森高一真がニヤニヤしながら、齊藤仁を指さして言うのである。「緊張してるわ」。もちろんそうは言わなかったけど、ニュアンス的には「一丁前に」と続きそうな言い方だった。ルックスやキャラはまるで違うこの二人、実はプライベートでも仲良しなのである。だからそういう物言いを仁さんも笑って受け入れる。いや、緊張するでしょ、準優１号艇。しかも齊藤にとってはＳＧでの準優１号艇は初体験なのである。マスターズ世代になったといっても、特別な戦いなのだ。まあ、これは森高流の緊張の解きほぐし方なのだろう。それを齊藤もよく理解しているし、気を遣われるよりも緊張していると指摘されたほうがそれと向き合うことができる。そして、少しは和らいだのだと思う。仁さん、「ちょっと早すぎるけどね」と言って笑った。まだ１Ｒ発売中だからね（笑）。
何度も経験していたとしても、やはりプレッシャーが皆無ということはないだろう、ＳＧ準優１号艇は。菊地孝平も、早くもゾーンに入っているという雰囲気と見える。もともと劣勢だった機力をよくぞ立て直したと思うわけだが、だからこそまだまだ油断はできないという部分はあるのではないか。もっとも、この日の過ごし方を知っているのも確か。10Ｒまでには万全に持っていくことだろう。
では、予選トップ通過の山口剛はどうだろう。一昨年のチャレンジカップで経験しており、準優は逃げ切ったが、優勝戦は６号艇の深谷知博に敗れている。嫌な記憶が残ってはいないかと心配にもなるわけだが、まあそれを振り払うのは明日でいいか。早い時間帯の山口はとにかくリラックスしている様子で、まだ動き出してもいない。レースになると“アリーナ席”にやって来て、他の選手たちと談笑しつつ水面に目を向けている。緊張感がまったくないわけではないと思うのだが、しっかりと対処してくるだろう。
リラックスしているというのとは違うかもしれないが、西山貴浩の表情がスッキリとして見える。６号艇で勝負する準優、早くから水面に出て調整に余念がないが、前付けするかしないかも含めて、不利な枠からの優出チャレンジとなれば腹を括るしかないといったところか。だから昨日の勝負駆け１号艇のときより凛々しい表情に見えたりもするのだろう。
早くから動いた準優組はほかに茅原悠紀。こちらはかなり気合のこもった表情で、ペラ調整をいったん切り上げた２Ｒ発売中に水面に下りていった。また、西山と同期の土屋智則も２Ｒ発売中には着水。西山と足合わせもしている。
宮地元輝も早い動き出しの一人。ペラを叩き、水面を走り、またペラを叩き、水面を走る。この繰り返しは今日はギリギリまで続くのだろう。コメントを見ると、まだあと一足欲しそうな雰囲気で、必殺の差し技を繰り出すための仕上げに精魂込める。
３Ｒ、関浩哉が４コースから差して１着。これで群馬勢が沸き立った。今節の群馬カルテットは３人が準優へ。関だけが予選落ちだった。その関が勝って、先輩たちに勢いをつけたか？ エンジン吊りの後もボート周辺で長い会話が交わされ、最後に毒島誠と椎名誠の笑い声がピットに響いていた。グラチャン土屋、甲子園毒島とビッグ優勝は群馬支部が続けている。さらに群馬の連勝が続くかも!?（ＰＨＯＴＯ／中尾茂幸 池上一摩 ＴＥＸＴ／黒須田）
