大晦日、といっても、ピットにはそんな雰囲気はひとつもない。グランプリ最終日のピットにクリスマス気分など微塵もなかったように、今日のピットは大一番を前にした戦いの空気があるのみである。
序盤に関しては、朝の優出選手インタビューが終わって間もないということもあって、大きな動きは見られていない。
小野生奈……動きが見られたとするなら、小野がギアケース調整をしていた、ということくらいか。優出インタビューでは「シリーズの人と足合わせしても分が悪いことがある」と語っていた。夏冬女王コンプリートを果たして賞金ランクトップのまま逃げ切るには、やはりもう一足欲しいところ。夏のレディチャンの最終日には忙しそうに走り回っていたが、今日も同様の一日になるかもしれない。
遠藤エミ……インタビューから戻って、すぐにいつもの場所でペラ叩きを始めている。今節の遠藤は、その場所にいる時間が本当に長い。仕上がりは節イチ級だと思われるが、しかし油断はかけらもない。その姿を見るだに、死角があまり見当たらないと思われるのだがどうか。
海野ゆかり……海野も、いつもの場所でペラ叩きだ。途中、ピット内を歩いている姿も見かけたが、表情はかなり厳しく見えた。と言いつつ、ピットを訪れた植木通彦さんに気づくと、ニッコリご挨拶。
2Rが終わるまでに調整している姿をハッキリ見たのは以上の3人のみ。
長嶋万記……プロペラがまだモーターに着いている状態。整備室で防水カバー(キャブレターが濡れないようにはめ込む黒いカバー)を磨いて、モーターに装着。その後は控室に消えている。調整の準備を整えた、という感じだ。
平高奈菜……やはりペラがモーターに着いたままで、調整を始めるのはもう少し先になるような雰囲気。1R終了後は、淺田千亜希のモーター返納をヘルプ。率先して動く活躍っぷりだった。選手仲間との会話では、笑顔が満開。
寺田千恵……プロペラは外れていたものの、ゆったりと過ごしている感じだった。今朝はピット見学会が行なわれていて、寺田は訪れたファンに愛想を振りまきまくり。テラッチとピットで触れ合えたのは、いい思い出になったことでしょう。僕の個人的な感覚では、今節でいちばんゴキゲンで過ごしているように見える。
というわけで、大晦日決戦は静かな滑り出し、といったところだ。今日は風が強まり、朝まで雨が降っていた。今は青空も見えてきて、風がもっと強まる可能性もある。時間が経つにつれて、ピットは賑わい、緊張感も高まって、大一番の雰囲気を醸し出していくことだろう。
シリーズ組。こちらも基本的にはクイクラ組と変わりない動きぶりだ。インタビューから戻って、中谷朋子、鈴木成美がペラ室へ。中谷朋子は2R発売中にはペラを装着していて、試運転にも向かう構えのようだった。
インタビューから戻って、すぐに試運転に向かったのは竹井奈美。いったん切り上げて、ペラ室に向かってもいる。盟友・小野と同様に、竹井も決して足的に満足しているわけではない。前付けのある1号艇でもあり、パワーアップをはかる必要がありそうだ。今日の福岡若手コンビはともに多忙になるだろう。
日高逸子のモーターにはペラが着いたまま。谷川里江も調整に入るのはまだ先になるようで、ベンチに座ってゆったりと過ごしていた。ベテラン勢のこうした泰然っぷりは、やはり非常に不気味。場数の違いを感じずにはいられないのだ。
あと、廣中智紗衣もまだペラを外しておらず、エンジン吊りで姿を見るのみなのであった。シリーズファイナルも、本格的に動き出すのはこれからだ。(PHOTO/中尾茂幸 池上一摩 TEXT/黒須田)