トライアル第1戦ダイジェスト
ブロック差し
11R
①平山智加(香川)16
②小野生奈(福岡)20
③寺田千恵(岡山)21
④松本晶恵(群馬)14
⑤岩崎芳美(徳島)14
⑥遠藤エミ(滋賀)12
自力でレースを作りに行ったのは、4カドの松本だった。スリットから半艇身ほど覗くや、1ミリも迷うことなく舳先を左に傾けた。カド受けの寺田の艇がズコンッと浮き上がるほどの強引かつ猛烈な絞めまくり! この大会に懸ける意気込みを、初戦からなりふり構わず吐き出す猛攻だ。
そんな並々ならぬ殺気を肌で感じたであろう平山は、正攻法の先マイを捨てて早めにターンマークに寄りつつ、ほぼ全速でぶん回した。「たとえ差されるとしても、絶対にまくらせない!」という戦法で、短期決戦の点取り合戦であるトライアル(GP含む)ならではの“次善策”と言えるだろう。
寺田を飛び越え、ぽっかり空いた内水域に松本がまくり差しのハンドルを入れた瞬間、さらに内から埋伏の兵が飛びついた。スタートで凹んでいた小野が、これまた「引き波にハメられたらアウト」の気合で身体を張ってブロック。松本の勢いを殺しつつ、作用反作用の反動で前に進む。死に体のスリットからの、起死回生のブロック差しがものの見事に決まった。
全速の流れマイから態勢を立て直した平山が2番手を取りきり、レースを作った松本が3番手。混戦の1マークの末に2-1-4が出来上がったかに見えたが、そこからの遠藤の猛追が凄まじい。ほぼすべてのターンマークを最内から小回り旋回で追走し、何本もの太い引き波を超えながら松本ににじり寄る。
そう、このレースでもっとも機力的に高く評価すべきは、遠藤の回り足を含めた出足系統だろう。小回りを繰り返しながら一度もキャビることなく、水をしっかり噛んで前進し、3周1マークでついに松本(思いきり前の引き波をなぞってしまったのも痛い)を追い抜いた。ハナから自力でレースを作った松本ではあったが、パワー面では全体的にやや劣勢と言わざるを得ない4着だった。
そして……私がストレート足に期待した岩崎18号機は、見せ場すら作れずに6着大敗。昨日の前検に続いて展示ワースト時計(12Rの細川と同タイムだが)でもあり、明日の5号艇は今日よりも人気を落とすことだろう。この一戦をもって見限るかどうかは、今は言及しないでおこう(←見限る気ゼロ?)。
完璧なリハ
12R
①守屋美穂(岡山)07
②平高奈菜(香川)14
③大山千広(福岡)16
④細川裕子(愛知)21
⑤香川素子(滋賀)14
⑥田口節子(岡山)13
1マークが乱戦となった11Rとは裏腹に、こちらは大本命の守屋が独壇場のイン逃げを決めた。↑御覧のスリットラインで守屋だけが半艇身ほども突出しては、他艇の出る幕はない。平高の差しも大山のまくり差しもまるで届かず、バック中間で一人旅を決め込んだ。今日の最大の勝因はスタートであり、守屋66号機の機力云々はほぼまったく分からない独走でもあったが。
先に書いてしまうと、明日の守屋も同時刻の1号艇をGETした。こうなると、今日は貴重な1勝のみならず、明日への理想的なリハーサルを済ませたとも言えるだろう。つい先日の峰竜太のように、逃げ逃げ20点で他を圧するアドバンテージを築くのか。極端な風が吹かない限り、その可能性はかなり高いと思う。
2番手はすんなり差した平高が順当に獲りきったが、パワー面で特筆すべきはもちろん5コースから3着に粘り込んだ香川素子だ。前節の激しい転覆でクランクシャフト交換、その後は明らかに足落ちした12号を引いてしまった香川は、緒戦の前に勝負に出た。【ピストン2・リング4・シリンダケース】、いわゆるセット交換だ。
このギャンブルは、ほぼ間近いなく「大当たり」だった。スリット近辺の行き足も軽快だったし、そこからのまくり差しは前がドン突きになって減速を余儀なくなくされたものの、ターン出口から出て行く出て行く! 2艇身以上も先行した平高にグングン迫り、平高より先に2マークを旋回。この窮屈な小回りが流れるかと思いきや、サイドがグググッッ(高橋アナ流)と掛かって前に突き進んでいった。冷静に差した平高には届かなかったとはいえ、もはや現状の12号機は「足落ち」とか「壊れ物」とか言う下馬評とは別物のモーターと肝に銘ずるべきだろう。あるいは、浜名湖さんが去年の“あのモーター”のセットを、この大会にために保存していたのかも?(笑)
4番手から大山があの手この手で香川を揺さぶり、必死でにじり寄ったがまるで届かない。この追撃を封じる足取りにも、かなりの余裕を感じさせた12号機だった。大山は悔しい4着とはいえ、レース後に引き当てたのは白玉。2カ月半に及ぶF休みの直後、しかもまだ消化しきっていないF休みを残しての1号艇は、手放しで喜べるほどの境遇ではないだろう。レース勘とスタート勘、度胸と開き直り。今風に言うなら、まさに全集中の呼吸で乗りきるべき“難敵”だと思う。
シリーズTOPICS
やはり、来たっ!
一方のシリーズ戦は早くも予選3日目が終了。全34レースを走り終えての暫定トップは、なんだかんだ山川美由紀19号機!! 今日は5Rで実にらしい豪快な3コースまくり(全速の強ツケマイ)で10点を積み上げ、さらに後半9Rはインから影をも踏ませぬ盤石の逃げで連勝を飾った。気づいてみれば、“定位置”と呼ぶべきトップに君臨だ。
正直、相棒19号機の気配は大方が期待したほどのモンスターパワーとは思えない。2日目に本人も「ハードルを上げ過ぎたかも」と苦笑していたが、スリットから突出して楽まくり一撃というパンチ力はなく、現状は全部の足がちょっとずつ強めのバランス型と鑑定している。それでもあれよあれよのトップ浮上は19号機の底力であり、女傑・山川がしっかり乗りこなしている証でもあるだろう。明日の山川19号は、最後の難関と呼ぶべき7R6号艇の一発勝負。もちろん1着=トップ確定だけに、枠なり6コースと決めつけるのは早計な選手ではある。
山川に続く暫定2位は、地元の山下友貴! 前検の私は相棒36号機のストレート足に惚れ込んだが、いざ実戦では引き波を超えるレース足も軽快そのもの。今日も前半4Rはスリットから力強く飛び出し、内3艇を猛烈に圧迫してからシャープな差しハンドルでバック先頭に突き抜けた。
後半8Rは5コースから展開に恵まれなかったものの、水野望美との2周に及ぶ熾烈な3着争いを制してオール3連対をキープした。初日はやや控えめのA【出A・直A】としたが、今は文句なしのA+【出A+・直A+】でシリーズトップ級のバランス型パワーと見立てていいだろう。明日の山下は8R1号艇の一発勝負! 直前の7Rで暫定トップの⑥山川が不覚を喫するようなら、イン逃げ=予選トップの可能性は十分だ(3位の海野ゆかりが1・1着なら逆転されるが)。
(photos/チャーリー池上、text/畠山)