BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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児島ダービーTOPICS 3日目

V候補たちの明暗

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 うっかり書き忘れたが、昨日の7Rの⑤毒島誠のターン(2段のまくり差し)は半端ないものだった。ほとんどの方は「あ、あれね、見た見た!」という感じだろうが、まだ見てない方はぜひ是非リプレイ鑑賞していただきたい。5コースからあの狭い隙間をあのスビートであの旋回!! 5コースまくり差しが巧い若手レーサーは多々いるが、あれほど難度&完成度の高いターンができる選手はブス・ミネなど数人しかいないだろう。
 そうそう、このレースでは6コース原田幸哉も内の毒島とシンクロするように同じタイミング&同じスピードで凄まじいまくり差しを繰り出している。ふたりの天才の同時旋回をいっぺんに視野に納めて、なかなかに美しい光景を眺めていただきたい。

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 で、イン逃げも含めて連勝した昨日のMVP毒島が、ひたひたとV争いに最前線に近づいている。今日の2走も安定感抜群。まず6号艇の6Rはピット離れで5コースを奪い、全速の握りマイ(このターンはややサイドの掛かりが甘かった)から危なげなく3着ゲット。3号艇の10Rも3コース同体から早くて速い握りマイ(これまたサイドが甘め。舟の返りは良かった)でキッチリ2着を確保した。昨日ほどの派手なパフォーマンスはなかったが、6枠3枠で3着2着と無難にまとめるのも強者の証だ。
「ダービーは弱いです」
 開会式で泣きを入れ、ドリーム戦も見せ場なく6着に敗れた毒島。パワー的にも今節は厳しいそうに見えたものだが、2日目には気配を一変させたあたりも毒島流。いざとなれば伝家の宝刀・スーパーピット離れ(いつ出るかは分からんが)もある。今日のレースを見る限り、現状は中堅上位あるなしと見ているが、いつものように徐々にパワーアップさせれば「ダービーに弱い」「昼間のSGを獲れない」というふたつのジンクスをいっぺんに蹴散らすかも?

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 今日は3~5号艇が4勝を挙げたが、とびっきりのサプライズは2R5号艇の山田康二だろう。F2の足枷が響いて昨日は6着5着。このレースはさすがに人気薄となったが、起こしからしっかり他艇と舳先を並べるコンマ17発進。実に美しい横一線のスリットから、内の中澤和志にツケマイを浴びせる鋭角&高速旋回で艇団のど真ん中を切り裂いた。昨日の毒島より広い差し場が拓けてはいたものの、スリット横一線の5コースからまくり差しを決めるのは至難の業。このダービーという大舞台のドリーム4号艇を担った実力は、F2持ちであってもやはり侮れない。

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 続く後半7Rはインから踏ん張りきれず3着に敗れた山田だが、明日の3R2号艇までしっかり勝負駆けに持ち込んだ。これまで13回のSG参戦で12度も予選を突破している勝負強さは、おそらくF2のハンデを凌駕することだろう。あ、F2の流れで言うなら、芝田浩治も昨日の5Rで732倍の大穴をブッコ抜いている。あとは初日から這い回っている小野生奈がどこまで一発やらかすか。パワー的にも着順ほど悪くはないので、放置することなく目を光らせておきたい。

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 V戦線に戻ると、最終12Rの①石野貴之vs⑤田村隆信のマッチアップは、重要な“前哨戦”のひとつと見ていいだろう。勝ったのは枠の利を活かした石野だったが、パワー的に勝者を圧倒して見えたのは田村70号機だった。厳しい隊形の5コースまくり差しとなった1マークの出口からシュッと出て行った押し足、1周2マークの差しハンドル一発で接戦の重成一人を置き去りにした回り足、そしてそして2周1マークは3艇身前にいた石野を一撃で差しきるかに見えた鬼足!!!! この1周3ターンマークのどこを取っても見事な実戦足だった。明日は予選最後の正念場と呼ぶべき6号艇と3号艇。ここでも70号機が鬼神の如きパワーを発揮して予選トップを守りきれば、8年ぶり4度目のSGタイトルが眼前まで近づくことだろう。個人的には最終日までセンター筋から攻める田村70号機を見たいのだが(笑)。

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 田村ばかりべた褒めしたが、もちろん逃げた石野も有力なV候補のひとりだ。あの2周1マークは荒れ水面に足を取られて舳先が浮き上がるという不利があった。で、その後のバック中間から田村の追撃を振りほどいたストレート足も評価すべきだろう。
「今節の石野って、アレっぽいムードを感じるんですよ」
 昨晩、(昨日までw)舟券が絶好調だった黒須田が酒の席でポツリこうつぶやいた。「アレ」はSGを面白いように勝ち獲った2、3年前のアレ。ピットで他を圧するようなオーラが、今節はぷんぷん漂っているらしい。暫定10位で明日は6号艇というタイトな立ち位置ではあるが、好調(だった)黒須田の眼力が間違っていなければ大きなポイントを上積みする可能性は高い。

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 一方、明日まで予選トップを争うと予想されていた地元のツートップが、逆に18位ボーダーの勝負駆けという立場で3日目を終えた。初日ピンピン連勝発進の山口達也は、昨日3着→今日5着で暫定8位という嫌なジリ貧ムード。ここまでノーハンマーを貫いてきたが、レース後についにプロペラに活を入れたらしい。通常、ペラを叩き換えると伸び足が一気にアップするのがヤマタツ流だと思っているのだが、果たしてどんな足色に変化するのか。明日の1R6号艇は舟券的にも妙味がありそうなので、朝特訓からコース取りも含めて注視するとしよう。

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 そして……達也よりさらに険しい暫定16位に甘んじているのがエース茅原悠紀だ。うーーーん、いの一番のセット交換で29%の凡機を立て直したように見えたが、道中での競り合いで随所に劣勢パワーを露呈し続けている。昨日は3着争いで5艇身も後方にいた深谷知博に追い抜かれ、今日も4番手から山田康二に逆転の差しを浴びた。パワー云々だけでなく、上位着を狙う焦りがハンドルにも伝わっている気がしてならない。明日は2・3号艇で最低でも③③着を目指す勝負駆け。しっかり大きく深呼吸し、自分が6コースからGPを獲った男であることを思い出し、焦らず騒がず18位以内というノルマをクリアしてもらいたい。(photos/シギー中尾、text/畠山)