BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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トライアル第3戦ダイジェスト

3周サバイバル

11R
①寺田千恵(岡山)15
②平山智加(香川)12
③香川素子(滋賀)12
④遠藤エミ(滋賀)14
⑤松本晶恵(群馬)24
⑥大山千広(福岡)21

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 平山が激辛の差し抜けで1枚目のファイナル切符をGETした。コンマ12のトップタイスタートから、イン寺田をどんどん突き放す。今日の流行りである2コースジカまくりもありえる隊形になったが、1マーク手前で平山は力を溜めた。外をしっかりブロックし、寺田を窮屈な態勢から先に回らせての鋭角差し一発! スリットを過ぎてから、脳内で描いたとおりの戦術を成功させたに違いない。もちろん、そのファクターには強いホーム追い風もインプットしたことだろう。冷静にして緻密、つまりは平山智加らしい隙のない差し抜けだった。

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 2番手はインから残した寺田が取りきり、2マークを回った直後は先頭の平山をあわや差しきるか、というレベルまで脅かした。ただ、そこからの行き足は平山が上。外からスーーッと伸ばして寺田の舳先を振り切り、ここではっきりと決着をつけた。
 2-1隊形が固まっても、このラストバトルの醍醐味はまったく色褪せない。むしろ、ファイナル勝負駆けはここからが正念場だ。道中3番手をキープした遠藤は、複雑な胸中だったことだろう。このまま3着なら初戦から333で21点フィニッシュとなる。654コースからすべて舟券に絡む活躍は見せたものの、この333=21点は最弱のブラックジャック。遠藤は離れた3番手から必死に前を追い続けたが、ついぞ寺田には届かず寒い立場で12Rを待つ身となった。

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 さらにその後方の勝負駆けがまた凄まじい。最低でも5着、できれば4着が欲しい香川と大山、それに松本を加えた3人が、くんずほぐれつの鍔迫り合いを繰り広げた。その戦いはターンマークごとに順位が入れ替わっていたが、3周1マークでもっとも不利な態勢に思えた大山が外から外へのウルトラ全速ターン!! その旋回スピードは強い追い風をも切り裂き、あっという間に4番手を取りきった。千広にはこれがあった。
 そしてそして、これまた重要な5着争いは松本が捌ききって、香川は悔しい6着フィニッシュ……結果論で言うなら、ここで5着なら遠藤を着順点で上回る21点でファイナルに滑り込んでいた。6人の着順と得点を整理しておこう。
①平山25点②寺田19点③遠藤21点④大山22点⑤松本15点⑥香川20点
 この時点でのファイナル当確は、平山と大山のふたりのみ。

逆転の追い風ホームラン

12R
①小野生奈(福岡)02
②平高奈菜(香川)01
③細川裕子(愛知)07
④田口節子(岡山)17
⑤守屋美穂(岡山)11
⑥岩崎芳美(徳島)16

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 昨日の守屋のコンマ01に続いて、今日も内の2艇がスリットのキワまで踏み込んだ。小野が02で平高が01!! 選手自身もファンも施行者も肝を冷やす電撃スタートだったが、なんとかギリギリ事なきを得た。

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 勢い、2艇だけが突出しての一騎打ち。小野が逃げて、平高が差して、バック直線は舳先が届くかどうか微妙な態勢だ。そこで平高の背中を押したのは、もちろん終日吹き荒れた強風(バック向かい風)だったろう。そこに初戦から安定度抜群のレース足がどこまで後押ししたか、スリット裏でしっかり舳先をねじ込み、さらに深々と突き刺して2マークを先制。ここで平高の10点増し=トータル28点が約束された。

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 こうなると、ファイナルのトップ争いは守屋の着順に託される。守屋が2着なら守屋、3着以下なら平高。私はすぐに守屋の所在を探したが、はるか後方の5着争いに奔走している。実質、この段階で平高のファイナル1号艇は不動のものとなった。

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 残る焦点は、ボーダー争いだ。2-1態勢でほぼ決まりという流れの中、2番手の小野に猛チャージをかけ続けたのが田口だった。そう、このレースの流れを踏まえて、ガチの勝負駆けは田口ひとりで、その絶対必要条件は2着! 2着ならば21点で最弱カードを握っている遠藤を超える。田口か遠藤か。鬼気迫る勢いで追って追って、捨て身の切り返しも繰り出して、突き放されてもまた追って、それでも田口の追撃は小野を捕えきれなかった。すでにレースを終えている遠藤は、どんな思いでこの田口の猛チャージを見つめていただろう。3着で力尽きた田口がゴールを通過し、そこで明日のファイナリスト6戦士が確定した。このレースの着順と得点はこうだ。
①平高28点②小野25点③田口20点④守屋26点⑤細川13点⑥岩崎13点

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 グランプリの峰竜太と同じ1・1・5号艇で臨んだ守屋は、峰(24点)よりも得点を伸ばしつつ1号艇にはなれなかった。その流れがファイナルそのものをどう変動させるのか。そして、一度も1号艇がないままトップに躍り出た平高は、明日の1号艇をどう戦うか。初のビッグ戴冠への思いが、どれだけ自然にシンクロするか。6人のさまざまな想いが錯綜するであろう明日のファイナルは、一筋縄ではいかない混戦乱戦になる可能性を秘めている、と思う。(photos/チャーリー池上、text/畠山)