BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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蒲郡ヤングダービー準優ダイジェスト

一撃の割り差し

 

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9R

①村岡賢人(岡山) 09

②片橋幸貴(滋賀) 13

③木下翔太(大阪) 11

④羽野直也(福岡) 09

⑤松崎祐太郎(福岡)11

⑥深谷知博(静岡) 13

 

 うーーん、コンマ09のスタートから1マークのインモンキーまで、今日の村岡にさしたる落ち度はなかったと思うのだが……それだけに、木下の3コースまくり差しが「神業」のように思えた。あの隊形であの角度で2本の引き波を超えて、インを捉えきるのはありえないはずなのだが。おそらく卓越したターンスピードと引き波をモノとしないパワーと、そのふたつが絶妙にシンクロして見事な割り差しを実現させたのだろう。脱帽。

 

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 さらにバック直線、最内の3番手からグングン伸びて2マークを先取りした片橋のストレート足も強烈だった。この部分の足も村岡が1枚上と思い込んでいたから、完全に私の見立て違いだった。

1着・木下、2着・片橋。

 あのまくり差しがきれいに入ったのだから、今日の木下のパワーは文句の付けようがない。ストレートは中堅上位レベルだと思うが、回り足と引き波を超える馬力は間違いなく上位~抜群と思われる。明日は2号艇。2コース想定なら今日のパワーを持続するだけで勝ち負けに持ち込むチャンスはある。1号艇があまりに強敵すぎるのが難点ではあるが……。

 

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 片橋は展示タイムこそ平凡だったが、今日の実戦での伸び足はトップレベル。4号艇の明日はさらにこの部分を強化する可能性は高い。差しよりもまくるタイプだけに、4カドからの一撃は警戒すべきだろう。

 

スーパーターン

 

10R 並び順

①篠崎仁志(福岡)21

⑥北野輝季(愛知)16

②中田竜太(埼玉)21

③椎名 豊(群馬)08

④河野 大(徳島)15

⑤島村隆幸(徳島)21

 

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 スタートタイミングは御覧の通り。スリットで1艇身ほど出し抜いた椎名が、4カドから一気に絞めまくりを敢行した。この展開は私の予想=脳内レースと完全に一致しており、1マークでは耳から脳汁が噴き出したのだが……その直後の3コース中田のターンが常軌を逸していた。まくられた瞬間にすぐに態勢を立て直して2コースの北野に強ツケマイを浴びせ、ターンの出口で椎名に肉薄していたのだ。高橋アナが言うところの「換わり全速」。この戦法は「まくられながら2着確保」というパターンが多いのだが、まさか先頭の椎名に届いてしまうとは!!

「まくられまくり差しとも言うべきスーパーターン!!」

 高橋アナが絶叫するほどの、ありえない一撃逆転のウルトラターンだった。完璧にまくりきった椎名もさぞや驚いたことだろう。いま、20代でもっとも活躍している中田の充実ぶりが、そのまま水面に投影されたターンでもあった。

1着・中田、2着・椎名。

 

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 ヤングダービー史に刻まれるであろう中田のミラクル換わり全速ターン。最大の要因はもちろん中田竜太の判断力、動体視力、ターンスピードetcつまりは個体の能力に拠る部分が大きい。さらに、その個体能力をしっかり引き出した18号機のパワーも称賛すべきだろう。今日の足色は全部が上位クラスで岡村や遠藤らにヒケを取らない節イチレベル。優勝戦の中でももちろんトップ級。11Rの結果も踏まえてファイナル1号艇となった今、選手の格的にもパワー的にも負けるべき要素が極めて少ないと言うしかない。

 

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 前検から軽快な伸び足を見せていた椎名67号機は、今日もゴキゲンな直線足を生かして優勝戦のチケットをゲットした(黒須田曰く「シーナ&ロケッツまくり」……ププッ)。ただ、バックの出口から2マークまでの足色は中田のほうが光っており、完全にお株を奪われた格好でもあった。5号艇で優勝するためには、さらに強烈に伸び足を付けるか、それなりに大きな展開の利が必要だと思う。

 

恐るべき3対3の明暗

 

11R

①前田将太(福岡)24

②岡村慶太(福岡)23

③遠藤エミ(滋賀)25

④大上卓人(広島)05

⑤堀本和也(徳島)12

⑥仲谷颯仁(福岡)14

 

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 これだからボートレースはわからない。人気のスロー3艇にどんな精神作用が働いたのか、ぴったり横並びでドカ遅れ。たとえば、スタート展示で岡村に伸びられた前田がスリット全速を意識して起こしを溜めすぎ、スリット同体なら前田を出し抜けると思った岡村が付き合い、岡村の動きを見て俊敏に動こうとした遠藤も歩調を合わせた??

 

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 これが3艇立てなら「遅いなりに息が合った」と言えるのだが、ダッシュ3艇はその“三すくみ”とは無縁にしっかりと踏み込んでいた。遠藤と大上のスタートは、軽く1艇身を超えるコンマ20差! いくらパワー自慢の内3艇でも、これでは何の抵抗もできない。大上が軽々とスロー勢を飛び越え、6コースの仲谷がスピードにモノを言わせてあっという間に2番手を取りきった。シリーズリーダーの前田が必死に追いすがったが、大差の3着を取りきるのがやっとだった。

1着・大上、2着・仲谷。

 

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 さてさて、まくり圧勝だった大上のパワーは、完全なスタート勝ちだっただけに的確な判断は難しい。ただ、展示を終えて記者席にやってきた“足利き”の高橋アナが「大上の足がなんだかすごく不気味に見えた。もしかしたら回りすぎなのかも知れないけど」と嬉しそうに言っていたから、今日の仕上げはバッチリだったのだろう。もちろん3号艇の明日も軽視は禁物で「準優は単なるスタート勝ち」などと軽く考えていると思わぬしっぺ返しを食らうかも? 私自身、大上の正味のパワーをまったくと言っていいほど把握していないので、明日はことさらその気配に注目するつもりだ。

 

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 仲谷も「まくり連動で早々に2着キープ」というレースだったため、パワー評価は難しい。ただ、今日の展示タイム6秒63は岡村の6秒65を凌ぐ準優のトップ時計で、出口から抜け出す足にも光るものがあった。おそらく今日の仕上がりがもっとも良かったはずで、明日も同じ足色をキープできれば内5艇にとって脅威になりえる。準優の1号艇がすべて飛んだ波乱含みのファイナル、しかも中田以外の5人はすべて経験の浅いルーキー世代。そんな異様な流れが、今節の最少登番レーサーをあれよあれよと優勝に導くかも??(TEXT/畠山、PHOTOS/シギー中尾)