BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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準優ダイジェスト

5コースの達人

10R
①宮地元輝(佐賀)11
②毒島 誠(群馬)11
③佐藤 翼(埼玉)14
④稲田浩二(兵庫)09
⑤平本真之(愛知)13
⑥桑原 悠(長崎)18
進入123/456

 昨日の連勝でもぎ取った1号艇⇔インコースの利をフル稼働して、宮地がキッチリ逃げきった。例によってスタートは絶品のコンマ11、外から誰も仕掛けきれない展開になってしまえば、インで負ける漢ではなかった。「唯我独尊・おいどん逃げ」とお伝えしておこう。機力的には「準優の中にはいれば中堅レベル」と鑑定しているのだが、たとえば3号艇の3コースでも十八番のまくり差しを突き刺すレベルの出足はあると思っている。

 スリットでもっとも惜しかったのは地元の稲田だったか。ピットに帰還するほど奥深くまで艇を引き上げ、優出36回・11Vのドル箱水路をひた走る。スリットで半艇身ほど覗いて「あわや!?」の期待を抱かせたが、カド受け佐藤の伸び返しも素晴らしく、待って待っての二番差しを強いられた。もう数10センチでも突出すれば、十八番のイナダッシュまくりを見ることができただろう。勝ったかどうかはともかく。

 そして、この稲田の気合と躊躇を、外からガン見していたのが5コース平本だった。「稲田先輩が握ればマーク差し、二番差しならそれを叩いての全速まくり差し」の二者択一だけを考えていたであろう平本は、稲田がわずかに減速した瞬間に握った。
 今まで何度も見てきた、平本の獰猛な5コースまくり差し。先に「二者択一」と書いたが、おそらく平本の中では今日の実戦譜を大本線の戦術として想定していた。そう確信できるほどの早くて速いまくり差しだった。

 宮地が逃げて、平本が差し抜いて……ただ、それで準優は決まらない。実戦足の強い佐藤と百戦錬磨の毒島があの手この手で追いすがる。ド迫力の2着争いではあったが、毒島には道中でのわずかに劣勢なターン回りが、翼には1マークから後手後手に回ったビハインドが響いた気がしてならない。

 ちなみに、平本の相棒10号機は今節流行のセット交換24基に属さないが、前節で佐々木康幸がセット交換を施した“隠れ交換モーター”でもあった。とりあえず「40号機は今節のセット交換組に近いモーター」と覚えておいて損はないだろう。
 1着・宮地、2着・平本。

5日目の鬼足

11R
①土屋智則(群馬)02
②山口 剛(広島)10
③池田浩二(愛知)04
④松井 繁(大阪)04
⑤吉田裕平(愛知)03
⑥菊地孝平(静岡)04

 結果から先に書くと①-③-②の本命決着。早々に縦長になって特筆すべき要素が少ないようだが、ひとつだけ真っ先に書くべきことがある。
 今日になってセット交換に踏みきった池田62号機の、とんでも過ぎる追い上げ足!
 そりゃ艇界きっての名手、あれくらいの猛追は何度も見てきたが、今節の62号機には昨日まで一度だりともあんな迫力を感じたことはなかった。後続艇を的確な捌きで凌ぎきり、ごまかしごまかし上位着に粘り込む、というレースばかりだった。

 それこそが池田浩二という男の恐ろしさなのだが、今日はどうだ。かなり強めの足と見ていた山口35号機との2着争いを、バック直線の外からグイグイ追い抜き、2マークは山口を先に行かせて余裕たっぷりの一撃差し。その差しは山口とのケリをつけるだけでなく、逃げる土屋との距離も一気に圧縮する鬼差しでもあった。

 その後も追って追って、少しでも土屋にミスがあれば一気に抜き去るような勢いで追い続けた。ガチで土屋は息つくヒマもなかっただろう。そして、改めて池田浩二の怖さを痛感しただろう。今日の場合は池田62号機と呼ぶべきか。

 池田のことばかり書いてしまったが、これは同時に「今節のセット交換旋風」にも言及している。なぜこんなに「交換モーター」と「純正モーター」(セット交換しなかった選手たちはこう呼んでいる)でパワー差が生じるのか。よく分からんので現時点での憶測・推論は控えるが、とりあえずボートレースファンは「セット交換した選手のほとんどが別物のように出る」と肝に銘じるべきだろう。少なくとも、明日の12Rまでは。
 1着・土屋、2着・池田。

濃厚すぎた攻防

12R
①徳増秀樹(静岡)13
②桐生順平(埼玉)11
③長田頼宗(東京)08
④上條暢嵩(大阪)08
⑤西村拓也(大阪)07
⑥関 浩哉(群馬)08

 3連単10万6460円。
 1Rから11Rまで1号艇11連勝、最高配当41倍という超本命サイドの流れは、最後の大波乱のフラグに過ぎなかったのか。そして、この大波乱を演出したスパイスの一滴には、やはり「セット交換」も混じっていた気がしてならない。

 今節、セット交換をせずに予選トップを取りきった徳増は、ややスタートで後手を踏みつつ、しっかり1マークを先取りしてバック先頭に立った。後続から5コース西村が鋭いまくり差しで迫ったが、並の相手なら軽く突き離せるほどの間合いに見えた。なんたって、徳増26号機は自力でシリーズリーダーを掴み取った人機なのだから。

 だが、出口からのふたりの相関関係は、まったく真逆の風景を映し出した。ジリジリと伸びる西村が瞬く間に舳先を突っ込み、突き刺し、貫き通す。そして2マークの先マイから一気に徳増を突き離す。恐ろしいほどのパワー差!

 これが、セット交換をしなかった徳増の限界ということなのか……??
 簡単に言及しちゃいけない領域だとは思うが、この半周を見た私は正直にそう思った。2周目の西村50号機は、何事もなかったかのように“一人旅”を決め込んだ。そのはるか後方では、なんとか2着に残したい徳増と大阪ワンツーを決めたい上條が猛烈な2着争いを繰り広げた。ともにセット交換をしていないふたりの攻防は熾烈を極めた。最終ターンマークは一歩も引かない大競りとなり、わずかに内の上條が体を残して優出を決めた。

 1周2マークと3周2マークで大阪コンビに競り負けた徳増は、さらにバランスを崩して長田にも追い抜かれた。凄絶な最期。徳増本人には何の慰めにもならないだろうが、1マークから最終ターンマークまで、濃くて濃くて濃すぎるほどの大熱戦だった。
 1着・西村、2着・上條。
(photos/シギ―中尾、text/畠山)