BOAT RACE ビッグレース現場レポート

BOAT RACE ビッグレースの現場から、精鋭ライター達が最新のレポートをお届けします。

1回戦8R~11Rのピットから

●8R

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 吉川元浩が逃げ切り快勝。このあと12Rのドリームマッチも制しており、足色はかなり良さそうだ。淡々とした振る舞いながら、機力に手応えは感じているはずだ。8R後はドリームマッチの準備を粛々と始めている。

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 桐生順平が2着。6号艇から前付けで3コースに入って、勝ち上がりの権利を得た。ピットに戻り、エンジン吊りが終わるとヘルメットをとり、すべての選手のもとに駆け寄って、頭を下げて回っていた。前付けをした選手の儀礼のようなものだ。もちろんルールに反しているわけではないから、そして負けたらおしまいの一発勝負だと誰もが理解しているから、どの選手も粛々と受け止めている。

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 ただ……桐生は12Rドリームマッチで転覆。途中帰郷となってしまった。これにより繰り上がったのは、このレース4着の羽野直也。道中3番手を走りながら抜かれての4着で、レース後は落胆した表情を見せていた。それが桐生の離脱で生き返ることに。経緯はどうあれ、残った以上は優勝を目指して奮闘してほしい。

●9R

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 王者まくり快勝! 江口晃生の前付けを入れて3コースから一撃を決めた松井繁。百戦錬磨の戦略が見事に奏功したということになろう。ボートリフトから上がってきた松井は、笑顔笑顔! 気持ちよさそうな表情というのはこのことだ。勝利者インタビューに向かう際には、途上で声をかけてきた徳増秀樹とグータッチ。王者ゴキゲンである。

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 ただ、もちろん相手への礼儀も欠かさない。ここには先輩二人、江口晃生と三角哲男がいて、まずその二人に駆け寄っている。森高一真にも歩み寄ったが、ここはワンツーを決めて笑い合った格好。守屋美穂にも右手をあげて礼を尽くしている。そして、まくりで沈めた篠崎仁志にも気遣いを見せる。篠崎は悔しさを隠しつつ松井と対峙している。

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 それにしても、篠崎仁志の6着大敗は驚きであった。イン信頼度が高く、そして地元水面。しかしながら、松井のまくりを浴びては致し方ないところか。エンジン吊りの間、仁志は顔を引きつらせながら、時に笑みを浮かべようとしていて、しかしそれはやはり痛々しい表情になってしまう。寄り添っていた篠崎元志も沈痛な表情で、まさかの大敗の痛恨が伝わってくるのであった。結果、1回戦1号艇で勝ち上がりに失敗したのは仁志のみ。

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 3着には守屋美穂。6コースから見事に勝ち上がりを決めている。敗退してしまった選手たちへの気遣いもあるのか、わりと淡々としていたレース後だが、女子選手仲間からの祝福には素直に頬を緩めていた。

●10R

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 うーん、無念。守田俊介がフライングに散ってしまった。ピットに「2番、フライング」のアナウンスがかかると、丸野一樹がとぼとぼとボートリフトへ。このレースには滋賀支部が目白押しだったので、吉川元浩や金子龍介の兵庫勢も集まってきた。彼らに出迎えられ、真っ先にピットに戻ってきた守田。時間が経ってからたまたますれ違ったとき、守田は「まあ、命まで取られるわけじゃないんで」とすでに切り替えた様子。いや、そんな言葉がでるということは逆に、悔いがまだ胸に残っているということかもしれない。

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 滋賀支部の明暗はさらに。遠藤エミと馬場貴也が3番手を争ったのだ。いや、西山貴浩を交えての2番手争いという趣もあった。結果、遠藤と馬場は写真判定となり、遠藤がハナ差先着。女子4人目の準々決勝行きを決めている。遠藤にも女子仲間が自然と集まり祝福。また、西山も健闘をたたえていた。昨年の第1回大会は、女子からは中谷朋子のみが準々決勝進出だった。今年は遠藤を含め4人が勝ち上がり。さらにもう一丁、上にのぼれ!

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 地元の西山貴浩が前付けからの2着! なんとか勝ち上がりを決めて、やっぱり嬉しそう! おどけた様子も見せながら、なんとか責任を果たせたとその喜びをしみじみ噛みしめているようにも見えた。

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 勝ったのは毒島誠。前付けにも守田のFにも動じることのない逃げ切りだった。昨年は1回戦から準決勝まで1号艇で3連勝だった。今年もその再現、いや、さらにその先を見通すためにも、好発進だ。

●11R

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 峰竜太が敗れた! しかも、愛弟子のまくりを浴びて! 原田幸哉が前付けで2コースまで奪った一戦、3コースを選択した上野真之介が師匠を豪快に沈めてみせた。これは上野にとって忘れられない一戦となったことだろう。

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 3着に残った峰に、上野はもちろん頭を下げに行っている。そこから二人は会話を始めた。それも、けっこう長い会話だった。レース直後、装着場でここまで長い会話の場面はなかなか珍しい、というくらい、二人は言葉を交わし続けた。いや、ほぼ峰が言葉を発し続けていたというほうが正解か。ヘルメットの奥には目を細めた表情が見えたが、峰の心中はどうだっただろう。敗れた悔しさか、愛弟子の成長をがっつり体感した喜びか。上野の控えめな笑顔がまた印象的だった。峰の言葉がいろんな意味で胸に沁みただろうか。(黒須田)