BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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蒲郡レディチャン 準優ダイジェスト

機力に勝る武器

9R 並び順
①今井美亜(福井) 16
②大瀧明日香(愛知)25
③原田佑実(大阪)   27
④津田裕絵(山口)   28
⑥中谷朋子(兵庫)   24
⑤落合直子(大阪)   21

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 中谷の前付けアタックもなんのその、大本命の今井がぴったり100mの起こしから他艇を寄せ付けずに逃げきった。スタートタイミングは断然トップのコンマ16。今節の今井はこのスタートがキレッキレで、緒戦から11・11・10・05・05・11、そしてビッグ準優の重みを配慮しての16。BOATBoyのインタビューでも「レディチャンのために早いスタートを自重してきた。本番では封印を解く」的な言葉を発していたが、その気持ちがまんま今節のスリットに反映されている。

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 今井の機力評価は「上位級のど真ん中」という感じ。どの足も強めのバランス型で、展開次第で突き抜けるレベルではある。が、蒲郡が誇るメーカー機が居並ぶファイナルにあっては、スリット同体から何かしら大きなコトを起こすのは難しいとも思う。その不足部分を、封印を解いたスタート力でどこまで埋めることができるか。「センターからスリットで1艇身飛び出せば、どんな超抜機でも一撃で倒せる」がボートレースの醍醐味のひとつ。で、伝説の戸田44号機などをここ一番で負かした戦法も、ほぼほぼ決まってセンター筋からスタート一撃の奇襲なのである。明日の今井美亜は超抜モーターに匹敵するだけの破壊兵器を有している、とお伝えしておこう。

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 で、このレースでパワー的にもっとも印象に残ったのは、大瀧17号機のレース足だ。1マークは5コース中谷の絞めまくりに3コース原田が応戦する展開となり、2コースの大瀧はその2本の激しい引き波に足を取られて尻もちをつくように失速した。そこからだ。再発進した17号機は今井の引き波を超えつつ出て行く出て行く。「みんなどっか馬鹿にしてるけど、これが55%のレース足だ!」と叫んでるような出足~行き足だった。その後もターンマークごとに先頭の今井を追い詰めていった大瀧17号機。間違いなく今日がいちばん仕上がっていたと思うのだが、この足をキープするだけでも明日は軽視できない抜群パワーとなることだろう。

機力に勝る戦法

10R
①田口節子(岡山) 09
②藤原菜希(東京)   07
③遠藤エミ(滋賀)   07
④廣中智紗衣(東京)06
⑤山川美由紀(香川)08
⑥高田ひかる(三重)14

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 控えめだった9Rに比べ、こちらはご覧の通りの↑灼熱ゼロ台スリット。が、ぴったり横一線になってしまっては内コースに分がある。田口がインからしっかり押しきり、1マークの出口で3番目のファイナル入りを決定づけた。

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 凄まじかったのは2着争いだ。内コース有利の展開よろしく、2コース差しの藤原と3コースから二番差し(!!)遠藤がバック並走。遠藤のターンスピードは流石の一語で「内から舳先を突っ込んだ以上は1-3で決まり」と思ったものだが、そこから力強く伸びたのは外の藤原だった。2マークも伸びなりに外から外へとぶん回した藤原がレース足で圧倒。追いすがる遠藤を瞬時に2艇身ほど突き放してしまった。その足の差たるや、喩えて言うなら「空手チャンピオンvs千鳥足の酔いどれおじさんの喧嘩」くらいの大差に見えた。

