BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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シリーズ戦 準優ダイジェスト

千両役者の大晦日!

 

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8R 並び順

①廣中智紗衣(東京)09

②中村桃佳(香川) 14

③今井美亜(福井) 13

⑤日高逸子(福岡) 14

④小池礼乃(福岡) 26

⑥犬童千秋(福岡) 16

 

 廣中が見事なトップスタートからきっちり逃げきった。スタートも絶妙だったし、「全部の足が強めのバランス型」という見立て通りの足色で難なく逃げきってみせた。もちろん、優勝戦でもトップ級のパワーなので、3号艇でも侮ってはならない。

 

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 で、このレースのMVPはやっぱりグレートマザー逸子さま。いや、準優全体のMVPだな。スタート特訓もスタ展も何食わぬ顔でダッシュ5コースを選択、いざ本番ではオレンジブイからヒュンと加速して内艇をキュッと締め込み、4コースを奪い取ってしまった。ヒュン&キュッの老獪さよ。たかがひとコースと言うなかれ、1-234だらけの大村水面だからして、4コースと5コースでは雲泥の差なのだ。

 

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 そしてスローの4コースから焦らず騒がず2番差し、バック直線で中村が振り込むというアクシデント(これがなければ2着を取りきっていただろう)も幸いして、まんまとファイナルのチケットを入手した逸子ままである。何度も何度も書いてきたが、やはりこのお方はモノが違う。結果的に、明日の日高は6号艇という最難関の枠番を与えられたが、それは大晦日の夕べを何倍にもスリリングにするトピックだと断言しておこう。

 6号艇の日高逸子のいるファイナル。

 もう、それだけで血が騒ぐ。

 

残念な光景

 

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9R

①中谷朋子(兵庫県)19

②藤原菜希(東京) 11

③五反田忍(大阪) 08

④谷川里江(愛知) 11

⑤三浦永理(静岡) 09

⑥渡邉優美(福岡) 15

 

 8Rはグレートマザーの活躍で大いに盛り上がったが、このレースはちょっと首を傾げたくなるようなシーンが相次いだ。おそらく“準優”というシチュエーションが何人かの選手を変貌させたのだろう。まずはスタート。イン中谷が凹み、2コースの藤原がちょうど半艇身ほど抜け出した。こんな隊形になったら、考える前に握りつぶすのが菜希スタイルだ。が、今日の菜希は1マーク手前まで直進し、中谷が伸び返すのを待って差しに構えた。もちろん、下手に握ればぶっ飛ばされるくらいの危険な間合いではあったが、果敢に握るいつもの藤原を見たかった。

 

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 そして、さらに怪訝に思ったのが2マークの五反田だ。中谷が逃げ、3コースの握りマイから完全に2番手を取りきった五反田。3番手の三浦らを2艇身以上も引き離し、2マークは外からの抱きマイ一発で優勝戦を確定させたはずだ。が、五反田はそこで握らず、他艇を行かせてからの差しを選択した。握って内から張られるのを恐れたか、あまりの有利な態勢に慎重になり過ぎたのか……どちらにしても、ありえないほどの判断ミスだった。五反田が減速したのを見た後続艇はドカドカとその前を通過し、結局はすべての艇が通り過ぎるのを待ってからの差しになった。回ったときには、先マイした谷川と三浦の背中はすでに遠のいていた。このターン一発で、五反田は優出を逃したと言いきっていいだろう。

 

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 そして、逆に息を吹き返したのは谷川だった。8Rの日高に続いて後輩レーサーのミスを看過することなく、自分の幸運へと手繰り寄せた。この2着で明日は5号艇となった里江姐さんが、日高とともにどれだけレース全体を揺さぶるか。スタート前の愉しみ(難解だが!)がまたひとつ追加された。

 それにしても……藤原といい五反田といい、私の大好物のまくり屋だけに、らしいレースを見せてほしかったなぁ。

 

超大物の予感

 

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10R

①竹井奈美(福岡) 12

②佐々木裕美(山口)15

③鈴木成美(静岡) 15

④香川素子(滋賀) 17

⑤大山千広(福岡) 15

⑥落合直子(大阪) 24

 

 スタート勘を課題にしていた落合が凹み、それ以外はほぼ横一線。しかもインの竹井がやや抜けているというスリット隊形で、イン逃げ以外の決着になる可能性は極めて低かった。さらりスマートなインモンキーで明日の5番目のチケットが竹井に手渡された。しかも、1号艇という特別シートが。

 

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 そして、最後の1枚の貰い手もバック中間あたりでほぼほぼ決まった。3コースから握りマイで攻めた鈴木だ。初日から上位級の足だと踏んでいたが、やはり今日もゴキゲンな足色だった。

 そして……もっとも熾烈を極めたのは、すべてのチケットが売り切れた後の3着争いだ。香川vs千広。最初の主導権は香川にあり、千広が1、2艇身ほど後方から追いかけまわした。2周1マークでは逆に千広が内から舳先を突っ込み、体が入れ替わる。が、またまた香川が冷静な差しハンドルを入れて優位に立つ。そこからの千広の強襲が半端なかった。3周1マークも最終ターンマークも渾身の強ツケマイ!

 

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 最後の最後、このスピード任せの猛アタックが決まったかと思った瞬間、あまりのスピードに艇と身体がバランスを逸して振り込み、水を浴びた艇がぶくぶくと沈んでいった。転覆でも落水でもない、沈没……。千広の3着舟券を握りしめていた私には痛恨の沈没だったが、同時に含み笑いを浮かべてもいた。

 やっぱ、超大物だわ!!

 百戦錬磨の素子ママと、準優の3着争いで壮絶なボートチェイス(“鬼ごっこ”のようだった)を繰り広げた挙句に沈没!! 狙ってできることではない。物忘れの激しい私だが、なんとか今日の出来事を脳みその襞に焼き写し、いつか千広が何百倍もでっかいことをやらかしたときに、ちょこっとだけでも書きたいな、などと笑いながら思った次第である。(text/畠山。photos/シギー中尾)