BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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準々決勝ダイジェスト

「3着以内」の押し引き

9R
①石野貴之(大阪)07
②白井英治(山口)06
③原田幸哉(長崎)09
④柳沢 一(愛知)04
⑤西山貴浩(福岡)07
⑥野中一平(愛知)F+01

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 大先輩に胸を借りる立場の野中が、目いっぱいのスタート勝負でわずかに勇み足。フライングを是とする私ではないが、若き一平にとっては「切っても止む無しの大一番」だからして、まったくの無駄切りではなかったと思っている。

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 さて、スリットで突出した野中は自力攻めを自重しため、大勢にまったく影響がないまま内5艇が1マークを交差旋回。2コース白井の差しがしっかり届いたかに見えたが、石野がやんわり内へ内へと絞めて白井のマイシロを消してゆく。

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 これが決勝戦なら、白井は舳先を突っ込んだまま2マークを先取りしただろう。まんま優勝か、石野と大競りでぶっ飛びか、という両極端な展開になったはずだ。だが、この大会は「3着さえ取り続ければ最後はアミダの天任せ」という特殊なルールに支配されている。2マークの手前で白井が舳先をスッと引き、石野の注文に応じたところで両者の準決勝進出が約束された。
 石野の勝因をひとつだけ挙げるなら、やはりコンマ07のスタートか。昨日も今日も石野に詫びるしかないのだが、よくぞゼロ台半ばまで踏み込めたものだ。この連日の胆力が、来るべき“本番”へのリズムアップにつながる可能性も念頭に置くとしよう。

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 この大会でもっとも重要な3着争いは、西山vs柳沢の一騎打ちムード。2周1マーク、柳沢が絶品の差しハンドルで2艇身ほど突出。足色もしっかりしていて、幸哉師匠の待つ大村クラシックにまた一歩近づいたか、と見ていたところ、2周2マークでターンマークを大きく外して西山に再逆転の差しを許してしまった。無念の脱落。
☆サバイバル勝者=石野・白井・西山
★サバイバル敗者=柳沢・原田・野中

忍者の不覚

10R
①辻 栄蔵(広島)26
②瓜生正義(福岡)13
③平本真之(愛知)12
④篠崎仁志(福岡)10
⑤湯川浩司(大阪)13
⑥永井彪也(東京)13

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 すべての引鉄は、↑御覧のスリットラインだった。インの辻だけがドカ遅れで、外5艇は美しいまでの横一線! 5人の力量を加味すれば、これはもう5艇立てのレースに近い。

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 まずは瓜生が外を牽制して差し場を消しつつ、じんわり握って1マークを先制。ほぼほぼイン逃げの航跡だ。これをマークした平本は、死に体・辻に当たらないよう丁寧に最内を差して2番手確保。ほぼほぼ2コースの航跡で、その外から握って3番手をキープした仁志は通常の3コースの航跡。つまりは“幽霊船”の如き辻を除けば【逃げて差して握って】、極めて穏当な①-②-③決着のようなレース展開だった。

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 辻のドカ遅れの原因は定かじゃないが、大一番を控えた身としてモチベーションの難しいイン戦であったことは想像に難くない。正直、私は「こうした事態が起こるとしたら、それは大阪支部の石野ではないか」などと思っていたのだが、ひとつ後のレースで起こってしまったわけだ。後輩たちにボコボコに殴られた辻は、もちろんすぐに気持ちをリセットして次なる舞台に視線を向けたに違いない。
☆サバイバル勝者=瓜生・平本・仁志
★サバイバル敗者=湯川・永井・辻

驚愕のクロスカウンター

11R
①濱野谷憲吾(東京)04
②山口 剛(広島) 10
③遠藤エミ(滋賀)  06
④上野真之介(佐賀)09
⑤茅原悠紀(岡山)  09
⑥魚谷智之(兵庫)  18

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 ◎遠藤のアタマ舟券をしこたま買っていた私にとって、無駄に脳汁を垂れ流す残酷な1マークとなった。枠なり3対3から、2コースの山口がやや凹んだスリット隊形。さらに3コース遠藤がグイグイ出て行くから脳汁の止めようもない。

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 まくられたら3着が危うい山口が舳先ひとつで抵抗したが、その勢いはケタチ。汁まみれの私の脳内には、はっきりと遠藤が濱野谷を引き波にハメ込む光景が見えた。単なる贔屓目ではなく、本当にそれくらい完璧なツケマイだったはずだ。

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 だがしかし、応戦した憲吾のブロック旋回と出足~行き足が、私の想像をはるかに上回っていた。そう、今年の憲吾はここが違う。一節の早い段階でターン出口の押し足~行き足に活を入れ、強力布陣の臨戦態勢を整える。足に自信があるから、ターンも速く力強く若々しい。今日もかなり苦しい態勢から俊敏かつ鋭角に旋回し、ぴったりと艇を合わせきった。ちょいと頼りなかった前検レベルの足だったら、おそらく瞬時に呑み込まれていただろう。2日目にして、憲吾仕様に仕上がったのだ。悔しいことに(涙)。

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 バック直線は2艇がぴったり並走となって、早々に準決勝入りが約束された。そこから5艇身以上も千切れた3番手争いはタークマークごとに順位が入れ替わる大乱戦となり、1周バックで最後方だった茅原が捌きに捌いて大逆転の3着をもぎ取った。昨日同様、回り足を主体にライバルよりも機力の面で上回っているように見えた。
☆サバイバル勝者=濱野谷・遠藤・茅原
★サバイバル敗者=山口・上野・魚谷

ラッキーパンチと言わせない!

12R 並び順
①峰 竜太(佐賀)13
⑤深川真二(佐賀)21
②丸野一樹(滋賀)14
③池田浩二(愛知)19
④毒島 誠(群馬)19
⑥仲谷颯仁(福岡)23

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 同県の後輩が1号艇だろうが、もちろん深川はオラオラ動いた。からつで何度も何度も対戦している峰も、勝手知ったる大回りでこの難敵を出迎える。他県の4人は「勝手にどーぞ」と看過したため、佐賀のふたりはそれなりに折り合って100m以上の助走距離を確保した。インの峰にとっては十分すぎる間合い。

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 スリットでは2コース深川がやや凹んだが、トップスタートの峰がこれぞまさしく「影をも踏ませぬ光速インモンキー」で他をぶっちぎった。逆に後手を踏んだ深川は、複数の引き波にボコられて失速。すかさず丸野&池田が差して握って2、3番手を確保、GP軍団の1~3着独占が濃厚になった。

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 だがしかし、そんなチームGPに起死回生の一撃を投じたのは、6コースで超人気薄の仲谷! バック5、6番手だった仲谷は、1周2マークで池田の舳先をかすめるような早くて速い小回りで大逆転。その後も池田の猛追をギリギリの防御で交わし続け、昨日の1回戦に続く3着で次なるステージへと上り詰めた。

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 昨日も最終ターンマークでミラクル大逆転の差しを決めた仲谷だったが、2日連チャンとなれば偶然やラッキーでは片づけにくい。しかも今日の敵は天下の池田浩二だからして、下克上を成し遂げても不思議じゃないリズム&パワーを保持してると考えた方がいいだろう。明日も6号艇の颯仁クンだが、3着にさえ入ってしまえばアミダくじ。勢い、真っ白なプレートが転がり込んでも、もはや驚くファンはいないだろう。
☆サバイバル勝者=峰・丸野・仲谷
★サバイバル敗者=池田・深川・毒島
(photos/シギー中尾、text/畠山)