BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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児島ダービー準優ダイジェスト

三拍子

10R
①毒島 誠(群馬)09
②西村拓也(大阪)09
③前田将太(福岡)14
④徳増秀樹(静岡)09
⑤柳沢 一(愛知)13
⑥井口佳典(三重)16

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 毒島がコンマゼロ台まで踏み込み、インから危なげなく押しきった。前付けのない穏やかな枠なり3対3で起こしは130m、わずかに向かい風がそよぐ静水面、スリットはほぼほぼ横一線と逃げるべき条件はすべて揃っていたが、それにしてもの威風堂々のインモンキー。ドリーム戦で6着大敗し、仕上がりきらない中堅モーターに悪戦苦闘してきた男が、こうして準優でインモンキーを繰り出していること自体が奇跡のようにも思える。もちろん、いつものように6つのコーナーを全速力で駆け抜けた走破タイムは、2日目の石野貴之のそれに並ぶ1分46秒9。速い巧い強いの三拍子が揃った圧勝劇だった。

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 一人旅をいそしむ毒島の後方では、準優らしい熾烈な2着争いが繰り広げられた。3コースからぶん回した前田、4コースから差した徳増、5コースからまくり差した柳沢がバック中間で舳先を揃える。誰にでもチャンスがある2マークだったが、大外の早い初動から前田が敵2艇のど真ん中をスピーディーに差し抜けた。
 が、SG準優の2着は簡単には決まらない。2周1マーク、今度は外に開いた徳増が渾身の全速差しで前田の内フトコロに潜り込む。見た目の迫力は徳増が上。最近はいつでもどこでも快速仕様に仕上げきる濃厚レーサーが、舳先をぐいぐい押し込んで完全に逆転したかに見えた。

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 勝負の2周2マーク、劣勢に立たされた前田の選択肢はふたつ。徳増を行かせて差すか、握って叩き潰すか。前田はほぼ迷うことなく後者を選んだ。徳増が初動態勢に入る寸前の強烈なツケマイ一撃。この決断の早さ速さが2着=ファイナルを引き寄せたと言っていいだろう。1周、2周ともに2マークの強気なターンは実に天晴れだった。
 これまで3度のSG優勝戦は、すべて4着以下に敗れ続けている前田。私のパワー評価は辛めで、5度目の挑戦も外枠からでは厳しいと見ているのだが、明日もそんなジジイの先入観を蹴散らすような極上のターンを魅せてもらいたい。

真骨頂

11R  並び順
①松田祐季(福井)01
②馬場貴也(滋賀)05
③久田敏之(群馬)07
⑥篠崎元志(福岡)09
④山口達也(岡山)09
⑤重成一人(香川)01

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 風を孕んだように中凹みとなった6艇がスリットを通過した瞬間、実況の椛島アナがなんとも表現しようのない奇声を発した。続いて、1号艇と6号艇を危惧する声に変わる。
 まさか??
 冷やりとしたが、↑御覧のとおりのギリギリセーフ。実は、この一連の流れでモニター表示(「スタート正常」または……)に気を取られていた私は、うっかり馬場の激差しを見逃していた。後でリプレイ鑑賞したらば、実になんともお上手な差しハンドル。黒須田がかねがね「馬場の2コース」「2コースの馬場」と言い続けている伝家の宝刀が、今日の大舞台でも余すところなく振り抜かれた。

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 一方、差されてしまった松田の敗因は……うーーん、特には見当たらない。インモンキーは少しだけ握り過ぎだったかもしれないが、ターンマークを外してないし、ホーム向かい風だけに多少の握り過ぎは挽回できたはず。あるいは、節イチ候補と謳われた出足(この場合は出口からの押し足)に陰りが差したのか。現状ではなんとも言えないが、今日のところは無類の2コース巧者・馬場の真骨頂として絶賛させていただこう。
 初日に4カドまくりを決めたふたりが順調に上位着を重ねてファイナルへ。節間屈指の好パワーにさらなる磨きをかけて、隙あらば初日のような大技にチャレンジしてもらいたい。
 で、5カドから惜しくも敗れ去った地元の山口達也などなど他にも書きたいことがあるのだが、次のレースがかなりアレだったので移動します、はい。

