻を受け止めきった瞬間、優勝戦の1号艇はほぼ不動のものとなった。2着争いも、テラッチや山川が必死にアヤを付けようとしたが、2マーク全速マイで生奈が一気に突き放した。海野の気迫と生奈のスピードが際立った最終レースだった。

 1着・海野、2着・小野。

 海野27号機の足は……やはり今日のイン逃げを見ても、まだAランクは付けられない。スタート勝ちの印象が強いし、1マークまでの行き足もゴキゲンと呼ぶほどではなかった。ストレート系より、ターン回りとその出口の足が強め。つまりスリット同体ならその部分を生かして逃げ切れるが、スリット隊形が壊れたときにどうか、という疑問は残る。明日は2号艇の今井がF2持ちで、3号艇の田口もF持ち。スリット横一線になる可能性は、五分五分より低いかもしれない。凹凸から一気に誰かが攻めてきたときに、完璧にブロックして逃げきれるか……その判断が難しいパワーだと思っている。

 

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 生奈13号機の素性は中堅ど真ん中で、ほとんどノーマークだった。前検でもさほど目立った印象はなかったのだが、まさに日々成長するエンジンもあるのだな。回り足が良くなったり伸びが付いたり、雪だるまのようにちょっとずつ膨らんで今日はオラフ級の出来栄えになっていた(笑)。もちろん、勝手に成長するわけがないから、生奈流の調整がバチバチ当たっているのだろう。伸び~る原田22号機や平高57号機がV戦線から消えた今、ストレート系ではそこそこ怖い存在でもある。明日は4カドになりそうな生奈が、どの部分の足を強化するか。それでレースそのものが大きく変わる可能性は高い。おそらく、誰よりも先にイン海野を攻めるような気がするから……その攻めが届くかどうかは、海野の仕上がり、スリット隊形、風、そして生奈13号機の伸び足、これらの兼ね合いで決まる、と思う。

 嗚呼、それにしても……『準優はインコース全敗っすか???』なんてヘタレ予想したらば、怒涛のイン3連勝。お恥ずかしい限り。でもって、昨日の準優進出戦も含めるとイン逃げ7連発っすか。かつて進出戦~優勝戦での「イン8勝=グランドスラム」があったかどうかは忘れたが、それって絶対にありえないんじゃないか、と思えて仕方がないのだが……どうだろうか。うむ、自信はないっす。(photos/シギー中尾、text/畠山)