壮絶な“リハーサル”
11R
①松本晶恵(群馬) 19
②竹井奈美(福岡) 15
③樋口由加里(岡山)13
④中谷朋子(兵庫) 22
⑤遠藤エミ(滋賀) 27
⑥山川美由紀(香川)17
逃げる松本と差した竹井と、丸々2周に及ぶ抜きつ抜かれつのデッドヒート。シリーズ戦では拝めないようなド迫力のボートチェイスだった。「女子戦の主力が若手に移り変わったか」という印象さえ感じたな。最後は松本が関東の意地で?竹井の猛追を振り切ったが、パワー評価では少しだけ竹井11号機のほうが強めだったかもしれない。ほんのわずかだが。
そのはるか後方では、中谷70号機と遠藤49号機がこれまたバチバチやり合っていた。私が期待した2基の接戦は、一撃のツケマイで遠藤に軍配が上がった。エミは女子選手でもっとも「スピードかパワーかがわかりにくい選手」なのたが、とにかく中谷70号機は今日も競り負けた。その走りに、絶対エースの輝きはもはやなかった。
1着・松本、2着・竹井、3着・遠藤が順当にファイナル当確、4着以下の3艇が事実上の落選。昨日までの明暗が、そのまま水面に投影された。そして、勝って29点を稼いだ松本は、12Rの結果を待つことなくファイナル1号艇が確定! 昨日も書いたが、ここまで来たらばパワー云々(私の見立てはA=上位のど真ん中)よりメンタルの持ちようが明暗を分けるだろう。その意味では、今日のデッドヒートで競り勝ったことが大きなプラス材料になったかも??
2着の竹井は、パワーを含めて明日も不気味な存在だ。12人中ただひとりのA2だが、今日の道中でそんな格落ち感は微塵もなかった。若手選手は強くなる時にまとめて強くなる。今の竹井がまさに“旬”の只中にいる。ファイナリストの中で、もっとも失うものがないチャレンジャーという気もする。無欲の攻めに期待したい。
遠藤エミは2度の5号艇でポイントを伸ばしきれなかったが、もちろんV候補であることに変わりはない。ファイナルも5号艇に甘んじたものの、逆に「3連続の黄色カポック」は不気味の一語。この天才レーサーが3度目の正直でバック突き抜けても不思議はないだろう。70号機が地に堕ちたいま、49号機を推したいという“下心”も捨てきれないな(笑)。
※ちりくんさん、いつもコメントありがとうございます! まさかあの70号機が連日ここまでボコられるとは……「モーターは生き物」といつも肝に銘じているのですが、今回はさすがに凹みました、ですっ!!
ファイナルの境界
12R
①長嶋万記(静岡) 11
②海野ゆかり(広島)13
③日高逸子(福岡) 19
④寺田千恵(岡山) 15
⑤小野生奈(福岡) 19
⑥平山智加(香川) 21
長嶋が見事なスタートからキッチリ逃げきった。1マークを回った瞬間、11Rの3人+当確・寺田に続く5つ目のファイナル指定席をもぎ取った。今日は完勝すぎてパワー云々は測りにくいが、特訓の気配を見る限り「上々」という言葉が似あう。明日も十二分に勝機のあるパワーだとお伝えしておこう。
万記の圧勝とは裏腹に、人気どころの寺田、小野は1マークで後手を踏んだ。“誤算”と呼ぶべきか。4カドからスッと覗いた寺田が握った瞬間、半艇身遅れの日高がさらに激しく握った。1着なら微かな望みを残す日高の、捨て身の勝負手だったか。艇を合わされた寺田はやや立ち往生する形で日高に弾かれた。
惜しかったのは小野だ。この3・4コースの競りは、5コースの小野にとって絶好の展開だった。差しハンドルを入れさえすれば……が、小野はその混戦を確認する前に握っていた。気持ちはわかる。5コースでは展開を待つより、自力で攻めておいてのまくり差し。今の強い若手の常套戦法だし、そのほうが悔いのないレースになりやすい。今日の小野もハナから「握る!」と決めていたと思うのだが、日高に弾かれた寺田と完全に航跡が重なった。慌てて差しに構えたときには、前を追い上げるべきスピードはなかった。
3~5コースが握ってもつれ合っている間に、2コース海野が差して抜け出した。さらに6コースからスタートで後手を踏んだ平山も、ぽっかり空いた内水域をスーーーッと通り抜けた。小野が冷静にマーク差しを選んでいれば、これほど恵まれた“ファイナルへの花道”は拓かなかっただろう。実質、この段階で最後の1議席が決まったと言っていい。小野の1マークをミスターンとは呼びたくないが、「決め打ちしすぎた」という思いはある。強い若手の男子レーサーの多くは「見る前に飛ぶ全速ターン」を武器にしている。ただ、同時に臨機応変のしたたかさも持ち合わせている。生奈には、来年への宿題として明日から取り組んでもらいたい。
さてさて、上位着ならファイナル2号艇がありえた寺田は、よもやの6着で4号艇が与えられた。しっかりと展開を掴んだ平山は6号艇。つまり明日のファイナリストは、長嶋(今日1号艇→明日3号艇)以外の5人がすべて今日と同じ枠番で最終決戦を迎えることになった。今日はスタート勘を掴んだり自信を深めたり反省したり、それぞれの選手がそれぞれの枠で何事かを思い、それを明日の本番に注ぎ込むことになるだろう。誰が何を掴んだか、誰が有利で誰が不利なのか……ここは平和島、艇番の有利不利は二の次だ。パワー的にも飛びぬけた存在は見当たらない。Vの雌雄を決するもっとも大きなファクターは「心」だという気がしてならない。(TEXT/畠山、PHOTOS/シギー中尾)