BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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THEピット――順当

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 速報にもあるとおり、予選トップは上田龍星が11Rできっちり確定させた。3号艇で4着以上という条件は足色を考えればそれほど厳しいものとは思えず、それもあってか、レース前もそれほど緊張感はうかがえなかったし、レース後も会心の表情や大きな安堵というものは見当たらなかった。もちろん、喜びはあったことだろうが。

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 それでも、着替えを終えたあとに仲間にトップ通過を称えられると、「バクバクしてきました!」と口にしている。あと2回逃げればGⅠ初制覇、という状況に、緊張が生まれるのは自然なことだ。まずは明日、どこまで平静に戦い抜くことができるか。上田にとっては大きなチャンスであり、また試練でもある。

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 9Rを勝った磯部誠には、その時点では予選トップの可能性があった。それをどこまで把握していたかはわからないが、ピットに戻った磯部には大きな充実感が漂っていた。木下翔太に称えられると、掟破りのグラッツェ返し! 大上卓人には祝福を受けながら「タバコ1本ください」とねだられて、「ああ、どうぞどうぞ」と快く了承だ。福を分けたって感じ? 残念ながらトップは上田に譲ったものの、2位通過と貫禄を見せた磯部。揃って優出したとき、上田にとっては最も怖い相手となるのは間違いない。

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 トップ通過はなくなっていたが、勝てば準優1号艇が確定した12Rの木下翔太。3号艇の春園功太、5号艇の井上一輝次第では2着でも、という局面ではあったが、1号艇で出走とあらば必勝態勢ではあった。逃げ切り決めて、レース後はやはり力強い表情! 1マークはやや失敗したと口にもしていたものの、機力的な感触も悪くなさそうで、エンジン吊りの間は終始、爽快な空気を発散していた。
 節間4勝と絶好調の上田と、SG常連の磯部と木下が準優1号艇。まさに順当、という結果である。彼らの牙城を崩すのはなかなか大変そうだが……。

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 ボーダーの攻防は、終盤では10Rで山ノ内雅人が勝負駆けに失敗してしまった。3着勝負で、加藤翔馬と3番手争いに持ち込んだものの、競り負けて16位から圏外へと脱落。ピットにあがってきて山ノ内は、悔しそうに天を仰いだ。中田達也に声をかけられると、さらに顔を歪める山ノ内。こうなると、昨日の6着が痛かった……。

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 同じレースで、無事故完走で当確ではあったが、山ノ内以上に痛恨の表情を見せていたのは吉田裕平だ。予選突破を手にしたとはいえ、6着では納得できまい。結果次第では内寄りの枠を手にしていた可能性もあっただけに、得点率を7.20から6.17まで下げて外枠必至となった結果は、吉田を落胆させるものだったと言える。カポックと勝負服を脱ぎ、ヘルメットの水滴を拭っている間も、沈鬱な表情を見せていた吉田。準優は結果5号艇となったが、1号艇で失敗した昨年の分の鬱憤を、外枠から晴らしたいところだ。

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 11R、野中一平が井上忠政のツケマイにも動じずに逃げ切り快勝。これで得点率を5.83まで引き上げている。この時点では19位だった。水神祭では茶目っ気爆発の一平だが、勝って引き上げてきたときには何とも凛々しい。笑顔を見せるでもなく、安堵の息をつくわけでもなく、引き締まった表情を崩すことなく、黙々とエンジン吊りを行なうのだった。そのギャップがいいね!

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 その野中に、12Rの展示から戻ってきた宮之原輝紀がガッツポーズを見せた。それに気づくと野中は左手を軽くあげて力強くうなずく。この二人、仲良しなんですね。ただ、実は野中の命運を握っている一人が、この宮之原だった。3着以上の勝負駆けで、これを果たせば野中のランクアップを阻むことになる。そして宮之原はきっちりと3着。昨年に続いて予選突破を果たした。

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 もう一人、村上遼も3着条件の勝負駆け。12Rを迎えた時点では18位がこの村上だった。しかし、6号艇はさすがに遠かったか。なすすべなしの6着で、圏外へと去った。エンジン吊りを終えてヘルメットを脱いだ村上は、明らかに落胆した表情。悔しがるというよりは、落ち込んでいるというほうが適当な雰囲気であった。村上は来年もヤングダービーに出場する資格がある。この悔しさを忘れずに、来年の徳山でリベンジを果たしてほしい。

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 結果、18位に滑り込んだのは野中だ。しかし、野中の表情、素振りには何も変化なし。状況を把握していなかったのかな。ああ、取材の厳戒体制が恨めしい。ともかく、失うものなき18位通過だ。明日は上位勢に一矢報いる走りを期待しよう。(PHOTO/池上一摩 黒須田 TEXT/黒須田)