いやはや、今日の序盤の時間帯は間違いなく節イチの猛暑! 試運転からあがってきた菊地孝平がもう、グッタリなのである。汗だくだし、息も荒いし、試運転だけでも相当に体力を使う、そんな気候。暑いっすね~、と声を掛けると、菊地は速攻で作り笑顔。
「いーや、ぜんっぜん! よっゆーですっ!」
その言い方がもう余裕じゃない(笑)。で、菊地は別に休憩のために上がってきたのではなくて、すぐにペラを外してペラ室へ向かったのだから、凄すぎるのである。ペラ室は冷房が利いてるだろうから、仕事しながら少しは回復させてください!
そんな気候だから、磯部誠が顔をしかめながら言うのである。
「クロちゃん、ピットに一日いたら10kgくらい痩せるでしょ」
こちらは身体を使うと言えばせいぜいピット内を歩くくらいなのだが、それでも汗だく。試運転をしていた磯部はもっと汗だくである。たしかに痩せそうだが……どうしても呑んじゃうからね~、夜は。むしろ暑いからこそ、夜の酒が進む。よって痩せない。と返したら、磯部はガッハハーと笑って去っていったのであった。この暑いなかで少しは笑っていただけて何よりです。
そんな暑さなのに、佐藤翼は試運転を切り上げ、係留所から軽快な駆け足でピットへと上がっていくのだから、もう脱帽です。挨拶をすると、実に爽快に返してくる佐藤。そういえば、レース場入りの時、「涼しいですね~」って言ってたっけ……。それでもさすがに今日は暑いはずなのだが、まったくモノともしていない様子なのが、やっぱり凄すぎだと思いました。
といった具合に、猛暑に耐えつつピットにいたわけだが、3R発走前に2マーク奥のほうの空が不穏な色になっていた。どす黒い雲が湧き出ていたのだ。それを見て、峰竜太が「わっ、あの雲、こっちに来るのが早い!」と指を差した。た、確かに……。峰は続ける。「昨日の予報で、福岡のほうは雷雨だって言ってたからね。長崎は大丈夫だと思ってたけど、やっぱり来るか~」。隣に座っていた福来剛が、へぇ~とうなずいた。いやー、峰竜太はペラやモーターだけでなく天候にも詳しいか~。というか、ボートレーサーというのは天候をこまめにチェックしているんですよね。それがモーターの気配に影響するし、ひいては調整の方向性などを左右したりもするから。だから、峰だけでなくほとんどの選手が「今日は夕立が……」と把握していたと思う。
と言っているうちに3Rが終わり、選手たちはエンジン吊りのため、ボートリフトへと向かい出した。そのとき、僕の禿げ頭に冷たいものが! 来た、雨が降ってきた~。と騒いでいたら、田村隆信が「マジで!?」。ふさふさのあなたにはまだ感じられてないかもしれないけど、確かに来ました。「えーっ、もうちょっと待ってくれ~~~」。田村は悲鳴をあげながらリフトへと駆け出したのであった。田村は6R1号艇。雨降って気温が下がって、では気配も変わりかねないし、風も強くなりだして厳しいインになることも……。6Rまでに雨が上がって、天候回復になることを陰ながら祈っております……。ちなみに、4R発売中に猛然たる風が吹き荒れ、強烈な雨が落ちてきました。これを書いている現在は少し落ち着いていますが、このあとどうなる!?
さて、1R大敗の森高一真が、力弱い声色で言うのである。
「クロちゃん、大村の駅に行って、出足買ってきてくれや」
はいぃ!? 出足を? 買ってきてくれって!? 大村駅に行けば売ってるの!?
「おぉ、改札出て右に食堂があるやろ? あそこに売ってるわ」
マジか!? 了解、安く買えるんなら買ってくるけど。
「それがなあ、けっこうするんや……」
そうなの?
「600円くらいや」
それくらいならお安い御用。買ってきますわーっ!
というところで二人で爆笑。ようするに、森高は壊滅的に出足が乏しいというわけである。売ってるんなら買いたいくらい、というほどに。出足はもちろん売っていないので、森高はそれから本体整備に取り掛かった。それでなんとか出足が見つかればいいのだが。なお、本当に売っていたとしても僕が買ってきて森高に渡したら整備違反だと思います(笑)。(PHOTO/中尾茂幸 TEXT/黒須田)