１Ｒのエンジン吊りに集まった選手の多くが、水面に目を向け始めた。２Ｒのスタート展示。視線の先はもちろん西島義則だろう。西島さんがどこまで動くのか。それを受けて他の選手はどう構えるのか。選手もやっぱり、進入動く選手は気になる！ 住之江はボートリフトの真ん前で進入争いが行なわれているので、西島のド迫力の前付けも間近で見られるわけである。エンジン吊りの作業をしながら、その行方に見入る選手たち。進入に動きのあるレースが、いかに面白いかの証左であると思う。
２号艇の白井英治は、西島を入れて３コースを選択。これが正解で、スリットから深い起こしの内２人を圧倒して、そのまままくり切った。スタートタイミングはコンマ05！ 会心の一撃だったが、レース後の白井は神妙な表情。歓喜をあらわすようなところは見られなかった。
ただ、濱野谷憲吾とすれ違ったときには、悪戯っ子のような笑顔を見せた。
「濱野谷さん、ボートレースはスタートですよ！」
何を今さら、といった感じなのだが、相手が濱野谷だから、これはからかいの類いか。濱野谷はこのあとＦ２分の休みが控えているから、スタートで勝負できない状況なのだ（もう１本切ると、Ａ１級の出走回数が怪しくなってくる）。というわけで濱野谷は「無理！」と苦笑い。白井はおかしそうに笑った。濱野谷のテクがあればスタートの分はカバーできますよね！
１Ｒを逃げ切ったのは丸岡正典。丸ちゃん自身はわりと粛々としたレース後、であったのだが、周囲の選手が嬉しそうに目を細めていた。エンジン吊りを終えて寄り添う石野貴之や、同県同期の湯川浩司。上條暢嵩もにこにこと丸岡に話しかけた。勝利者インタビューを終えたあとには、それまでおっかない顔をしていた森高一真がにっかりと目を細めて丸岡とコンタクト。マルマルモリモリ……はともかく、森高の笑顔は実は優しい。丸岡もいつものニャハハ笑いを浮かべていた。
それとすれ違うように、装着場へ速足で向かったのは今村豊。１Ｒは５着に敗れてしまった今村、今日は５Ｒに２走目が控えているのだ。中３レース、といっても、２Ｒ発売中は着替えがあったり、４Ｒ発売中にはボートを展示ピットに移動したりと、時間的な余裕はまったくない。だから、休憩する暇もなく、着替えを終えたらすぐ準備に走らないとならないわけである。ほんと忙しいわけだが、今村は元気いっぱい！ 若い！ 来月59歳を迎えるというのに、まるで年齢を感じさせないのだから、本当にレジェンドなのである。見習わなきゃ、ですね。
調整関係では、桐生順平が本体を外して整備室へ。その様子を同期の平高奈菜が見守る、なんてシーンもあったのだが、桐生の表情は決して暗くはなかった。本体整備はほかに瓜生正義、松本晶恵。整備室のなかにいるのは確認してないけど、装着場にある彼らのボートから本体部分だけ外されていたので、そうだろうと推測される。あと、上條暢嵩が整備室を出入りしているのを何度か見かけた、という感じか。２日目、選手の調整ピッチはしっかりと上がっている。（ＰＨＯＴＯ／中尾茂幸 ＴＥＸＴ／黒須田）
