BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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THEピット――終盤の時間帯

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 終盤の時間帯となると、さすがに作業を終えている選手もおり、また1便で帰宿する選手もいて、ピットも落ち着きが出てくるものだが、それでも初日を走ってみた感触をもとに粘り強く調整作業に精を出す選手も少なくない。
 服部幸男が、親の仇か、というほどに強くプロペラを叩いていたのには驚いた。今日はまくりを決めて勝っているのだ。レースとしては会心だったはずだ。それでも叩くというよりぶん殴ると言ったほうがしっくりくるほどに、ハンマーを振り下ろしている。足的には決して会心ではなかった、ということだろう。結果と感触は違うこともあるだろうし、また結果が出たからといって満足はしない。まさしく勝負師である。

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 結果が出なかった山川美由紀も、プロペラ調整の時間が長かった。前検後のコメントを見ると悪い手応えではなかったようなのに、まさかの6着2本。これは放っておくわけにはいかなかっただろう。すでにマスターズでも登番は上のほうになっているわけだが、勝負への執念はまるで衰えていないということだ。

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 整備室では、武田光史が本体整備。1Rではカドから攻めて見せ場を作ったが、張られて6着。後半も大敗である。整備に取り掛かる判断を早くせざるをえなかった初日、だったわけだ。

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 整備室には木村光宏の姿があった。木村の作業はゲージ擦り。プロペラにゲージを当て、やすりで擦ってそのラインをゲージに写し取っているわけだ。もう何度も書いてるけど、早い段階でのゲージ擦りはエンジンが出ている証拠。モーター本体やプロペラを急いで調整する必要がなく、さらに今後のために動いているペラの形を手元に残して引き出しを増やそうとする。それがゲージ擦りだ。今日は1走で逃げ切り勝ち。外枠になっても侮れない、と見た。

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 その木村が、12R出走直前に係留所に降りていった。おそらく、同期の前本泰和の戦いを間近で見るためだろう。ふと周囲を眺めると、角谷健吾が競技本部前のバルコニーから水面を見つめていた。こちらは同支部の濱野谷憲吾のレースをジカに見るためか。SGの優勝戦などでも仲間が係留所など、外に出てきてレースを観戦することは日常的で、声は届かずとも、エールはモニターではなく水面に向かって送りたいということだろう。

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 その12Rは、前本泰和が逃げ切った。木村の念が届いた!? 地元マスターズの初日を締めくくることができた前本は、さすがに安堵の表情を見せていた。いつも通り淡々とした様子ではあるのだが、やはり宮島ビッグでの勝利は格別であろう。

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 濱野谷憲吾は3番手を争ったが及ばず。エンジン吊りを終えると、対岸のビジョンに映し出されていたリプレイに見入っている。何が足りなかったのか、どう走るのが正解だったのかをいち早く確認しようとしているわけだ。6号艇とはいえ、負けて良しと思うような選手は、少なくともこのクラスにはおるまい。ビジョンを見つめる濱野谷の目は、鋭くとがっていた。

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 リプレイを見ている選手、といえば、11Rの鳥飼眞が印象的だった。一宮稔弘と3番手争いになり、リードしていながら3周2マークで逆転を許している。それを整備室にあるモニターで見ていた鳥飼は、3周2マークの初動を入れるあたりで思い切り顔をしかめた。失敗したことに対する悔しさと、その失敗の原因を見つけたことがないまぜになったような、壮絶とも言える悔しがり方だった。この思いを胸に、明日はリベンジをはかる一日となるだろう。(PHOTO/中尾茂幸 TEXT/黒須田)