ゲンコーの珠玉作
10R 並び順
①魚谷智之(兵庫)17
②西島義則(広島)14
④石川真二(福岡)13
⑤赤岩善生(愛知)09
③吉川元浩(兵庫)03
⑥徳増秀樹(静岡)06
やはり、波乱の種は石川のピット離れだったか。スタート展示ではほとんど飛ばず、ならばと元浩は3コースを主張した。おそらく元浩は「石川さんが飛ばなかったらコース死守、飛び越えられたらダッシュ」と決めていたのだろう。
いざ本番のピット離れは後者だった。石川に飛び越えられた元浩は、慌てることなくそろーーり艇を流す。赤岩はスロー専科、徳増は特訓からダッシュを決め込んでいるから、5カドは指定席。スロー勢をやんわり圧迫してから、元浩は颯爽と舳先を翻した。最終隊形は多くの人が想定したであろう【124・5/36】。
そして、ここからは元浩の真骨頂だ。5カドを獲りきったからには、スタートから自力で攻め切りたい。妥協のないコンマ03、突出スタート! 100m起こしのスロー3艇は10台の半ばだから、太刀打ちできる隊形ではない。
一撃まくりか。
見ていたらば、そうではなかった。4コースに構えた埋伏の兵・赤岩がこのまくりを受け止め、先に攻めた。赤岩は特訓から徹底的に「150mのターンマーク起こし」だけを繰り返し、質の良いスタートに磨きをかけていたのだ。あっという間に内3艇を呑み込む。
そして、先を越された元浩は赤岩の鬼気迫る先攻めを見ながら、冷静にスピードを落とした。赤岩を行かせて差して、バック先頭に。「損して得とれ」ではないが、ピットアウトから1マークまでグランプリウイナーの余裕と貫禄を実感させる“傑作”だった。
1着・元浩、2着・赤岩。
長州ラインの咆哮
11R
①濱野谷憲吾(東京)07
②田村隆信(徳島) 12
③寺田 祥(山口) 04
④谷村一哉(山口) 04
⑤服部幸男(静岡) F+01
⑥中澤和志(埼玉) 08
勝ったのはまたしてもカド、しかも3カドに引いた寺ショーだった。スタート展示は“死んだふり”でスロー3コースに構え、いざ本番だけ地元の絶対エースに牙を剥いた。しかも、コンマ04の猛烈スタート!
寺田迎撃で全速スタートを目指したであろう田村は、やや溜めすぎてのコンマ12。この時点で勝負あった。カドから一気に田村を飛び越えた寺田は、勢いまんまインの濱野谷まで叩き潰した。長州のまくり侍の心意気、ここにあり。
そして、この奇襲にぴったり同じスタートで連動したのが、同県にして1期後輩の谷村だ。8R後の特訓では【124/356】などという不思議な入れ替わりを見せていたふたりだが、いざ本番では文句なしの「阿吽(あうん)の呼吸」。
――寺田さんが絶対に行ってくれるから、同じ起こし同じタイミングでくっ付いていれば優出できる。
そんな谷村の脳内思考が見て取れるような完璧なマーク戦だった。
鮮やかな山口センターラインが完成した一方で、違う意味での波乱も勃発していた。5コース服部の勇み足。初日から連勝でシリーズを盛り上げた浜名湖のレジェンドは、意外な形でV戦線から消え去った。本人としては忸怩たる思いが残るだろうが、期末のF1。今日の気持ちをリセットして多摩川オールスターに向かってほしい。リズム的には明らかに上り調子なのだから。
1着・寺田祥、2着・谷村。
王者の舞い
12R 並び順
①菊地孝平(静岡)07
②齊藤 仁(東京)14
③上平真二(広島)18
⑤松井 繁(大阪)17
④金田 諭(埼玉)27
⑥原田幸哉(長崎)16
松井がじんわり動いてスローの4コースへ。最終隊形はスタート展示と同じ1235/46で落ち着いた。それぞれが織り込み済みのポジションだったせいか、スタ展よりも穏やかに進行してスロー3艇の起こしは110~120m。十二分に戦える助走距離だ。
それでも、ここまでの流れから5カド金田のスタート攻勢が脅威に思えたが、力を溜めすぎてコンマ27のドカ遅れ。一方、インからただひとりゼロ台まで踏み込んだ菊地は、そのまま1マークを先取り。影をも踏ませぬ完璧なインモンキーでファイナル1号艇を確定させた。強い。出口の足色も盤石ムードで、明日も同じくらいの助走、同じタイミングで突き進めば、45歳での若き名人誕生が濃厚だろう。
もちろん、1着が決まっても準優は終わらない。焦点の2着争いは2コースから差した齊藤vs4コースからパワフルに握った松井の一騎打ち状態になった。内からマウントを取れる齊藤が有利なのか、と見ていたバック直線は外・松井の行き足がすこぶる目立つ。
そのまま1艇身近いリードを保ったまま2マークに辿り着き、ここも松井がパワフルな握りマイで齊藤を一気に突き放した。昨日までの松井39号機は「出足~行き足主体に悪くはないけれど」的な見え方だったが、今日は行き足~伸びの部分までパンチ力が補填された見え方だった。
明日も同じ艇番の松井(外にはスロー専科の赤岩!)が、この上昇パワーをどう生かしきるか。スローからじんわり出て行った王者の進軍は、明日もまったく軽視できない存在とお伝えしておこう。
1着・菊地、2着・松井。(photos/シギ―中尾、text/畠山)