ＳＧもＧⅡも、一言で言ってしまえば、優出メンバーはみな落ち着いたものだった。
優出インタビューが朝にあり、それから帰ってきてすぐにビリビリ緊張している選手がいるわけがない。それぞれが足にも大きな不安があるわけではないから、即座に動きだしたりということもない。女子の６人は、１Ｒ発売中にスタート練習が設けられていたので、全員がボートを水面に下ろしていたが、練習後は多くが陸にあがって、思い思いの準備を始める程度だった。あ、小野生奈と竹井奈美はボートを上げてなかったな。目撃できなかったが、試運転もしていたかもしれない。
日高逸子は、テレビ東京の番組の取材を受けてもいた。足が厳しい、すぐに整備を、という状況なら受けている余裕もないわけだから、これは機力に大きな不満がないことのあらわれでもある。長嶋万記も別のカメラクルーのインタビューを受けていて、これも同様であろう。長嶋とは顔を合わせたのでエールを送ったら、実に柔らかく爽やかな笑顔を返してきた。いつも通りのレースをできる精神状態にはあるはずだ。
１号艇の遠藤エミも、朝の時点では緊張感やプレッシャーみたいなものをまるで感じさせない。時間を追うにつれ、だんだんとピリピリしていくのだろうが、少なくとも１号艇に震えている感じはまるでない。大瀧明日香も５号艇だから、同様の雰囲気であるのは当然か。といったように、まず女子はなんとも穏やかな空気である。
ＳＧには多少のピリピリ感はあるか、といえば、これまたそんなことはない。グランプリ勝負駆けの吉川元浩も、ボートの着水はＳＧ組でもっとも早かったが、陸では取材にこたえて笑顔も見せていて、平常心で過ごしているようだった。やはりグランプリ勝負駆けの森高一真も、語弊があるかもしれないが、まるで緊張感がない。ダラけているわけではなくて、大一番を前にしてまるで変わらぬ雰囲気なのだ。何を隠そう、優勝戦の本命は森高。それを伝えたら、「はぁぁん？ ボートレースの本命は１やろ！」と返してくる。森高はかねがね、「クロちゃんは１を本命にしたらアカン。そんな予想、ウチの子供でもできる。クロちゃんなりの見方を示せ！」と僕に言っているのに。まあ、森高流の照れ隠しのようなものかなと思う。
ＳＧ初優出の篠崎仁志も、実にゆったりとした雰囲気。優勝戦が近づいてくると、いろいろと思うところも出てくるだろうが、妙な気合の入り方もしていないし、昨日までの様子といっさい変わりない。１号艇の石野貴之も、リラックスした様子だ。メモリアル優勝戦１号艇の日も、前半の時間帯は同じような雰囲気、過ごし方だった。結果は２着だったが、１マークはしっかり押し切っており、つまりはきっちり自分のレースができるメンタルの仕上がりということだった。坪井康晴もまったくもって、余裕の雰囲気。って、なんかそんな話の繰り返しだな、この記事。でも、実際非常に落ち着いていたのだから、仕方がない。同じようなことを書き連ねてしまうわけである。
で、一人だけ少し違う動きだった選手がいたとしたら、やっぱり辻栄蔵である。辻はインタビューから帰ってきて、まず水面に出た。そして、すぐにボートごとピットに戻ってきている。ペラを外して調整所に直行。まず１回乗ってみて感触を確かめて、それから丸一日かけてのペラ調整に突入した、ということだろう。今日一日、どんな「積極的な調整」をするのだろう。そして、どのタイミングまでペラ調整に取り組むのだろう。間違いないのは、優出メンバーで誰よりも長くペラ調整をした男になるということだ。（ＰＨＯＴＯ／中尾茂幸 池上一摩 ＴＥＸＴ／黒須田）
