BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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多摩川バトルトーナメントTOPICS2日目

 まずはセミファイナルをダイジェストでお伝えしよう。

勝負師の真骨頂

9R 並び順
①下條雄太郎 17
⑥江口晃生  19
②石野貴之  13
④田村隆信  11
③原田幸哉  11
⑤細川裕子  17

 ファイナル進出の第1号は、人気薄のトリックスター田村隆信だった。舟券の人気を一身に集めたのは、2号艇の石野。たとえば1-4-5の65倍に対して2-4-5が15倍!! 「江口を入れてセンター筋から一撃まくり」が私も含めた多くのファンの脳内レースだった。

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 いざ実戦の並びは16・24/35。内の下條、江口はずんずん深くなって80m起こし。同じスローながら110m起こしの石野がスリットから勢いよく飛び出したが、イン下條もおいそれとはまくらせない。ターンマークを外して石野に応戦する構えを見せ、それで石野のターンはまくりともまくり差しともつかない半端なものになった。「1着条件」のBTセミファイナルらしい、ギリギリの攻防とも言えるだろう。

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 下條と石野が揉み合っている間に、スパーンと小気味よく差し抜けたのが田村だった。スタート展示では石野を出し抜くように2コース選択。いざ本番では「石野、やっぱりお前に任せるぜ」的なマーク戦に切り替え、見事に石野を使いきったわけだ。さすが、ボート界の諸葛亮孔明!
 2着にはイン下條が粘り込んだが、昨日のトーナメントが3着だけに「第5の議席」(2着選手でもっとも成績の良い選手に与えられるファイナル5号艇)はかなり苦しい2着と言えるだろう。

穴男の真骨頂

10R 並び順
①萩原秀人  14
②今井美亜  18
⑥森高一真  08
③上田龍星  11
④田中信一郎 12
⑤川野芽唯  13

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 9Rの田村に続いて、これまた四国の銀河戦士が大仕事をやらかした。6号艇の森高一真は、大先輩の信一郎を全速で飛び越えて3コース奪取。内3艇が横並びでずんずん深くなる中、上田&信一郎の大阪コンビは颯爽と艇を返した。おそらく「上田まくりのマーク差しで大阪ワンツー」が信一郎の作戦で、それは私の脳内レースにも合致した。

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 だがしかし、4カド・龍星よりも力強くスリットを跨ぎ、真っ先に仕掛けたのは森高だった。この男の3コースは常に全速まくり一徹、迷いのない握りマイがものの見事に決まった。田村、森高ともにそれぞれの持ち味を120%活かし切った勝利と言えるだろう。
 2着は森高まくりに連動する形になった龍星。龍星は昨日のトーナメントも2着だったため、この時点で前出・下條の「第5の議席」の権利は消滅した。

破竹の3連勝

11R
①坪井康晴 11
②赤岩善生 16
③仲谷颯仁 13
④片岡雅裕 08
⑤吉田拡郎 12
⑥長嶋万記 11

 この待機行動はすんなりの枠なり3対3。コースの利を活かした内3艇の激しい叩き合いとなった。逃げる坪井、3コースからスピーディーに割り差した仲谷、2コースから小さく差して体を残した赤岩。

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 普通、3コースのまくり差しが決まるときは2コースが引き波に沈むとしたものだが、赤岩の差しハンドルは実に巧妙だった。前検ではやや劣勢に見えた32号機が、しっかりと水を噛んで出口から押して行く。ターンも見事だったし、「モーター使い」赤岩の仕上げも申し分なかった。バックではぴったり横一線で、こうなれば最内の赤岩に2マークの“サーブ権”が移動する。握り過ぎず落とし過ぎずの的確な先マイで、3枚目のファイナルチケットをがっちりと自分のものにした。一般戦も含めて無傷の3連勝。昨日の2マークのまくり差しも凄まじかったが、赤岩善生という男の熟成ぶりをひしと感じさせる2日間でもあった。

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 2着は惜しくもまくり差しが届かなかった仲谷。仲谷は昨日のトーナメントが3着だったため、10R龍星に及ばずファイナル進出の夢を絶たれた。

豪快、3カドまくり!

