昨日の終盤の時間帯には、あれだけ整備室が盛況だったのに、今日は一転、実に閑散としているのだった。10R発売中に整備室にいた選手は、ギアケース調整の深谷知博のみ。これはSGらしい光景と言うべきなのかな、と思ったりした。ようするに、このクラスの選手は感触というのか、違和感がある箇所というのか、それを得るのが実に早く、そして素早く解消のための作業に取り掛かる。初日がそのピークなのであって、2日目後半にはもう次の段階に移っているというわけだ。もちろん、明日以降も変調があったり、プロペラだけではどうにもならないと判断したりすれば、すぐに本体などに取り掛かるのだろうが、少なくとも“第一段階”はとっくに終わらせているわけである。これがSGクラスの凄みのひとつと言える。
それにしても深谷は昨日から、実に忙しく動いている。本体を割るような整備はしていないものの、プロペラ調整、外回り調整などに駆け回っているのだ。今節、最も駆け足の姿を見ているのは間違いなく深谷だと思う。もちろん機力がいまひとつだからなのだが、深谷は初日にマイナス10点の減点を食らっていて、準優進出は相当に厳しい状況でありながら、決して諦めることなく調整に励んでいる。戦況も厳しいが、どこかで一発あるのではないかと僕は睨んでいるのだ。
11R発売中には、原田幸哉がモーターをいじっていた。原田は10R終了後の帰宿1便の集合場所に、いったんは通勤着に着替え、荷物を手にして合流している。ただ、管理の方とずっと話をしていて、結局帰宿の列から離れてピットに残った。そして、直後にモーター調整。ということは、あの会話は帰る予定だったけど整備したいからやっぱり残っていいですか、といったような交渉だったのではないかと推察されるわけである。予定を変えてまで気になる箇所を調整(もしくは点検)したかったわけで、それが明日、奏功する可能性があるのではないか、と思ったりして。
もちろん、プロペラ調整室は今日も盛況。12R出走の毒島誠は、いつも通りのギリペラだったし、西山貴浩も1便で戻ることなくペラと向き合っていた。そして、嗚呼、9RでFに散った新田雄史も。前半はコンマ02で残って、恵まれ1着。節イチのツキだと思われたのに、9Rは自身が勇み足をしてしまった。むーん。もちろん気落ちはあるものと思うが、それでも新田はレース後もペラ調整に励んで、ファイティングポーズをとりつづけている。明日からは外枠一本になるわけだが、今日の3Rは恵まれとはいえ6コースからの勝利だ。S慎重であっても、侮るわけにはいかない。
あと、今節は登番が上から4番目の深川真二も居残って調整していた。レースが早く終わっているベテランは総じて1便で帰宿することが多い傾向にあり、深川も1便の常連という印象だったのだが、今日は最後まで残っている。やるべきことがあれば、キャリアにかかわらず、レース場に残る。まあ、当然のことではあるんですけどね(あと、新兵はさすがに1便で帰るわけにはいかないし)。
さて、10Rは篠崎仁志が5コースまくり差しで快勝! 王者を差し切る一撃に、レース後の篠崎は充実感あふれる表情を見せた。エンジン吊りが終わり、篠崎が歩み寄った相手は篠崎。えーと、仁志が歩み寄った相手は元志、ですね。兄弟ツーショットが出来上がったのだ。装着場で立ち止まっての会話は1~2分続き、仁志の表情はさらに力強いものとなっていった。その前の9Rでは元志が逃げ切り勝ちを収めているし、今日はブラザーズにとってなかなか良い一日となりましたね。
11Rは峰竜太が3コースまくり差しで快勝。前半は6コースからいったんは逃げた守田俊介のふところを捉える差しを突き刺しているし(2着)、後半は快勝と早くも激走モードに突入!? ボートリフトが上がってくると、出迎えた仲間たちに対して峰は、ヘルメット越しにもハッキリとわかるほど、弾んだ声で応えていた。気分良さそうだなー。それを見て、突っ込まずにいられないのはもちろんニッシーニャ! なんだかんだと峰に声をかけ、峰はおかしそうに笑うのだった。なんだかんだで仲いいんだよなー、この二人。峰が突っ走れば突っ走るほど、ニッシーニャの突っ込みが炸裂する、そんな一節になるかも!?(PHOTO/中尾茂幸 黒須田 TEXT/黒須田)