主役交代

12R 並び順
①田村隆信(徳島)09
⑤江口晃生(群馬)06
⑥松井 繁(大阪)10
②石野貴之(大阪)02
③桐生順平(埼玉)04
④木下翔太(大阪)01

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 戦前から胸騒ぎのするカードではあったが、やはり大波乱はここに潜んでいた。下剋上のドラマを生み出したのは浪速の勝負師・石野。その石野にバッサリと斬り捨てられたのは鳴門の勝負師・田村。上記のスタートタイミングが、その凄絶さを鮮明に反映している。
 スタート展示では江口がゴリゴリ、松井がやんわりの前付けで15・236/4。が、5コースでは足りないと見た王者・松井が、本番では江口に連動して激しく動いた。これを受け止めて枠を主張したのは田村のみ。ストレート足に自信のある石野は、歯牙にもかけずに招き入れる。最近は進入に辛い桐生も「石野の外なら」という風情で飄々と艇を流した。6人が織り込み済みの156/234。

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 こうなると、スローvsダッシュともにスタート度胸がモノを言う。スロー3艇は90m起こしから行けるだけの領域まで踏み込んだ。田村のそれもコンマ09。70号機の節イチパワーを加味すれば、スリット同体なら十二分に伸び返せるスタートだ。2コース江口も3コース松井もしかり舳先を揃えている。

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 だがしかし、ダッシュ勢の舵を取る石野は、そんなスロー勢の砦をスリットからわずか数秒で粉砕した。コンマ02!! ダッシュの利とともに、カド受け松井との半艇身ほどの差が一気に広がる。それが1艇身まで送達する前に、石野は同県の大先輩の舳先を掠めて一気に叩き潰した。そこからインの田村を呑み込むまで、3秒とはかからなかっただろう。70号機が自慢のセカンド足に突入する前に、不動の優勝候補は荒い引き波に大きく艇をバウンドさせた。

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 おっと、ついつい私的回顧風になってしまった。とにかく、スロー勢にはダッシュ勢の起こし~スタートは見えないわけで、石野の度胸満点のスタートが雌雄を決したわけだ。何の慰めにもならないが、インから09まで踏み込んだ田村には「今日の相手がちとえげつなかった」と言うしかないな(笑)。
 で、この石野のスタート強襲にしっかり連動して差し込んだのは、6コースの同県・木下だった。5コースの桐生も田村にツケマイを浴びせて連動したが、出口からの足で翔太に置き去りにされた感がある。中堅パワーでここまで奮闘してきたが、やはり準優では足りなかったか。
 石野と桐生に立て続けに叩かれた田村70号機は、バック5番手から反撃を開始した。そこから3番手まで押し上げた足は鬼気迫るものがあったが、ハナから大差を付けられた翔太との距離はあまりにも遠かった。翔太には申し訳ないが、ファイナル4号艇の田村70号機、ちょいと見てみたかったなぁ。

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 さてさて、11Rで松田が差し抜かれ、12Rでは田村がダッシュ勢に切り裂かれ、準優が終わってみたらば明日のファイナル1号艇は……毒島誠! 10Rのダイジェストで「準優1号艇にいること自体が奇跡」などと書いたが、まさかまさかファイナル1号艇まで上り詰めるとは!!!! 正直、この節間で何度も「誰が優勝するか」という話題が酒席に上ったが、毒島の名前はただの一度も出なかった。やれ田村だ達也だ石野だ、そのあたりを体内の酒ととともにぐるぐる回り続けていた。
 当欄では3日目のTOPICS冒頭で『(毒島48号機の)現状は中堅上位あるなしと見ているが、いつものように徐々にパワーアップさせれば「ダービーに弱い」「昼間のSGを獲れない」というふたつのジンクスをいっぺんに蹴散らすかも?』などと持ち上げたりもしたが、はい、内心では「そりゃないな」とペロリ舌を出しておりました。それがそれが、まさかのファイナル1号艇って……もちろん、1号艇=優勝ではないのだが、おそらく全国の大多数の人々が脳内の優勝候補を田村から毒島に書き換えたことだろう。私はといえば、これを書いている今もまだ「1号艇・毒島誠」という字面に実感が湧かないのだが……。(photos/シギー中尾、text/畠山)