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 が、ボートレースの着順はパワーだけでは決まらない。2周1マーク直前、圧倒的優位の藤原に対して遠藤が妖しく動く。スーーーッと外から内へ艇を運び、そのままターンマークに直進。いわゆる「切り返し」なのだが、その航跡~ポジショニングが藤原にとって「抱きマイか差しか、どっちも可能だけど正解はひとつかも??」と惑わすような絶妙の“布石”だった。藤原の結論は2マーク同様の全速握りマイ。それを察知した遠藤はターンマークすれすれを通過しながら、艇を併せるような握りマイで応戦した。この老獪すぎる陽動作戦は、藤原を焦らすに十分だった。バランスを崩して大きく振り込み、エンスト。そしてタイムオーバー失格……。遠藤のあの切り返しは、たとえばSGで松井繁などがスピード自慢の若手や女子に対して見せる常套手段で、遠藤自身が何度も煮え湯を飲まされた戦術だ。その悔しい経験が、今日は逆の立場で役立った。藤原にとっては実に悔しい失格だが、大きな経験値を得たターンミスでもあったと思う。

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 激辛の高等戦術でファイナルのチケットをもぎ取った遠藤だが、現状のパワーは優勝戦の6コースではあまりにも非力すぎる。昨日の派手な転覆が本体に与えた影響は深刻で、明日までにどこまで回復できるか。いや、たとえ復元できたとしてもトップ級よりかなり弱いはずで、本気で優勝を狙うならピットアウトから本命レーサーを惑わす行動が必要になるだろう。たとえばSGの勝負駆けレーサーのように。

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 逃げて圧勝した田口のパワーは、2日目にプロペラ交換をしてから大幅アップ。私の勝手な見立てではしっかり上位級のひとつと踏んでいたのだが、本人は「まだまだ弱い」と泣きが入っている。確かに、今日はスリット同体から隣の藤原に半分ほど覗かれていて、あれを喰らっては「いい」とは言えないだろう。私の鑑定にも変更を加える必要がありそうだが、あるいは今日の藤原の行き足がチヒロ64級の超抜だったかも? なにしろ、3コース握りマイを常とする遠藤を、ツケマイでもまくり差しでもなく二番差しにさせた行き足なのである。明日の一般戦の藤原(4号艇と5号艇!!)はもちろん舟券に絡めるべき存在だと肝に銘じておきたい。

パワー三銃士、集結!!

11R
①大山千広(福岡)  08
②松本晶恵(群馬)   16
③堀之内紀代子(岡山)09
④小野生奈(福岡)   13
⑤日高逸子(福岡)   15
⑥渡邉優美(福岡)   18

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 チヒロ64がコンマゼロ台の踏み込みから楽々と逃げきった。レース後の共同インタビューで足落ちの不安を語ったらしいが、実戦そのものは影を踏ませぬ圧勝だっただけに見た目にはちょっと分からない。あ、言われてみればスリット同体だった堀之内と出て行き方が一緒だったかも、とか、スタートでやや凹んだ松本の伸び返しが少しだけ強めに見えたかも、とかとか思い出すこともあるが、準優だから敵のパワーも強いのは当たり前。明日は千広なりの不安を解消すべく最終調整に励むだろうが、最後の最後に戦うラスボスは己の心。ファンファーレの前に、相棒の64号機を全面的に信頼する心構えだけは失わないでほしい。

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 9Rの大瀧、10Rの藤原に続いて、ここでもパワー的に「おっ!」と唸らされたのが松本48号機のレース足だった。スタートで後手を踏んだのにぐんぐん伸び返してターンマークを小さく回ってすんなり2番手確保して後続を置き去りにして……その一連の流れが、いつも死闘になりがちな準優の2着争いにあって不自然なほど「楽ちん」に見えた。つまりは全部の足がかなり強力なのだと思う。

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 松本48号機に関しては前検で「目立たない」と酷評し、その後も「48号にしては」と疑問を投げかけてきた私だが、今日の楽ちん2着ではっきりS級レベルと確信した。前検から見立て違いだったかも知れないし、松本の日々の調整で期待どおりの超抜パワーに仕上がったのかも知れない。なんにせよ、パワー相場的には松本48号機と大瀧17号機が、千広64号機にとっての最大級の敵になりそうだな。戦前の下馬評どおりの最終決戦ではあるのだが、今現在の私はもちろん64号機がアタマひとつ抜けたモンスターエンジンだと信じている。(photos/シギー中尾、text/畠山)