12R 並び順
①山田雄太 16
④深川真二 29
②桐生順平 07
③井口佳典 08
⑤白井英治 09
⑥中野次郎 10

 レース展開として、最後のこのレースがもっともダイナミックな空中戦になった。もちろん、待機行動で暴れたのは深川。スタート展示ではインを強奪してみせたが、本番は山田が枠を主張して2コース止まり。

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 ここまでは誰もが予想できる流れだったが、他のメンバーも黙ってはいなかった。深川を招き入れて3コースを選択した桐生順平が、外の3艇に続いて舳先を翻したのだ。単なる枠なりの3カドではなく、前付け艇を入れての3カドは破壊力が何倍にも増幅する。しかも、スタートタイミングは↑御覧の通り!
 3カドの桐生が大きく凹んだ深川を軽々と飛び越えてイン山田に襲い掛かり、桐生マークの井口はさらにその上をぶん回す2段まくり! 大外からは中野がぽっかり空いた内水面にまくり差しのハンドルをねじ込んだが、先攻めの桐生が天性のスピードにモノを云わせて4番目のファイナルチケットをゲットした。

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 2着は2段まくりで桐生を脅かした井口。同期の田村、森高が優出を決めているだけに是が非でも乗りたかっただろうが、昨日のトーナメント3着が響いてファイナルに一歩及ばなかった。ゴールした瞬間、ファイナルの枠番を最初に確定させたのは上田龍星=5号艇だった。

 バトルトーナメントの醍醐味はまだまだ終わらない。レース後、ファイナルのメンバーと枠番を決する最終抽選が行われた。

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 まずは6号艇。復活戦で再び息を吹き返した石渡鉄兵と馬場剛(ともにトーナメント5着×復活戦1着)が、箱の中に納められた2通の封筒を分け合う。まずは鉄兵が箱を大きく揺さぶってシャッフルし、中から1通を引き抜いた。続いて馬場が残りの1通を。プロ野球のドラフト抽選のように、同時開封で雌雄を決する。

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 東京支部同士の仁義なき抽選を制したのは……先輩の鉄兵だった。緑色の紙に「6」と記された数字を確認した鉄兵は、照れくさそうな笑顔でその紙を周囲に示した。
 一方、それを見た馬場はどちらかといえば安堵に近いような笑みを先輩に返し、屈託のない表情で会場を後にした。本当は悔しかったのかも知れないが、「一般シリーズの優勝戦」と割り切りやすいのがこのBTというお祭りでもある。

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 5号艇は前出、上田龍星がトーナメントの着順を活かして抽選なしでこの座を確保した。そして、メインイベントは今日のセミファイナルを勝った4選手による1~4号艇の争奪戦。箱に入った4通の封筒を、赤岩、桐生、田村、森高の順に引いて行く。これまた同時開封だけに、最後の森高も何号艇かは分からない。

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「一真、同時開封だから楽しみがあるやろ」と野次馬?の白井英治。
「せやでぇ、残っとる、残っとるでぇ!」と田中信一郎。取り巻き選手の一番人気は森高だったようだが、見事に1号艇を引き当てたのは、昨日から無傷の3連勝&デビュー1800勝も突破したイケイケ薩摩魂・赤岩善生だった。

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 赤岩が「1」と記された紙を少し照れくさそうに示すと、「パーフェクト」という声がちらほらと耳に届いた。ただでさえ完全優勝の多いこの男が、年に一度のお祭りシリーズでもやらかしてしまうのか。進入に乱れの起きにくいメンバー構成だけに、その可能性はかなり高いとお伝えしておこう。(photos/チャーリー池上、text/畠山)

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